目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件

水野七緒

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第1話

7・妹、登場(その1)

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「うわ、本当にいた」

 90分後、ようやく星井がカフェにやってきた。

「え、ナナセ? なんでここにいんの?」
「そんなの、青野に呼ばれたからに決まってんじゃん」

 星井は椅子の上に荷物を置くと、リュックから財布を取り出した。

「ナナセ、今から注文?」
「そうだけど」
「じゃあ、オレのもついでに! 黒糖ロイヤルミルクティーおかわりで!」
「……めずらしいね、お兄ちゃんが甘い系飲んでるの」

 ちら、と星井と目が合った。「たしかにおかしい」──そんな言葉が、聞こえてきたような気がした。

「それじゃ、お金」
「へっ?」
「ロイヤルミルクティーのおかわり分」

 早くよこせとばかりに右手を差し出す星井に、夏樹さんは「ええっ」とすっとんきょうな声をあげた。

「なんで!? ナナセのおごりじゃないの!?」
「おごりのわけないじゃん。バカ言ってないで、ほら、お金」
「じゃあ、青野──」
「こら! 青野にたからない!」

 俺に向けようとした夏樹さんの手を、星井は容赦なく叩き落とした。
 ちょっと──さすがにそれはどうだろう。兄妹ゲンカの範疇とはいえ、夏樹さんの手を叩くだなんて。
 乱暴な彼女に、夏樹さんはぷっと頬をふくらませた。

「いいじゃん、青野はオレのなんだし」

 ──うん? 夏樹さんは、今なんと?
 目を丸くする俺の代わりに、星井が「は?」と聞きかえした。

「なに言ってんの。誰が、誰のものだって?」

 すると、夏樹さんも「は?」と眉をひそめた。

「青野は、オレの、彼氏じゃん!」

 文節ごとに区切られた、元気のいいお返事。
 やはり空耳ではなかったその発言は、俺の脳内を真っ白にし、星井に再び「はぁっ!」と荒い声をあげさせた。

「違うでしょ、青野はお兄ちゃんの彼氏じゃないでしょ!」
「は!? なに言って──」
「青野は、私の彼氏! そうだよね、青野!?」

 妙な迫力に気圧されて、俺はこくんとうなずいた。
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このシリーズの前のお話です。よろしければ…
「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」


こちらはBL未満のお話です
「モフモフ野郎と俺の朝ごはん」
感想 1

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