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第6話
5・ナツさん襲来(その2)
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夕食を食べ終えたあと、仕方なく俺はナツさんを部屋に招き入れた。
「ねむーい!」
ナツさんは、なぜか勝手に俺のベッドに横たわった。
「なー青野、エッチしよう?」
「しません」
「なんで?」
「宿題しないといけませんので」
「まじで? 青野まっじめー」
いや、あなたも、さっき「宿題やる」と言っていたでしょう。
「そもそも、勉強するためにこの部屋に来たんじゃなかったんですか?」
「そうだった……!」
ナツさんは、ぴょんと上体を起こした。
「じゃあ、オレが青野に勉強を教えてあげる!」
これが夏樹さんなら、今のもそのまま言葉どおりの意味として受け取ることができただろう。
けれど、今、俺の目の前にいるのはナツさんだ。しかも、明らかに別の意図をにじませるような、いたずらっぽい眼差しをしている。
それだけで次の展開がおおよそ読めてしまったけれど、いちおう「なんの教科を?」と振ってみた。
案の定、ナツさんは細い目をさらににんまりと細くした。
「もちろん、保健体育!」
でしょうね。
ほんと、エロいことしか考えていないんだな、この人。
「すみませんが、保健体育は必要としていませんので。勉強の邪魔をするなら帰ってください」
「えーやだ、青野と遊びたい!」
「俺は遊びたくありません」
ぴしゃりとはねつけて背中を向けるとと、ナツさんは不満そうな声をあげた。
「青野、冷たい」
ええ、そうでしょう。だって、俺が優しくしたいのは夏樹さんだけですし。
「ていうか、最近の青野、向こうの青野っぽい……」
――は?
「前はさー、もーっとDTっぽくて可愛かったのに。エロいお誘いすると、すぐに真っ赤になってたのに」
無視しよう、と思ったけどできなかった。
俺は苛立ちを隠せないまま、ベッドで足をブラブラさせているナツさんを睨みつけた。
「あのですね、何度も言ってますが、俺とナツさんの恋人は別人です」
「知ってる。単に似てきたって言っただけじゃん」
「似てきたって思うのは、重ねて見ているからですよね?」
「そうなの?」
「そうでしょう!」
「だとしても、そんな怒ることなくない?」
――えっ?
「青野と青野、ちょーっと重ねて見ただけでさ、なんでオレ、こんなに怒られないといけないの?」
「それ……は……」
俺は、口ごもった。
たしかにそうだ。向こうの青野に似てきたと言われただけなのに、なぜ俺はこんなにも腹を立てているのだろう。
戸惑う俺に、ナツさんは「てゆーかさ」と唇をとがらせた。
「いい加減、聞かせてよ。わざわざこーやって青野ん家にまで来たんだから」
「……え?」
聞かせるって何を?
そんな疑問が、顔に出たのだろう。「だーかーらー」と、ナツさんは足をバタつかせた。
「告白の返事! オレ、青野のこと好きになったって言ったじゃん!」
「ああ、ハイ……」
「その返事! 早く聞かせてってば!」
「ねむーい!」
ナツさんは、なぜか勝手に俺のベッドに横たわった。
「なー青野、エッチしよう?」
「しません」
「なんで?」
「宿題しないといけませんので」
「まじで? 青野まっじめー」
いや、あなたも、さっき「宿題やる」と言っていたでしょう。
「そもそも、勉強するためにこの部屋に来たんじゃなかったんですか?」
「そうだった……!」
ナツさんは、ぴょんと上体を起こした。
「じゃあ、オレが青野に勉強を教えてあげる!」
これが夏樹さんなら、今のもそのまま言葉どおりの意味として受け取ることができただろう。
けれど、今、俺の目の前にいるのはナツさんだ。しかも、明らかに別の意図をにじませるような、いたずらっぽい眼差しをしている。
それだけで次の展開がおおよそ読めてしまったけれど、いちおう「なんの教科を?」と振ってみた。
案の定、ナツさんは細い目をさらににんまりと細くした。
「もちろん、保健体育!」
でしょうね。
ほんと、エロいことしか考えていないんだな、この人。
「すみませんが、保健体育は必要としていませんので。勉強の邪魔をするなら帰ってください」
「えーやだ、青野と遊びたい!」
「俺は遊びたくありません」
ぴしゃりとはねつけて背中を向けるとと、ナツさんは不満そうな声をあげた。
「青野、冷たい」
ええ、そうでしょう。だって、俺が優しくしたいのは夏樹さんだけですし。
「ていうか、最近の青野、向こうの青野っぽい……」
――は?
「前はさー、もーっとDTっぽくて可愛かったのに。エロいお誘いすると、すぐに真っ赤になってたのに」
無視しよう、と思ったけどできなかった。
俺は苛立ちを隠せないまま、ベッドで足をブラブラさせているナツさんを睨みつけた。
「あのですね、何度も言ってますが、俺とナツさんの恋人は別人です」
「知ってる。単に似てきたって言っただけじゃん」
「似てきたって思うのは、重ねて見ているからですよね?」
「そうなの?」
「そうでしょう!」
「だとしても、そんな怒ることなくない?」
――えっ?
「青野と青野、ちょーっと重ねて見ただけでさ、なんでオレ、こんなに怒られないといけないの?」
「それ……は……」
俺は、口ごもった。
たしかにそうだ。向こうの青野に似てきたと言われただけなのに、なぜ俺はこんなにも腹を立てているのだろう。
戸惑う俺に、ナツさんは「てゆーかさ」と唇をとがらせた。
「いい加減、聞かせてよ。わざわざこーやって青野ん家にまで来たんだから」
「……え?」
聞かせるって何を?
そんな疑問が、顔に出たのだろう。「だーかーらー」と、ナツさんは足をバタつかせた。
「告白の返事! オレ、青野のこと好きになったって言ったじゃん!」
「ああ、ハイ……」
「その返事! 早く聞かせてってば!」
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