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第6話
11・ところが……
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「良かった青野、助けて! 八尾がオレのこといじめる!」
昨日の気まずさはどこへやら、ナツさんは早くも両手を広げて俺に抱きつこうとする。
けれど、俺が身構えるよりも先に、八尾さんがナツさんの襟首を捕まえた。
「ふざけんなよ、こら。絶対サボらせねぇからな!」
「やだ、やめて! サボるなんて言ってない!」
「とか言ってサボる気まんまんだろうが!」
──これは、いったい?
すっかり蚊帳の外に置かれてしまった俺は、つい自分から「どうしたんですか?」と声をかけてしまった。
「どうもこうも、こいつ今日日直なのによ、担任からの呼び出し無視する気満々だから……」
「そんなことない! 昼休みに行くつもりだった!」
「それじゃ意味ないっての! ほら、来い!」
「やだ、八尾代わりにやってよー」
――なんだ、この光景は。
俺はこんなイチャイチャ……いや、ふたりのやりとりを見るために、教室を飛び出してきたわけじゃない。
ついため息を洩らすと、なぜかナツさんがハッと顔をあげた。
それから「あ……ええと……ええと……」と口をモゴモゴ動かしたあと、いきなり背筋をまっすぐ伸ばした。
「やる!」
「……は?」
「オレ、日直ちゃんとやる! 青野、オレ、サボったりしないから!」
いや、そんなの俺に宣言されても。あなたがサボろうが真面目にやろうが、俺には関係ないんですけど。
困惑しているうちに、ナツさんは「じゃあね、バイバイ!」と八尾さんの背中を押して行ってしまった。ひとり残された俺は、ただただ首を傾げるばかりだ。
(なんだったんだ、今のは)
俺としては、拍子抜けもいいところ。この分だと、わざわざナツさんを避ける必要はないんじゃないだろうか。
(べつにいつもどおりだし、そんな……俺のことを「落とそうとしてる」って雰囲気じゃなかったし)
そう、このときの俺はなにも理解していなかったのだ。
星井の忠告も、ナツさんの企みも──向こうの世界の青野行春が、どうしてナツさんに落とされてしまったのかも。
昨日の気まずさはどこへやら、ナツさんは早くも両手を広げて俺に抱きつこうとする。
けれど、俺が身構えるよりも先に、八尾さんがナツさんの襟首を捕まえた。
「ふざけんなよ、こら。絶対サボらせねぇからな!」
「やだ、やめて! サボるなんて言ってない!」
「とか言ってサボる気まんまんだろうが!」
──これは、いったい?
すっかり蚊帳の外に置かれてしまった俺は、つい自分から「どうしたんですか?」と声をかけてしまった。
「どうもこうも、こいつ今日日直なのによ、担任からの呼び出し無視する気満々だから……」
「そんなことない! 昼休みに行くつもりだった!」
「それじゃ意味ないっての! ほら、来い!」
「やだ、八尾代わりにやってよー」
――なんだ、この光景は。
俺はこんなイチャイチャ……いや、ふたりのやりとりを見るために、教室を飛び出してきたわけじゃない。
ついため息を洩らすと、なぜかナツさんがハッと顔をあげた。
それから「あ……ええと……ええと……」と口をモゴモゴ動かしたあと、いきなり背筋をまっすぐ伸ばした。
「やる!」
「……は?」
「オレ、日直ちゃんとやる! 青野、オレ、サボったりしないから!」
いや、そんなの俺に宣言されても。あなたがサボろうが真面目にやろうが、俺には関係ないんですけど。
困惑しているうちに、ナツさんは「じゃあね、バイバイ!」と八尾さんの背中を押して行ってしまった。ひとり残された俺は、ただただ首を傾げるばかりだ。
(なんだったんだ、今のは)
俺としては、拍子抜けもいいところ。この分だと、わざわざナツさんを避ける必要はないんじゃないだろうか。
(べつにいつもどおりだし、そんな……俺のことを「落とそうとしてる」って雰囲気じゃなかったし)
そう、このときの俺はなにも理解していなかったのだ。
星井の忠告も、ナツさんの企みも──向こうの世界の青野行春が、どうしてナツさんに落とされてしまったのかも。
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