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第3話
15・不本意な状況(その3)
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多分な好奇心とほんのりとした悪意に、俺の喉奥がグッと締まった。
なんだ、今のは。噂されるのは仕方のないことだとして、それをわざわざ当人たちに聞こえるように言う必要があるのか?
モヤる俺の隣で、ナツさんはまたもや声をあげて笑いだした。
「ヤバイ、2年にまで噂されてる!」
「されてますよ、当然でしょう」
「ってことは、オレも青野も有名人?」
「でしょうね。動物園のシマウマ並みには」
何とはなしにこぼした愚痴に、ナツさんは「ウケる!」とさらに破顔した。
「なんでシマウマ? そこはふつうパンダじゃね?」
「パンダは言い過ぎでしょう。そこまで図々しくはなれません」
とはいえ、今のこの状況がキツいことに変わりはない。たとえシマウマレベルだったとしても、常に誰かしらの視線を感じるのはものすごいストレスだ。
いい加減、勘弁してほしい。頼むから、誰もいないところでゆっくり昼休みを過ごさせてくれ。
なのに、ナツさんはあいかわらず空気を読もうとしない。
「いいじゃん、あんなの放っておけって」
「ですが──」
「噂なんて、どうせすぐに消えるし。由芽ちゃんもそのうち心変わりするに決まってるって!」
やけに楽観的なナツさんを、俺は恨みがましい思いで見つめた。
「心変わりしなかったらどうするんです?」
「いいじゃん、『モテ期継続』で。それはそれで楽しいんじゃね?」
「そんなわけないでしょう」
そもそも、この「モテ期」は偽物だ。
星井の本命は別にいるし、ナツさんが俺にちょっかいを出すのは、単に「『青野行春』が、自分に恋をしていないのは納得がいかない」というだけ。
つまり、本当に俺のことを好きなのは、あの迷惑なストーカー女子だけなのだ。
なのに、なぜ好奇の目にさらされなければいけないのか。こんなにも、嘘の「モテ期」に翻弄されなければいけないのか。
理不尽すぎて、まるで納得がいかない。
そんな思いが顔に出たのか、今度は「どんまい」とナツさんに背中をさすられた。
(他人事だと思って……)
思えば、俺の日常がおかしくなったのは、ナツさんがこの世界に来てからだ。
この人と夏樹さんが入れ替わって以降、俺の日常はトラブル続きになったのだ。
(こうなったら、意地でも記憶を取り戻させてやる)
そうして、この人を元の世界に送り返すのと引き換えに、誰よりもたいせつな「あの人」を取り戻すのだ。
ところが、決意を新たにしたその十数日後──思いがけない出来事が、俺たちを待ち受けていたのである。
なんだ、今のは。噂されるのは仕方のないことだとして、それをわざわざ当人たちに聞こえるように言う必要があるのか?
モヤる俺の隣で、ナツさんはまたもや声をあげて笑いだした。
「ヤバイ、2年にまで噂されてる!」
「されてますよ、当然でしょう」
「ってことは、オレも青野も有名人?」
「でしょうね。動物園のシマウマ並みには」
何とはなしにこぼした愚痴に、ナツさんは「ウケる!」とさらに破顔した。
「なんでシマウマ? そこはふつうパンダじゃね?」
「パンダは言い過ぎでしょう。そこまで図々しくはなれません」
とはいえ、今のこの状況がキツいことに変わりはない。たとえシマウマレベルだったとしても、常に誰かしらの視線を感じるのはものすごいストレスだ。
いい加減、勘弁してほしい。頼むから、誰もいないところでゆっくり昼休みを過ごさせてくれ。
なのに、ナツさんはあいかわらず空気を読もうとしない。
「いいじゃん、あんなの放っておけって」
「ですが──」
「噂なんて、どうせすぐに消えるし。由芽ちゃんもそのうち心変わりするに決まってるって!」
やけに楽観的なナツさんを、俺は恨みがましい思いで見つめた。
「心変わりしなかったらどうするんです?」
「いいじゃん、『モテ期継続』で。それはそれで楽しいんじゃね?」
「そんなわけないでしょう」
そもそも、この「モテ期」は偽物だ。
星井の本命は別にいるし、ナツさんが俺にちょっかいを出すのは、単に「『青野行春』が、自分に恋をしていないのは納得がいかない」というだけ。
つまり、本当に俺のことを好きなのは、あの迷惑なストーカー女子だけなのだ。
なのに、なぜ好奇の目にさらされなければいけないのか。こんなにも、嘘の「モテ期」に翻弄されなければいけないのか。
理不尽すぎて、まるで納得がいかない。
そんな思いが顔に出たのか、今度は「どんまい」とナツさんに背中をさすられた。
(他人事だと思って……)
思えば、俺の日常がおかしくなったのは、ナツさんがこの世界に来てからだ。
この人と夏樹さんが入れ替わって以降、俺の日常はトラブル続きになったのだ。
(こうなったら、意地でも記憶を取り戻させてやる)
そうして、この人を元の世界に送り返すのと引き換えに、誰よりもたいせつな「あの人」を取り戻すのだ。
ところが、決意を新たにしたその十数日後──思いがけない出来事が、俺たちを待ち受けていたのである。
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