8 / 124
第1話
7・妹、登場(その1)
しおりを挟む
「うわ、本当にいた」
90分後、ようやく星井がカフェにやってきた。
「え、ナナセ? なんでここにいんの?」
「そんなの、青野に呼ばれたからに決まってんじゃん」
星井は椅子の上に荷物を置くと、リュックから財布を取り出した。
「ナナセ、今から注文?」
「そうだけど」
「じゃあ、オレのもついでに! 黒糖ロイヤルミルクティーおかわりで!」
「……めずらしいね、お兄ちゃんが甘い系飲んでるの」
ちら、と星井と目が合った。「たしかにおかしい」──そんな言葉が、聞こえてきたような気がした。
「それじゃ、お金」
「へっ?」
「ロイヤルミルクティーのおかわり分」
早くよこせとばかりに右手を差し出す星井に、夏樹さんは「ええっ」とすっとんきょうな声をあげた。
「なんで!? ナナセのおごりじゃないの!?」
「おごりのわけないじゃん。バカ言ってないで、ほら、お金」
「じゃあ、青野──」
「こら! 青野にたからない!」
俺に向けようとした夏樹さんの手を、星井は容赦なく叩き落とした。
ちょっと──さすがにそれはどうだろう。兄妹ゲンカの範疇とはいえ、夏樹さんの手を叩くだなんて。
乱暴な彼女に、夏樹さんはぷっと頬をふくらませた。
「いいじゃん、青野はオレのなんだし」
──うん? 夏樹さんは、今なんと?
目を丸くする俺の代わりに、星井が「は?」と聞きかえした。
「なに言ってんの。誰が、誰のものだって?」
すると、夏樹さんも「は?」と眉をひそめた。
「青野は、オレの、彼氏じゃん!」
文節ごとに区切られた、元気のいいお返事。
やはり空耳ではなかったその発言は、俺の脳内を真っ白にし、星井に再び「はぁっ!」と荒い声をあげさせた。
「違うでしょ、青野はお兄ちゃんの彼氏じゃないでしょ!」
「は!? なに言って──」
「青野は、私の彼氏! そうだよね、青野!?」
妙な迫力に気圧されて、俺はこくんとうなずいた。
90分後、ようやく星井がカフェにやってきた。
「え、ナナセ? なんでここにいんの?」
「そんなの、青野に呼ばれたからに決まってんじゃん」
星井は椅子の上に荷物を置くと、リュックから財布を取り出した。
「ナナセ、今から注文?」
「そうだけど」
「じゃあ、オレのもついでに! 黒糖ロイヤルミルクティーおかわりで!」
「……めずらしいね、お兄ちゃんが甘い系飲んでるの」
ちら、と星井と目が合った。「たしかにおかしい」──そんな言葉が、聞こえてきたような気がした。
「それじゃ、お金」
「へっ?」
「ロイヤルミルクティーのおかわり分」
早くよこせとばかりに右手を差し出す星井に、夏樹さんは「ええっ」とすっとんきょうな声をあげた。
「なんで!? ナナセのおごりじゃないの!?」
「おごりのわけないじゃん。バカ言ってないで、ほら、お金」
「じゃあ、青野──」
「こら! 青野にたからない!」
俺に向けようとした夏樹さんの手を、星井は容赦なく叩き落とした。
ちょっと──さすがにそれはどうだろう。兄妹ゲンカの範疇とはいえ、夏樹さんの手を叩くだなんて。
乱暴な彼女に、夏樹さんはぷっと頬をふくらませた。
「いいじゃん、青野はオレのなんだし」
──うん? 夏樹さんは、今なんと?
目を丸くする俺の代わりに、星井が「は?」と聞きかえした。
「なに言ってんの。誰が、誰のものだって?」
すると、夏樹さんも「は?」と眉をひそめた。
「青野は、オレの、彼氏じゃん!」
文節ごとに区切られた、元気のいいお返事。
やはり空耳ではなかったその発言は、俺の脳内を真っ白にし、星井に再び「はぁっ!」と荒い声をあげさせた。
「違うでしょ、青野はお兄ちゃんの彼氏じゃないでしょ!」
「は!? なに言って──」
「青野は、私の彼氏! そうだよね、青野!?」
妙な迫力に気圧されて、俺はこくんとうなずいた。
20
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。



塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
[BL]デキソコナイ
明日葉 ゆゐ
BL
特別進学クラスの優等生の喫煙現場に遭遇してしまった校内一の問題児。見ていない振りをして立ち去ろうとするが、なぜか優等生に怪我を負わされ、手当てのために家に連れて行かれることに。決して交わることのなかった2人の不思議な関係が始まる。(別サイトに投稿していた作品になります)

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール
雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け
《あらすじ》
4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。
そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。
平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが
なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です
酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります
攻
井之上 勇気
まだまだ若手のサラリーマン
元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい
でも翌朝には完全に記憶がない
受
牧野・ハロルド・エリス
天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司
金髪ロング、勇気より背が高い
勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん
ユウキにオヨメサンにしてもらいたい
同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる