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第3話
7・あれから1週間…
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学食での一件から1週間が経過した。
あのおかしな女子生徒は、ナツさんと同じ3年生で、名前を「江頭由芽」というらしい。いろいろヤバそうな人だと警戒していたとおり、この1週間の彼女の行動はなかなかのものだ。なにせ、気がつけばナツさんの半径10メートル以内に出没し、隙あらば「好き好き大好き」とさえずるのだ。そのかしましさたるや、繁殖期を終えたムクドリ並みだ。
そんな人物を、世間ではなんと呼ぶのか。
そう、ストーカーだ。
げんに今もナツさんと同じ本屋にいて、隣の本棚から話しかける機会をうかがっている。たぶん、隣にいる八尾さんがいなくなったら、すぐさま駆け寄って猛アピールをするつもりなのだろう。
もっとも、そんな機会は今のところ訪れそうにないけれど。ナツさんと八尾さん、べったり並んで行動しているし。
(ていうか近すぎないか?)
あのふたり、以前からあんな感じだったか? 少なくとも夏樹さんがいたころは、あそこまで密着することはなかったはずだけど。
今も、ふたりはくっつくようにして同じ雑誌を覗き込んでいる。八尾さんが写真らしきものを指さして、ナツさんはくしゃくしゃの笑顔を見せている。
なんだか胸がモヤッとした。
たぶん、ナツさんの外見のせいだ。
実際こうして眺めていると、俺の目には「ナツさんと八尾さん」ではなく「夏樹さんと八尾さん」として映ってしまう。頭ではそうじゃないとわかっているはずなのに、このバグは一体なんなのだろう。
と、ナツさんが、今度は甘えるように八尾さんの肩にもたれかかった。
(……なんだ、あれ)
なぜ、あの人は、小柄な八尾さんにあんなことをするのだろう。どう見てもバランスが悪い。ああいうことは、ふつう同じくらいの体格の人間にするものではないのか?
(たとえば──俺とか)
そう、俺ならナツさんよりも少し背が高いし、体格もまあまあがっしりしている。つまり、寄りかかるには悪くない人材だ。
なのに、ナツさんは俺を選ばない。俺じゃない人にぴったりと密着して、親しげな笑みを浮かべている。
意味がわからない。まるで納得がいかない。
(ナツさんの恋人は、俺のはずなのに)
ふとこぼれ落ちたその不満に、誰よりも俺自身がギョッとした。
待ってくれ、どうしてしまったんだ、俺は。
ナツさんの恋人は、俺じゃない。別世界の青野行春だ。そのことを、誰よりも理解し、口にしてきたのは俺だったはずなのに。
じわりと滲んだ手汗を、制服のズボンで軽く拭う。
落ち着け、青野行春。
早く、普段の自分を取り戻せ。
焦る俺のそばで、誰かが「ねえっ」と声をあげた。高くて耳障りなその声に、俺は再びギョッと固まった。
ついさっきまで向こうの本棚にいたはずのストーカー女子が、いつのまにか俺のすぐ目の前に立っていた。
「ねえ、あなた、いつもほっしーのそばをうろついているよね?」
──は?
「もしかして、ほっしーのストーカー?」
あのおかしな女子生徒は、ナツさんと同じ3年生で、名前を「江頭由芽」というらしい。いろいろヤバそうな人だと警戒していたとおり、この1週間の彼女の行動はなかなかのものだ。なにせ、気がつけばナツさんの半径10メートル以内に出没し、隙あらば「好き好き大好き」とさえずるのだ。そのかしましさたるや、繁殖期を終えたムクドリ並みだ。
そんな人物を、世間ではなんと呼ぶのか。
そう、ストーカーだ。
げんに今もナツさんと同じ本屋にいて、隣の本棚から話しかける機会をうかがっている。たぶん、隣にいる八尾さんがいなくなったら、すぐさま駆け寄って猛アピールをするつもりなのだろう。
もっとも、そんな機会は今のところ訪れそうにないけれど。ナツさんと八尾さん、べったり並んで行動しているし。
(ていうか近すぎないか?)
あのふたり、以前からあんな感じだったか? 少なくとも夏樹さんがいたころは、あそこまで密着することはなかったはずだけど。
今も、ふたりはくっつくようにして同じ雑誌を覗き込んでいる。八尾さんが写真らしきものを指さして、ナツさんはくしゃくしゃの笑顔を見せている。
なんだか胸がモヤッとした。
たぶん、ナツさんの外見のせいだ。
実際こうして眺めていると、俺の目には「ナツさんと八尾さん」ではなく「夏樹さんと八尾さん」として映ってしまう。頭ではそうじゃないとわかっているはずなのに、このバグは一体なんなのだろう。
と、ナツさんが、今度は甘えるように八尾さんの肩にもたれかかった。
(……なんだ、あれ)
なぜ、あの人は、小柄な八尾さんにあんなことをするのだろう。どう見てもバランスが悪い。ああいうことは、ふつう同じくらいの体格の人間にするものではないのか?
(たとえば──俺とか)
そう、俺ならナツさんよりも少し背が高いし、体格もまあまあがっしりしている。つまり、寄りかかるには悪くない人材だ。
なのに、ナツさんは俺を選ばない。俺じゃない人にぴったりと密着して、親しげな笑みを浮かべている。
意味がわからない。まるで納得がいかない。
(ナツさんの恋人は、俺のはずなのに)
ふとこぼれ落ちたその不満に、誰よりも俺自身がギョッとした。
待ってくれ、どうしてしまったんだ、俺は。
ナツさんの恋人は、俺じゃない。別世界の青野行春だ。そのことを、誰よりも理解し、口にしてきたのは俺だったはずなのに。
じわりと滲んだ手汗を、制服のズボンで軽く拭う。
落ち着け、青野行春。
早く、普段の自分を取り戻せ。
焦る俺のそばで、誰かが「ねえっ」と声をあげた。高くて耳障りなその声に、俺は再びギョッと固まった。
ついさっきまで向こうの本棚にいたはずのストーカー女子が、いつのまにか俺のすぐ目の前に立っていた。
「ねえ、あなた、いつもほっしーのそばをうろついているよね?」
──は?
「もしかして、ほっしーのストーカー?」
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