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第2話
9・緊急ミーティング
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その日の放課後、緊急ミーティングが行われた。
場所は、この間パンケーキを食べたカフェ。メンバーは、俺とナツさん、星井、八尾さん──これまた先日と同じ4名だ。
「じゃあ、まずは確認ってことで。ナツは、もう自分は元の世界には戻れないって思ってんだよな?」
進行役の八尾さんに問われて、ナツさんは「ん……」と頼りなさそうにうなずく。半ばパニック状態の俺は、続く言葉も待たずに勢いよく立ちあがった。
「理由は!? 理由はなんですか!?」
「へっ」
「夏樹さんが戻ってこない理由です! 何を根拠に、あなたはそんなひどいことを言うんですか!?」
「ちょっと。落ち着きなよ、青野」
「こんなの落ち着けるわけがないだろう!?」
むしろ、なんで星井こそ、そんなに落ち着いていられるんだ? お前も、夏樹さんはいつか戻ってくると思っていたはずだろう?
「そんなの、オレにもわかんないって」
ナツさんは両手をテーブルの下に隠したまま、上体を屈めるようにしてアイスロイヤルミルクティーをすすった。
「たださ、異世界転生の漫画とかだと別世界にいったヤツは元の世界に戻ってこないじゃん? だから、オレもそうなのかなーって」
「それは、たいていの場合、元の世界で命を落として『転生』したからでしょう。今回のケースとは違います」
夏樹さんは、きっと生きている。命に別状はない状態で、ナツさんと交替になったはずだ。
「でもオレ、戻り方とかわかんないし」
「本当ですか? 実は心当たりがあるんじゃないんですか?」
「そんなのない。ていうか青野怖い!」
ナツさんは、怯えたように八尾さんの背中に隠れた。
「こんなのひどい、パワハラだ! 八尾、こいつのことやっつけて!」
「いや、パワハラって」
どう考えても年長者であるナツさんのほうが、立場が上だ。パワーもなにもあったもんじゃない。
しかも、この人、数時間前まで俺の一番になりたいって言ってなかったか? なのに「やっつけて」は、いくらなんでもひどすぎる。
睨みあう俺たちに、八尾さんは「ふたりとも落ち着け」とため息をついた。
「俺は落ち着いています」
「オレだって落ち着いてる!」
「いや、ぜんぜん落ち着いてないじゃん。ふたりとも」
星井のそっけないつっこみに、俺たちはグッと黙り込んだ。
「じゃあ、話を戻すけど。ナツは『戻り方がわからない』から『元の世界に戻れない』って思ってるんだよな?」
「うん。心当たりとかぜんぜんない。嘘じゃない。ほんとわかんない」
「まあ──たしかにお前、こっちに来ることになったきっかけも思い出せないって言ってたもんな」
ささくれが目立つ八尾さんの指先で、筆記用具がくるりとまわった。
「ちなみに、今も思い出せないか?」
「無理。ぜんぜんダメ」
「そこなんだよなぁ」
八尾さんは、頬杖をついたまま、再び筆記用具をくるりとまわした。
「そこを思い出せればなぁ。道がひらける気がするんだけど」
独り言のようなその言葉に、俺は「あっ」と顔をあげた。
そうか、ナツさんがこっちに来たときと同じことをすれば、また入れ替わりが発生するかもしれないのか。
「思い出しましょう、ナツさん!」
「ふえっ!?」
「どうやってこっちの世界に来たのか、がんばって思い出しましょう!」
すべては夏樹さんのため。
夏樹さんが、この世界に戻ってくるため。
テンション高く迫る俺に、ナツさんは「えー」と眉尻を下げる。
星井の「それ、努力でどうにかなるものなの?」との冷静すぎるご指摘は、ひとまず聞かなかったことにした。
場所は、この間パンケーキを食べたカフェ。メンバーは、俺とナツさん、星井、八尾さん──これまた先日と同じ4名だ。
「じゃあ、まずは確認ってことで。ナツは、もう自分は元の世界には戻れないって思ってんだよな?」
進行役の八尾さんに問われて、ナツさんは「ん……」と頼りなさそうにうなずく。半ばパニック状態の俺は、続く言葉も待たずに勢いよく立ちあがった。
「理由は!? 理由はなんですか!?」
「へっ」
「夏樹さんが戻ってこない理由です! 何を根拠に、あなたはそんなひどいことを言うんですか!?」
「ちょっと。落ち着きなよ、青野」
「こんなの落ち着けるわけがないだろう!?」
むしろ、なんで星井こそ、そんなに落ち着いていられるんだ? お前も、夏樹さんはいつか戻ってくると思っていたはずだろう?
「そんなの、オレにもわかんないって」
ナツさんは両手をテーブルの下に隠したまま、上体を屈めるようにしてアイスロイヤルミルクティーをすすった。
「たださ、異世界転生の漫画とかだと別世界にいったヤツは元の世界に戻ってこないじゃん? だから、オレもそうなのかなーって」
「それは、たいていの場合、元の世界で命を落として『転生』したからでしょう。今回のケースとは違います」
夏樹さんは、きっと生きている。命に別状はない状態で、ナツさんと交替になったはずだ。
「でもオレ、戻り方とかわかんないし」
「本当ですか? 実は心当たりがあるんじゃないんですか?」
「そんなのない。ていうか青野怖い!」
ナツさんは、怯えたように八尾さんの背中に隠れた。
「こんなのひどい、パワハラだ! 八尾、こいつのことやっつけて!」
「いや、パワハラって」
どう考えても年長者であるナツさんのほうが、立場が上だ。パワーもなにもあったもんじゃない。
しかも、この人、数時間前まで俺の一番になりたいって言ってなかったか? なのに「やっつけて」は、いくらなんでもひどすぎる。
睨みあう俺たちに、八尾さんは「ふたりとも落ち着け」とため息をついた。
「俺は落ち着いています」
「オレだって落ち着いてる!」
「いや、ぜんぜん落ち着いてないじゃん。ふたりとも」
星井のそっけないつっこみに、俺たちはグッと黙り込んだ。
「じゃあ、話を戻すけど。ナツは『戻り方がわからない』から『元の世界に戻れない』って思ってるんだよな?」
「うん。心当たりとかぜんぜんない。嘘じゃない。ほんとわかんない」
「まあ──たしかにお前、こっちに来ることになったきっかけも思い出せないって言ってたもんな」
ささくれが目立つ八尾さんの指先で、筆記用具がくるりとまわった。
「ちなみに、今も思い出せないか?」
「無理。ぜんぜんダメ」
「そこなんだよなぁ」
八尾さんは、頬杖をついたまま、再び筆記用具をくるりとまわした。
「そこを思い出せればなぁ。道がひらける気がするんだけど」
独り言のようなその言葉に、俺は「あっ」と顔をあげた。
そうか、ナツさんがこっちに来たときと同じことをすれば、また入れ替わりが発生するかもしれないのか。
「思い出しましょう、ナツさん!」
「ふえっ!?」
「どうやってこっちの世界に来たのか、がんばって思い出しましょう!」
すべては夏樹さんのため。
夏樹さんが、この世界に戻ってくるため。
テンション高く迫る俺に、ナツさんは「えー」と眉尻を下げる。
星井の「それ、努力でどうにかなるものなの?」との冷静すぎるご指摘は、ひとまず聞かなかったことにした。
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