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第4話
15・最悪な事態(その2)
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「なに言ってるんですか!」
俺は、すぐさまナツさんの手を払いのけた。
「相手とか、そんなの必要ないですし」
「でも青野、『星井夏樹』のことが好きなんでしょ?」
ナツさんは、懲りずに俺の太ももに手をのばしてきた。
「言っとくけど、オレうまいよ? 男子も女子も、気持ちよくさせてあげるの得意だし」
「ですから、そういうのは……」
「ほんとだって! ほら、こんな感じでさぁ」
ナツさんの手が、内股のきわどい部分をさすってくる。
俺は、悲鳴をあげかけた。だって、こんなのおしゃれなカフェでやることじゃない。いや、どんな場所でも──たとえいかがわしいホテルだったとしても「妹の彼氏」にやっていいことではないはずだ。
「本当にやめてください、怒りますよ!」
「そのわりに呼吸荒いじゃん」
「荒くないです!」
「うそうそ。今、心臓バクバクしてるくせに」
いたずらな親指が、さらにきわどい付け根をなぞる。たったそれだけで、俺の頭のなかは真っ白になった。
だって、これは夏樹さんの手だ。夏樹さんが今、俺を甘く誘惑しているといっても過言ではないのだ。
「ねえ、青野……もっといいことしよ?」
マズい、頭がクラクラしてきた。
「それでさ、オレのことも気持ちよーくしてよ。青野のおっきいので、オレのことをぐちゃぐちゃにして?」
吐息のような囁きが、もう一度「おっきいの」と繰り返す。
ごくん、と喉が鳴った。指摘されたとおり、心臓はバクバクしすぎて身体中が痛いほどだった。
もう、いっそ誘惑に飲み込まれてしまおうか。このキラキラした目に、応えてしまおうか。
「ほら、青野……素直になりなって」
指どおりの良さそうな髪の毛が、俺のこめかみをかすめた。
その瞬間、俺の脳裏にあの図書室の光景がよみがえった。
穏やかな寝息をたてて居眠りしている夏樹さん──その寝顔を独り占めしている自分。涙が出そうなほど幸せだった、あのひととき。
俺は、まだ残っている理性を総動員させた。そして、半ば力まかせにナツさんの顔を押しやった。
俺は、すぐさまナツさんの手を払いのけた。
「相手とか、そんなの必要ないですし」
「でも青野、『星井夏樹』のことが好きなんでしょ?」
ナツさんは、懲りずに俺の太ももに手をのばしてきた。
「言っとくけど、オレうまいよ? 男子も女子も、気持ちよくさせてあげるの得意だし」
「ですから、そういうのは……」
「ほんとだって! ほら、こんな感じでさぁ」
ナツさんの手が、内股のきわどい部分をさすってくる。
俺は、悲鳴をあげかけた。だって、こんなのおしゃれなカフェでやることじゃない。いや、どんな場所でも──たとえいかがわしいホテルだったとしても「妹の彼氏」にやっていいことではないはずだ。
「本当にやめてください、怒りますよ!」
「そのわりに呼吸荒いじゃん」
「荒くないです!」
「うそうそ。今、心臓バクバクしてるくせに」
いたずらな親指が、さらにきわどい付け根をなぞる。たったそれだけで、俺の頭のなかは真っ白になった。
だって、これは夏樹さんの手だ。夏樹さんが今、俺を甘く誘惑しているといっても過言ではないのだ。
「ねえ、青野……もっといいことしよ?」
マズい、頭がクラクラしてきた。
「それでさ、オレのことも気持ちよーくしてよ。青野のおっきいので、オレのことをぐちゃぐちゃにして?」
吐息のような囁きが、もう一度「おっきいの」と繰り返す。
ごくん、と喉が鳴った。指摘されたとおり、心臓はバクバクしすぎて身体中が痛いほどだった。
もう、いっそ誘惑に飲み込まれてしまおうか。このキラキラした目に、応えてしまおうか。
「ほら、青野……素直になりなって」
指どおりの良さそうな髪の毛が、俺のこめかみをかすめた。
その瞬間、俺の脳裏にあの図書室の光景がよみがえった。
穏やかな寝息をたてて居眠りしている夏樹さん──その寝顔を独り占めしている自分。涙が出そうなほど幸せだった、あのひととき。
俺は、まだ残っている理性を総動員させた。そして、半ば力まかせにナツさんの顔を押しやった。
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