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第4話
9・苦すぎる思い出(その6)
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寝起きでまだぼんやりとしていた頭のなかが、緒形の一言で一気にクリアになった。
『ああ、ええと……お風呂、じゃないんだ?』
『えっ、いや──風呂も沸かせる! ちょっと時間かかるけど!』
勢いこむ緒形に、菜穂はやっぱりあいまいな反応しか返せない。
だって、違う──「お風呂がいい」と言いたかったわけじゃない。緒形が発した「シャワー」という単語が、やけに生々しすぎて、動揺してしまっただけなのだ。
『え、ええと……大丈夫、かな』
『大丈夫って?』
『だから、つまり……』
シャワーだけで十分──そう返そうとして、はたと気がつく。
(……そうだ、下着!)
すでに身につけてしまった新しい下着を、シャワー後どうするべきか、決めていないではないか。
ますますうろたえる菜穂に、緒形は困惑したような眼差しを向けてくる。
『あの──三辺、もしかしてアレ? いわゆる「女子の日」的な……』
『違うよ!』
自分でも驚くほど大きな声が出た。
『そういう理由じゃなくて、その……つまり……』
動揺に動揺が重なり、すっかり混乱してしまった菜穂は、気がつけば再び「大丈夫!」と返していた。
『ここに来る前に、お風呂入ってきたから! 入らなくても大丈夫!』
『あ、そう……なんだ?』
緒形は一瞬面食らったようだったものの、すぐに取り繕ろうような笑顔を見せた。
『それじゃ、ええと……俺はシャワーを浴びてくるかな』
『わかった……いってらっしゃい!』
いつになくテンション高めに返してみたものの、すぐさま「これで正解だったのだろうか」との疑問がわいてくる。
緒形は、いったん隣の部屋に引っ込むと、着替えらしきものを手に、キッチンの奥へと消えていった。おそらく、あのあたりに洗面所や浴室があるのだろう。
ひとりぼっちになった菜穂は、ソファの上でギュッと膝を抱え込んだ。
(やっぱり無理だよね、何もなしで朝を迎えるなんて)
でも、大丈夫──緒形は、こういうことには慣れているはず。
だったら、すべてを彼に任せてしまえばいい。彼の言うとおりにすればいいのだ。
『ああ、ええと……お風呂、じゃないんだ?』
『えっ、いや──風呂も沸かせる! ちょっと時間かかるけど!』
勢いこむ緒形に、菜穂はやっぱりあいまいな反応しか返せない。
だって、違う──「お風呂がいい」と言いたかったわけじゃない。緒形が発した「シャワー」という単語が、やけに生々しすぎて、動揺してしまっただけなのだ。
『え、ええと……大丈夫、かな』
『大丈夫って?』
『だから、つまり……』
シャワーだけで十分──そう返そうとして、はたと気がつく。
(……そうだ、下着!)
すでに身につけてしまった新しい下着を、シャワー後どうするべきか、決めていないではないか。
ますますうろたえる菜穂に、緒形は困惑したような眼差しを向けてくる。
『あの──三辺、もしかしてアレ? いわゆる「女子の日」的な……』
『違うよ!』
自分でも驚くほど大きな声が出た。
『そういう理由じゃなくて、その……つまり……』
動揺に動揺が重なり、すっかり混乱してしまった菜穂は、気がつけば再び「大丈夫!」と返していた。
『ここに来る前に、お風呂入ってきたから! 入らなくても大丈夫!』
『あ、そう……なんだ?』
緒形は一瞬面食らったようだったものの、すぐに取り繕ろうような笑顔を見せた。
『それじゃ、ええと……俺はシャワーを浴びてくるかな』
『わかった……いってらっしゃい!』
いつになくテンション高めに返してみたものの、すぐさま「これで正解だったのだろうか」との疑問がわいてくる。
緒形は、いったん隣の部屋に引っ込むと、着替えらしきものを手に、キッチンの奥へと消えていった。おそらく、あのあたりに洗面所や浴室があるのだろう。
ひとりぼっちになった菜穂は、ソファの上でギュッと膝を抱え込んだ。
(やっぱり無理だよね、何もなしで朝を迎えるなんて)
でも、大丈夫──緒形は、こういうことには慣れているはず。
だったら、すべてを彼に任せてしまえばいい。彼の言うとおりにすればいいのだ。
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