目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒

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第2話

7・爆弾発言(その1)

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 翌日の昼休み。
 星井と、昨日観た動画配信ライブについてあれこれ話していると、背後から「あーおの!」と朗らかな声が響いた。
 先に気づいた星井が「ああ、なっちゃん」とひらひら手を振っている。
 周囲から「3年生だ」「誰あれ?」「星井の兄ちゃん」なんてコソコソ声が聞こえるなか、ナツさんは特に気にする様子もなく、俺たちのそばにやってきた。
 そして──なぜか、俺の太ももの上に腰をおろした。

「えっ」
「えっ!?」

 俺と星井の声が重なった。
 ついでに、心臓がどえらい音をたてた。
 だって、こんな──他人の太ももに乗っかるのって、よほど親しい相手にしかやらないものではないのか?
 しかも、ナツさんは、俺を座椅子に見立てているのか「これでもか」と身体を寄せてくる。こんなの、ある意味「天国」であり「地獄」そのものじゃないか。
 慌てふためく俺の前で、星井は「へぇ」と目を細めた。

「どうしたの、なっちゃん。いきなりそんなことして」
「ん──宣戦布告?」

 ──はい!?

「オレ、青野のこと好きになっちゃったから。ナナセに宣戦布告しようと思って」

 いやいや、待ってくれ!
 俺がそう声をあげるより先に、教室中が大きくどよめいた。
 どうやら皆、俺たちの会話にこっそり耳を傾けていたらしい。

「やべ、修羅場だ」
「三角関係勃発だ」
「しかも兄と妹」
「青野モテモテじゃん」

 違う、俺にはわかる!
 この状況は、絶対にそんな言葉どおりのものじゃない。

「ナツさん、ちょっと来てください」
「あ、オレとふたりきりになりたいって?」
「そうです、だから早く!」

 本当は力任せに突き飛ばしたいところだったけど、悲しいかな、身体だけは「夏樹さん」なのだ。
 やむを得ず、俺はナツさんの腰に腕をまわした。それから、ひょいと持ち上げるようにしてその身体を横に退かした。
 ナツさんは「ひゃんっ」とおかしな声をあげ、教室内はさらにどよめいた。
 けれど、そんなの構っている場合じゃない。
 俺は、ナツさんの手を引くと、ひとまず教室を出ることにした。
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このシリーズの前のお話です。よろしければ…
「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」


こちらはBL未満のお話です
「モフモフ野郎と俺の朝ごはん」
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