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【九十九話】まるで演説#
しおりを挟む「お前さぁ、もうちょっと頭使え?馬鹿なの?」
はぁっとため息を大げさに付きながら、一定の距離をとりつつ、しゃがんで私の高さに合わせて目を合わせる。
「こいつらはお前の能力が欲しいの。
お前が余計なことをして、田辺に逃げ込んだ男をコイツらに教えちゃうから、こっちがお前を探さないといけなくなって、
コイツらがお前を保護することになって、コイツらもメーワク。俺たちもメーワク。
コイツらはお前の能力も使えっから囲っとこって観点だろうけど、そのせいでお前は人一人殺してるワケ。
しかもなぁ、お前藤倉に居続けたら田辺に永遠に狙われ続けるぞぉ?
コイツらはいつまでお前のおもりし続けるんだろうなぁ
ね?ササキさん、今そっち何人コイツのせいで死者でてます?」
「……」
私に顔を向けたまま、佐々木さんに目だけを向ける。
佐々木さんはピクリと肩を揺らしたが無言を貫いている。
1人殺している…と言われてすぅーっと表情が死んだ気がした。
私が、人を殺した。
その発言に実感はない。
ないが、調べた感じ隣人の消息は絶たれている。
あー死んだかもな。と思ったことも事実だ。
だが遅かれ早かれ彼はこの人たちに見つかって処理されるか、田辺のほうで厄介払いされるかの二択でしかなかったと思う。
居場所を教えたことで彼の消息が絶ったのが早まっただけだと思っていたけれど、私が居場所を教えたことで
私自身が龍桜会と繋がり「私が殺した」という発言に繋がってしまうのは事実だ。
それに、私がココに保護されていることで、私を追う田辺側と藤倉側の争いに衝突を産んでしまったのも、たぶん事実だ。
死んだか生きているかは問題じゃない。
確かに。と立ちながらズボンの皺をパシパシと叩いて伸ばし、佐々木さんに寄りながら話し続ける男に、目だけで追う私達。
「確かに、藤倉は強い。それは認めましょ。
送ったやつら、戻ってきたのは8人中たったの2人。6人も戻ってこねぇ。
戻ってきたとしても、基本再起不能って…ハッ、笑えねぇ…
なぁ深月。お前のせいで行方不明者は最低で6人だ。6人。
6人この世から消えてる。分かるか?
田辺に6人。じゃぁ藤倉には…?どうだろうな、1人、2人は死んでるかもな
少なくとも怪我はしてるはずだ。
お前は?何してた?その体使って男に守ってもらってたか?ん?」
うろうろと私達を見ながら歩き、騙り続ける男が私の顔に手を伸ばす。
「深月、聞くな!聞かなくていい...!!」
パシンとその手を振り払い佐竹さんがうなる。
その反応で、実際被害が少なくとも出ているのが分かってしまう。
「いいや!お前は聞くべきだ。
お前の行いで怪我をしたヤツがいる事を、死んだヤツがいる事を、人生を台無しにされたヤツがいる事を!
なぁ、なんでお前はのうのうと生きているんだ?生きていられるんだ?
お前が藤倉に居る限り、田辺はお前を殺すために動かないわけにはいかないんだぞ?
だがな、深月。
田辺には俺がいる。
お前と血の繋がっている俺が幹部に居る。
俺と来ればお前を殺さずにいることが出来るし、俺がお前を守ってやれる。
藤倉側に居たら田辺はお前を殺すために藤倉を襲い、お前を守っている誰かを傷つけ、死ぬかもしれない」
ほら、そこにひっくり返っている男のように。
そうあごで示すのはハチくんだ。
ハチくんの倒れているシートの上には血だまりが出来ている。
ほらぁ、こんな話してたらコイツも死んじゃうかもよ?と足先でハチくんの背中を軽く蹴りつける。
「まぁ、こっちの誰かが死ぬかもしれないし、お前が死ぬかもしれないな?
お前のせいで組同士の戦争が起きるかもしれない。もっともっと血が流れて人が死ぬ。
お前が俺と田辺に来れば、だーれも死なない。誰も傷つかない。お前も生きられて平和。Win-Winだ。
さあ決めろ。
今、ここで。
俺と来い」
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