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第5話
2・恋の奴隷
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星井は、レモン水の入ったグラスを手にしたまま、怪訝そうに首を傾げた。
「それって、私たちみたいにってこと?」
「まあ、うん……」
「ないでしょ、ないない!」
意外にも即答だった。
「だって、あっちの青野、めちゃくちゃなっちゃんに尽くしてたっぽいもん」
え、どういうこと?
つい疑惑の目を向けてしまった俺に、星井は「ほんとだって!」と顔をしかめてみせた。
「私、なっちゃんののろけ話、けっこう聞かされてるんだけどさぁ。正直、向こうのあんたが気の毒になるんだよね」
──気の毒? あっちの世界の俺が?
「だってさぁ、登下校の送り迎えは当たり前、デートはほぼおごり、おねだりもわがままも全部聞いてくれる、ケンカしても謝るのはほぼ向こうからで──」
「なんだ、その夢みたいな状況!」
うらやましさのあまり、つい星井の言葉をさえぎってしまった。
だって、それのどこが気の毒なんだ?
どう考えても最高の状況じゃないか!
勢いあまってツバまで飛ばしてしまった俺に、星井は「えっ、本気?」と困惑したように身を引いた。
「当然! 本気に決まってるだろう!」
俺だって、好きな人と毎日一緒に登下校したいし、デートのときはごはんをご馳走したい。おねだりは当然ふたつ返事で叶えてあげたいし、ケンカするなんてもってのほかだ。
「いや、けど……それって、ほぼ下僕じゃん」
「下僕でけっこう。俺はすでに恋の奴隷だから」
そう、夏樹さんと出会ったあの夏の日から、俺の脳内は「恋」という魔物に支配されてしまった。俺の言動も思考も、すべて夏樹さんが中心になるよう、書き換えられてしまったのだ。
なのに、同じように片思い中であるはずの星井は「怖……」とまったく共感してくれない。
「『奴隷』とか『支配』とか、無理なんだけど」
「うるさい。よけいなお世話」
「ていうか、それって、なっちゃん相手じゃ成立しないの?」
──は?
「ぶっちゃけ、最近の青野、お兄ちゃんよりもなっちゃんに夢中じゃん」
「それって、私たちみたいにってこと?」
「まあ、うん……」
「ないでしょ、ないない!」
意外にも即答だった。
「だって、あっちの青野、めちゃくちゃなっちゃんに尽くしてたっぽいもん」
え、どういうこと?
つい疑惑の目を向けてしまった俺に、星井は「ほんとだって!」と顔をしかめてみせた。
「私、なっちゃんののろけ話、けっこう聞かされてるんだけどさぁ。正直、向こうのあんたが気の毒になるんだよね」
──気の毒? あっちの世界の俺が?
「だってさぁ、登下校の送り迎えは当たり前、デートはほぼおごり、おねだりもわがままも全部聞いてくれる、ケンカしても謝るのはほぼ向こうからで──」
「なんだ、その夢みたいな状況!」
うらやましさのあまり、つい星井の言葉をさえぎってしまった。
だって、それのどこが気の毒なんだ?
どう考えても最高の状況じゃないか!
勢いあまってツバまで飛ばしてしまった俺に、星井は「えっ、本気?」と困惑したように身を引いた。
「当然! 本気に決まってるだろう!」
俺だって、好きな人と毎日一緒に登下校したいし、デートのときはごはんをご馳走したい。おねだりは当然ふたつ返事で叶えてあげたいし、ケンカするなんてもってのほかだ。
「いや、けど……それって、ほぼ下僕じゃん」
「下僕でけっこう。俺はすでに恋の奴隷だから」
そう、夏樹さんと出会ったあの夏の日から、俺の脳内は「恋」という魔物に支配されてしまった。俺の言動も思考も、すべて夏樹さんが中心になるよう、書き換えられてしまったのだ。
なのに、同じように片思い中であるはずの星井は「怖……」とまったく共感してくれない。
「『奴隷』とか『支配』とか、無理なんだけど」
「うるさい。よけいなお世話」
「ていうか、それって、なっちゃん相手じゃ成立しないの?」
──は?
「ぶっちゃけ、最近の青野、お兄ちゃんよりもなっちゃんに夢中じゃん」
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