目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒

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第6話

9・不穏な忠告

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 翌朝、通学途中の電車のなかで、俺は何度もメッセージアプリを開いていた。
 理由は、星井からメッセージがきていないか確認するため。けれど、何度開いても新着メッセージは届いていない。
 ということは、昨日帰宅したあとのナツさんに、特におかしなところはなかったのだろうか。

(だったら良かった……はずなんだけど……)

 なんとなく腑に落ちない。
 だって、昨日はあんなに意味ありげに帰っていったくせに、帰宅後は「普段どおりでした」ってことだよな?
 だとしたら、またもや俺はいいように振りまわされ――いや、違う。断じて、俺はナツさんに振りまわされてなんかいない。ただ、ほんのちょっとばかり、彼の様子が気になっていただけだ。
 だから、あのあと星井が連絡をよこすような事態にならなかったのなら、それで良し! そう、それだけのことだ!
 なのに、教室に入った俺が真っ先に目に止めたのは、ぐったりと机に突っ伏している偽装彼女の姿だった。
 これは――嫌な予感がする。

「おはよう」

 椅子を引きながら声をかけると、星井はのろのろと顔をあげた。

「ねぇ、昨日なっちゃんと何かあった?」
「それは――」

 さて、どこから話せばいいんだろう。
 告白されたことは、駅のロータリーで伝えたはず。
 ということは、帰宅してからのことか。けど、さすがに、ナツさんに迫られたことや、そのせいで鼻血を出したことまでは、星井相手でも言いたくはない。
 よって、無難なところだけをかいつまんで話すことにした。昨日帰宅したらナツさんが家にいたこと、うちで夕飯を食べたこと、「告白の返事を聞かせろ」と催促してきたことなど。

「そっか、返事……そりゃ、告白した側としては聞きたいよね。で、青野はなんて答えたの?」
「決まってるだろ、断ったよ」

 昨日とは違い、今日は間髪入れずに答える。
 その上で、身構えた。星井のことだ、きっとニヤニヤしながら「本当にぃ?」などと訊いてくるはず。
 なのに、彼女から返ってきたのは「ふーん」という独り言のような呟きだ。

「だからか……納得!」

 ──納得? どういう意味だ?
 
「あのさ青野、いちおう『カノジョ』として忠告しておくけど」

 不穏な前置きをしたあと、星井はいつになく真剣な面差しで声を潜めた。

「なっちゃん、あきらめてないから。本気であんたのこと、落とすつもりでいるから」

 ──えっ?

「まあ、そういうわけだから。とりあえずがんばって!」
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このシリーズの前のお話です。よろしければ…
「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」


こちらはBL未満のお話です
「モフモフ野郎と俺の朝ごはん」
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