106 / 106
❹
【百一話】犬の機転と裏切者
しおりを挟む
佐竹視点___
「…深月っ!!!!…ぐっぁ」
右腕を空に伸ばし深月に手を伸ばした…つもりだった。
急に腹に激痛が走る。
「深月は居ねえよ。よかったなあ死ななくて」
「ほんとっスよー?急所外れたから良かったようなものの」
「お前が言うな!お前も動脈やられてたら死んでんだからな」
「そうなっスよねぇーほんと良かったっスよ。痛み堪えて死んだふりしながらシロさんに電話かけたおかげで今の俺たちがあるっス!!」
「すっすすっす、うせぇなぁほんとに…」
横目にシロに目をやるとその後ろ側のベッドに寝転んでるハチがいる。
「……深月は…」
「持ってかれた。追いかけようとしたけど威嚇射撃されてなぁ…お前とハチがやられてるの見えてるから…スマン」
丸椅子に座りながら頭を下げるシロを見てそれ以上問い詰める気は起きなかった。
ハチの出血の量も東堂が俺たちを本気で撃つつもりなのも深月は分かっていた。だから庇うために東堂の元にわざといったんだ。
自分を傷つけるつもりはないと踏んで。
深月が俺を呼ぶ声が耳に残っている…
「シロ」
「分かってる、大丈夫だ。深月の居所も分かってるから」
「まだ、連れ戻せてないのか」
「まぁ、まだ難しいな……」
分かっている。分かってるが…深月を庇えなかった、行かせてしまった自分が許せない。
「いつ退院できるんだ」
「傷がふさがるまでは無理そうだなぁ。2週間は無理だろうよ」
「俺も同じくらいっス。ボスのほうが内蔵やられてるんでもうちょっとかかるかもっスね」
「おっ前は!!いい加減な事をっ」
思わずハチのあけっけらかんと言う声に反射的に声を荒らげてしまった。
さっきまでとは違う真剣な声で、俺の声に被せる。
「悔しくないわけないっスけど。喚いたって落ち込んだって深月ちゃんは帰ってこないっス。俺らに今出来るのは食って寝て少しでも早くここから出る事なんスよ」
「……」
「ま、そゆこった」
シロが立ち上がって俺の頭をペシっと叩き、んじゃまぁ俺はこれで帰るわ。と病室を出ようとした。
「お前一応ハチに感謝しとけ、ハチが必死に俺に電話かけてきたからあの速度でお前らのとこまで行けたし、一応ハチもお前も死にかけだったからな。良く生きてた。とりあえず傷塞ぐところから始めろ。あとはこっちに任せろ。絶対に息の根を止めてやる」
低いドスの聞いた声に空気が一気にピリ付く。
久しぶりに見た黒獅子のその声に思わず身震いしてしまうほど、怒気が含まれていた。
ドアが閉まり、一泊置いて「かっけーっス!」と興奮したように叫ぶハチを横目に、目を閉じる。
ハチの言う通りだ。
怪我人の俺が焦って動いたとしても周りに迷惑をかけるだけで、足手まといだ。
あの首輪は特殊な金属で出来ていて、外し方を知らないと物騒な言い方をすれば、首を切り落とさない限り取れない。
取らない限り深月の生死も居場所もこちらに筒抜けだ。
大丈夫。深月を取り戻せる。
「ハチ」
「はいはい」
「ありがとな。良くやった」
「へへっ、あざっス」
「あと、今すぐタマを呼べ」
「へ?」
「俺にできる、事をする」
「え、でも今組長さんが後は任せろって」
ドアを指さしながら俺を見るハチに
「……ユダがいる」
「うそん、マジっスかぁ」
前日に決まった花見。
行く場所も『公園』ということ以外は基本決めていなかった。
出かける時間も前日に決めた。
行った公園には一般人が来なかった。
あの場所でシートを広げたのは偶然だ。
なのに、狙撃が出来た。
田辺がそれをかぎつけることが出来るわけがない。
しかも東堂が出てきている。
裏切り者が、確実にいる___
「…深月っ!!!!…ぐっぁ」
右腕を空に伸ばし深月に手を伸ばした…つもりだった。
急に腹に激痛が走る。
「深月は居ねえよ。よかったなあ死ななくて」
「ほんとっスよー?急所外れたから良かったようなものの」
「お前が言うな!お前も動脈やられてたら死んでんだからな」
「そうなっスよねぇーほんと良かったっスよ。痛み堪えて死んだふりしながらシロさんに電話かけたおかげで今の俺たちがあるっス!!」
「すっすすっす、うせぇなぁほんとに…」
横目にシロに目をやるとその後ろ側のベッドに寝転んでるハチがいる。
「……深月は…」
「持ってかれた。追いかけようとしたけど威嚇射撃されてなぁ…お前とハチがやられてるの見えてるから…スマン」
丸椅子に座りながら頭を下げるシロを見てそれ以上問い詰める気は起きなかった。
ハチの出血の量も東堂が俺たちを本気で撃つつもりなのも深月は分かっていた。だから庇うために東堂の元にわざといったんだ。
自分を傷つけるつもりはないと踏んで。
深月が俺を呼ぶ声が耳に残っている…
「シロ」
「分かってる、大丈夫だ。深月の居所も分かってるから」
「まだ、連れ戻せてないのか」
「まぁ、まだ難しいな……」
分かっている。分かってるが…深月を庇えなかった、行かせてしまった自分が許せない。
「いつ退院できるんだ」
「傷がふさがるまでは無理そうだなぁ。2週間は無理だろうよ」
「俺も同じくらいっス。ボスのほうが内蔵やられてるんでもうちょっとかかるかもっスね」
「おっ前は!!いい加減な事をっ」
思わずハチのあけっけらかんと言う声に反射的に声を荒らげてしまった。
さっきまでとは違う真剣な声で、俺の声に被せる。
「悔しくないわけないっスけど。喚いたって落ち込んだって深月ちゃんは帰ってこないっス。俺らに今出来るのは食って寝て少しでも早くここから出る事なんスよ」
「……」
「ま、そゆこった」
シロが立ち上がって俺の頭をペシっと叩き、んじゃまぁ俺はこれで帰るわ。と病室を出ようとした。
「お前一応ハチに感謝しとけ、ハチが必死に俺に電話かけてきたからあの速度でお前らのとこまで行けたし、一応ハチもお前も死にかけだったからな。良く生きてた。とりあえず傷塞ぐところから始めろ。あとはこっちに任せろ。絶対に息の根を止めてやる」
低いドスの聞いた声に空気が一気にピリ付く。
久しぶりに見た黒獅子のその声に思わず身震いしてしまうほど、怒気が含まれていた。
ドアが閉まり、一泊置いて「かっけーっス!」と興奮したように叫ぶハチを横目に、目を閉じる。
ハチの言う通りだ。
怪我人の俺が焦って動いたとしても周りに迷惑をかけるだけで、足手まといだ。
あの首輪は特殊な金属で出来ていて、外し方を知らないと物騒な言い方をすれば、首を切り落とさない限り取れない。
取らない限り深月の生死も居場所もこちらに筒抜けだ。
大丈夫。深月を取り戻せる。
「ハチ」
「はいはい」
「ありがとな。良くやった」
「へへっ、あざっス」
「あと、今すぐタマを呼べ」
「へ?」
「俺にできる、事をする」
「え、でも今組長さんが後は任せろって」
ドアを指さしながら俺を見るハチに
「……ユダがいる」
「うそん、マジっスかぁ」
前日に決まった花見。
行く場所も『公園』ということ以外は基本決めていなかった。
出かける時間も前日に決めた。
行った公園には一般人が来なかった。
あの場所でシートを広げたのは偶然だ。
なのに、狙撃が出来た。
田辺がそれをかぎつけることが出来るわけがない。
しかも東堂が出てきている。
裏切り者が、確実にいる___
1
お気に入りに追加
546
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(10件)
あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041


ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした
瀬名。
恋愛
大学1年生の冬。母子家庭の私は、母に逃げられました。
家も取り押さえられ、帰る場所もない。
まず、借金返済をしてないから、私も逃げないとやばい。
…そんな時、借金取りにきた私を買ってくれたのは。
ヤクザの若頭でした。
*この話はフィクションです
現実ではあり得ませんが、物語の過程としてむちゃくちゃしてます
ツッコミたくてイラつく人はお帰りください
またこの話を鵜呑みにする読者がいたとしても私は一切の責任を負いませんのでご了承ください*

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
更新お待ちしてますます。
みゅうみゅう様>
コメントありがとうございます!!!
あけましておめでとうございます💕
早ければ今週末
遅くとも来週末にはあげられると思いますのでぜひお待ち頂けたらと思います🥰
年末からバタバタして更新止まってしまってすみません💦
良ければ感想などもお待ちしておりますのでぜひまたコメントしていただけると嬉しいです😊
∑(๑ºдº๑)!!更新してるぅぅぅぅーー!!!!
本当に好きで何度も読み返しながら更新をお待ちしてました!
3ヒーロー達がもう格好良くて鼻血が噴射してしまいそう(* ̄ii ̄)
執筆大変かと思いますが、応援しています!
もりこ様>
コメントありがとうございます!!
めちゃくちゃ励みになります☺️
何度も読み返していただいて嬉しいです✨😭
毎日更新は出来ないと思いますが
少しずつあげられるように頑張ります💪🔥
よかったらまたコメント・応援していただけると嬉しいです♥️
これからもよろしくお願いします🙇♀️
鼻血たくさん出していただけるように頑張りますね💪
投稿ありがとうございます。もう、好きすぎて何度も読み返しています。3人とも大好きなキャラで、毎回更新を楽しみにしております。三嶋さんやっときました。今後の展開楽しみにしてます。
まーちゃん様♡
ありがとうございます!
何度も読み返して貰えてるなんて!!
三嶋ターンが思ったより長くなってしまいまして…まだまだ三嶋続きますwww
空気だった三嶋さんですが印象に残る人物になれたら嬉しいです♡
獣たちと深月をこれからもお楽しみくださいm(*_ _)m