目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒

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第3話

11・ストーカーとストーカー(その4)

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 金髪女子と八尾さんが、ギョッとしたように彼女に目を向ける。
 俺は、絶望的な気持ちのまま、ひとり天を仰いだ。
 ああ、なぜ悪い予感ほど当たってしまうのか。なぜ、ストーカー女子の思考回路は、こうも明後日の方向に構築されているのか。
 すでに喉元まで、汚い言葉が出かかっている。それをなんとか飲み込むと、俺は努めて丁寧な反論を試みた。

「違います。俺は誰のストーカーでもありません」
「でも、この1週間ずーっと由芽のまわりをウロウロしてたでしょ?」
「それも違います。俺がウロウロしていたのは、ナツさんの周辺です」

 すかさず、八尾さんから「それ言っていいのか?」とのツッコミが入る。
 けど、どうか今は黙っていてほしい。こっちは、勘違いストーカー女子への対応だけで手一杯なのだ。

「大丈夫だよ、青野くん。ほんとは照れてるだけでしょ? 由芽、ちゃーんとわかってるから」
「いえ、何もわかっていませんね」
「そんなことないもん! 由芽はぜんぶお見通しだもん!」

 なおも持論を展開しようとする彼女の首根っこを、金髪女子が「いい加減にしろ」と捕まえた。

「ほら、もう帰るぞ」
「嫌! まだ話してる途中だもん!」
「話なんかとっくに終わってるだろ。さっきから、こいつ、ずっと由芽に興味ないって言ってんだし」

 金髪女子はばっさり切り捨てると、俺と八尾さんに「今日は悪かった」と頭を下げて、ストーカー女子を回収してくれた。
 遠ざかる「青野くーん、今度教室に会いにいくからねー」の言葉は、ひとまず聞かなかったことにした。できることなら1分1秒でも早く、彼女のことを頭のなかから閉め出したい。

「おつかれ」

 八尾さんが、ねぎらうように俺の肩を叩いた。

「とりあえず、俺らも帰るか」
「そうですね」

 いつの間にか、すっかり日は落ちていた。なんとなく見上げた夜空には、控えめな星の瞬きしか見当たらなかった。
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