36 / 130
第3話
10・ラブストーリーだけは……
しおりを挟む
何をいきなり、と思いつつ菜穂は「どれでも」と答えた。
「あ、ホラーもいける感じ?」
「暴力描写がきつくなければ。どうして?」
「今日観る映画、どれにしようかまだ迷ってて」
ああ、そういえば映画がどうのと言っていたか。
菜穂は少し考えこんでから「だったらヒューマンドラマかホラー」と返した。
今はラブストーリーを観る気にはなれなかった。それもお涙頂戴系ならなおさらだ。
「じゃあ、ホラーで」
席予約しとく、と緒形はスマホを操作する。
やっぱり慣れているな、と菜穂は感じた。これまでデートと呼べるものを数えるほどしかしてこなかった自分とは大違いだ。
それから1時間ほどカフェで時間をつぶして、映画館に移動した。
上映館は、大きな通りをはさんだすぐ目の前にあって、そういえばこのあたりには他にもいくつか映画館があることを今更のように思い出す。おそらく、そのあたりも踏まえて、緒形はこのカフェを選んだのだろう。
(やっぱり慣れてる)
東京に戻ってきて、まだ2週間のはずなのに。
それともこうした気遣いも、営業という仕事柄当然なのだろうか。
週末ということもあって、館内のメインロビーはそれなりに混雑していた。
とはいえ、ホラーを観たい人は少ないようで、指定されたシアター10は半分も座席が埋まっていなかった。
「怖かったら遠慮なく抱きついてくれていいから」
ポップコーンを摘みながら、緒形はにやりと笑った。
「そんなことしないよ」
「まあまあ、そう言わず」
からかうような口調に「絶対にそんなことするものか」と菜穂が誓ったところで、館内の照明が落とされた。
「あ、ホラーもいける感じ?」
「暴力描写がきつくなければ。どうして?」
「今日観る映画、どれにしようかまだ迷ってて」
ああ、そういえば映画がどうのと言っていたか。
菜穂は少し考えこんでから「だったらヒューマンドラマかホラー」と返した。
今はラブストーリーを観る気にはなれなかった。それもお涙頂戴系ならなおさらだ。
「じゃあ、ホラーで」
席予約しとく、と緒形はスマホを操作する。
やっぱり慣れているな、と菜穂は感じた。これまでデートと呼べるものを数えるほどしかしてこなかった自分とは大違いだ。
それから1時間ほどカフェで時間をつぶして、映画館に移動した。
上映館は、大きな通りをはさんだすぐ目の前にあって、そういえばこのあたりには他にもいくつか映画館があることを今更のように思い出す。おそらく、そのあたりも踏まえて、緒形はこのカフェを選んだのだろう。
(やっぱり慣れてる)
東京に戻ってきて、まだ2週間のはずなのに。
それともこうした気遣いも、営業という仕事柄当然なのだろうか。
週末ということもあって、館内のメインロビーはそれなりに混雑していた。
とはいえ、ホラーを観たい人は少ないようで、指定されたシアター10は半分も座席が埋まっていなかった。
「怖かったら遠慮なく抱きついてくれていいから」
ポップコーンを摘みながら、緒形はにやりと笑った。
「そんなことしないよ」
「まあまあ、そう言わず」
からかうような口調に「絶対にそんなことするものか」と菜穂が誓ったところで、館内の照明が落とされた。
4
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる