103 / 106
❹
【九十八話】花見と最悪の再会#
しおりを挟む
日光に当たるため、朝の八時というなんとも言えない時間帯に財田ハウスの近くにある公園に来た。
久しぶりのお花見。久しぶりの太陽、久しぶりの風!
お花見にしては早すぎる時間だと思うが、人気の関係上仕方ないらしい。
しかも、しかもだ!!
徒歩10分もかかるかかからないかという公園に行くのに車で行かないとダメだと言われ、しぶしぶ佐々木さんが運転する黒塗りベンツに乗り、佐々木・ハチくん、そして過保護筆頭佐竹さんの4人で来ている。
スーツイケオジ。B系ファッション男子、そしてモデル並みの男。と芋女の私。
異色。無理。なんだこのアンバランスなグループ。目立たないわけないだろ!!!
しかもサングラス3人ともかけてるの。
なんだコレ。
SP二人とワンコ連れてるとかどこのお嬢様だよ!!
「深月さん、あの桜の下どうですか?」
「あ、はい」
しかし、久しぶりの外、久しぶりの木々。
気持ちのいい風が通り過ぎ、木々の葉のこすれ合う音もとても心地いい。
サァ・・という風の音と共に、桜の花もひらひらと舞ってとても綺麗だ。
(心が洗われるぅ・・・)
天気が良くて本当に良かった…としみじみしていると、ハチくんがレジャーシートを木の下に敷き、荷物を広げて朝食の準備をしてくれた。
完全なるピクニック。
花見という名のピクニック。
家族団らんの一コマである。
父。佐々木。
長男佐竹
長女私
次男ハチくん
みたいな感じ。
平日の朝なのに、気分は休日の家族ピクニック。
ハチくんが佐竹さんにきゃいきゃいと絡んでいるのを見ているとちょっとだけ母になった気分である。
微笑ましい。
「座りましょうか」と佐々木さんに促され、レジャーシートに膝を突こうとした。
その瞬間。
ピシュンという音が聞こえ、ハチくんが膝を抱えて倒れた。
「ぐぅっ・・・」と声をあげるハチくんのズボンが見る見るうちに赤黒く染まっていく。
「ハチくん!!」
佐々木さんがハチくんに駆け寄って、周りを警戒し、佐竹さんは私をかばうように抱きしめた。
カサリと少し離れた場所から身を出し、こちらに向かってくる男。
「な…んで……?」
ゆっくりと近づいてくるその姿に、体が勝手に震えだす。
私の異変にすぐ気が付き、佐竹さんが男から隠すように体を向ける。
佐々木さんはハチくんの応急処置が終えてから佐竹さんの前に立つ。
「よお、楽しそうじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」
何もなかったかのように、何も知らないような声で、にこやかに言う男。
忘れたくても忘れられない、その顔。
「とう…さ…ん……」
これ美味いな。お前が作ったんか?料理なんかできたっけか?
山村さんのお手製卵焼きを口に頬張りながらしゃべる。
なぜこの人は、悪びれもせず私の前に来れるんだろう。
全身の毛がブワワっと立った気がした。
「しっかし、久しぶりだなぁ、元気そうで何よりだ。…おっと、動くなよー?動いたらそこで倒れてる男の子みたいになっちゃうぜ?」
レジャーシートに土足で上がったうえに、どかっとそのまま座る男を見つめる。
この場にいる全員が、こいつに殺意を向けていた。
「…深月、父親か?」
男から目を離さず、普段より低い声で呟く佐竹さんの声には怒気が含まれていた。
私の手を上から包み込んでいる彼の、怒りに満ちた一言に我に返り、震えが止まる。
そうだ。大丈夫だ。私は…
「どーもぉ。深月の父ですー。娘がお世話になってますー。死にたくなかったら動かないことですよー」
うさん臭い営業のように目を弓なりにし、頭に手を当ててペコっと座ったまま会釈をした。
父親だなんて名乗ってほしくはない。
父親らしいことなんて何一つしたこともないくせに。
「佐竹さん、でしたっけね。深月は財田の女ですか?それともアンタの…ですか?まあどっちでもいいんですが…
今までお宅さんたちが預かっててくれて助かりましたー、ずいぶん探してたんですが、やっと見つかりましてねぇ。
娘は責任もって『親』の私が管理しますので、深月を置いてお引き取りください」
「悪いが、あんたはもう深月の父親でもなんでもない。そもそも子供を捨てたアンタが親を名乗る資格はない」
あれぇ…
ああ……そういえばこのヤクザたち、私の過去知ってるんだった。
3サイズも下着のサイズも知り尽くしてる人たちだったの忘れてた。
「確かにぃ、あの時の俺は子供を大切にしない酷い親だった!でも俺は変わったんだ深月!!
お前を大切にしよう、謝って一からお前と一緒に幸せに暮らしたい。そう思ったから探したんだ!!」
まるで役者にでもなったかのような酷い大げさな身振り手振りで繰り広げられるソレに、身の毛がよだつ。
何言ってんだコイツ。
0歳の時から見捨てられ、人として頭おかしい事をしておいて、失踪して、今になって大切にしたい…は気が狂ってるだろ。
万が一、億が一、大切にしたいと思ったとしても「一緒に暮らしたい」になんかならない。
二度と目の前に現れないが正解だ。
「田辺での位置がそんなに良くないんですか?東堂さん」
「おう。藤倉の若のお目付け役さんじゃねぇか、あー。なんだっけ名前…あー。木村…いやスズキ…ん-…あっササキだ。ササキ。どーもどーも、良く俺のこと覚えてましたねぇ」
おぉーすごいすごいとパチパチと拍手しながら佐々木さんに体を向ける。
とうどう?この人、名前変わってんのか…通りで……
「田辺組?」
「そうだぞぉ、お前の父親は今や関東一のヤクザのお偉いさんだ!藤倉の下ぁぁぁああああのほうに居る龍桜会の組長なんかとは格が違うんだぞぉ」
ニヤニヤとしながら佐々木さんの後ろにいる私に向かって体を横に倒しながらドヤ顔をさらす。
「佐々木さん」
「はい」
「この人は私の父です。それは間違いない」
「はい」
「でも田辺組の幹部なんですよね?」
「はい」
せっかくの花見という名の家族団らんピクニックがこの男のせいで台無しだ。
「何しに来たんですか、あなた」
「ん-、お前をむかえに」
「付いていくと思いますか?」
「なに、お前もしかしてそいつらと一緒にいたいの?」
「少なくともあなたといるよりは」
男の目がすぅっと細められ、私たちを見回すように歩き始める。
久しぶりのお花見。久しぶりの太陽、久しぶりの風!
お花見にしては早すぎる時間だと思うが、人気の関係上仕方ないらしい。
しかも、しかもだ!!
徒歩10分もかかるかかからないかという公園に行くのに車で行かないとダメだと言われ、しぶしぶ佐々木さんが運転する黒塗りベンツに乗り、佐々木・ハチくん、そして過保護筆頭佐竹さんの4人で来ている。
スーツイケオジ。B系ファッション男子、そしてモデル並みの男。と芋女の私。
異色。無理。なんだこのアンバランスなグループ。目立たないわけないだろ!!!
しかもサングラス3人ともかけてるの。
なんだコレ。
SP二人とワンコ連れてるとかどこのお嬢様だよ!!
「深月さん、あの桜の下どうですか?」
「あ、はい」
しかし、久しぶりの外、久しぶりの木々。
気持ちのいい風が通り過ぎ、木々の葉のこすれ合う音もとても心地いい。
サァ・・という風の音と共に、桜の花もひらひらと舞ってとても綺麗だ。
(心が洗われるぅ・・・)
天気が良くて本当に良かった…としみじみしていると、ハチくんがレジャーシートを木の下に敷き、荷物を広げて朝食の準備をしてくれた。
完全なるピクニック。
花見という名のピクニック。
家族団らんの一コマである。
父。佐々木。
長男佐竹
長女私
次男ハチくん
みたいな感じ。
平日の朝なのに、気分は休日の家族ピクニック。
ハチくんが佐竹さんにきゃいきゃいと絡んでいるのを見ているとちょっとだけ母になった気分である。
微笑ましい。
「座りましょうか」と佐々木さんに促され、レジャーシートに膝を突こうとした。
その瞬間。
ピシュンという音が聞こえ、ハチくんが膝を抱えて倒れた。
「ぐぅっ・・・」と声をあげるハチくんのズボンが見る見るうちに赤黒く染まっていく。
「ハチくん!!」
佐々木さんがハチくんに駆け寄って、周りを警戒し、佐竹さんは私をかばうように抱きしめた。
カサリと少し離れた場所から身を出し、こちらに向かってくる男。
「な…んで……?」
ゆっくりと近づいてくるその姿に、体が勝手に震えだす。
私の異変にすぐ気が付き、佐竹さんが男から隠すように体を向ける。
佐々木さんはハチくんの応急処置が終えてから佐竹さんの前に立つ。
「よお、楽しそうじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」
何もなかったかのように、何も知らないような声で、にこやかに言う男。
忘れたくても忘れられない、その顔。
「とう…さ…ん……」
これ美味いな。お前が作ったんか?料理なんかできたっけか?
山村さんのお手製卵焼きを口に頬張りながらしゃべる。
なぜこの人は、悪びれもせず私の前に来れるんだろう。
全身の毛がブワワっと立った気がした。
「しっかし、久しぶりだなぁ、元気そうで何よりだ。…おっと、動くなよー?動いたらそこで倒れてる男の子みたいになっちゃうぜ?」
レジャーシートに土足で上がったうえに、どかっとそのまま座る男を見つめる。
この場にいる全員が、こいつに殺意を向けていた。
「…深月、父親か?」
男から目を離さず、普段より低い声で呟く佐竹さんの声には怒気が含まれていた。
私の手を上から包み込んでいる彼の、怒りに満ちた一言に我に返り、震えが止まる。
そうだ。大丈夫だ。私は…
「どーもぉ。深月の父ですー。娘がお世話になってますー。死にたくなかったら動かないことですよー」
うさん臭い営業のように目を弓なりにし、頭に手を当ててペコっと座ったまま会釈をした。
父親だなんて名乗ってほしくはない。
父親らしいことなんて何一つしたこともないくせに。
「佐竹さん、でしたっけね。深月は財田の女ですか?それともアンタの…ですか?まあどっちでもいいんですが…
今までお宅さんたちが預かっててくれて助かりましたー、ずいぶん探してたんですが、やっと見つかりましてねぇ。
娘は責任もって『親』の私が管理しますので、深月を置いてお引き取りください」
「悪いが、あんたはもう深月の父親でもなんでもない。そもそも子供を捨てたアンタが親を名乗る資格はない」
あれぇ…
ああ……そういえばこのヤクザたち、私の過去知ってるんだった。
3サイズも下着のサイズも知り尽くしてる人たちだったの忘れてた。
「確かにぃ、あの時の俺は子供を大切にしない酷い親だった!でも俺は変わったんだ深月!!
お前を大切にしよう、謝って一からお前と一緒に幸せに暮らしたい。そう思ったから探したんだ!!」
まるで役者にでもなったかのような酷い大げさな身振り手振りで繰り広げられるソレに、身の毛がよだつ。
何言ってんだコイツ。
0歳の時から見捨てられ、人として頭おかしい事をしておいて、失踪して、今になって大切にしたい…は気が狂ってるだろ。
万が一、億が一、大切にしたいと思ったとしても「一緒に暮らしたい」になんかならない。
二度と目の前に現れないが正解だ。
「田辺での位置がそんなに良くないんですか?東堂さん」
「おう。藤倉の若のお目付け役さんじゃねぇか、あー。なんだっけ名前…あー。木村…いやスズキ…ん-…あっササキだ。ササキ。どーもどーも、良く俺のこと覚えてましたねぇ」
おぉーすごいすごいとパチパチと拍手しながら佐々木さんに体を向ける。
とうどう?この人、名前変わってんのか…通りで……
「田辺組?」
「そうだぞぉ、お前の父親は今や関東一のヤクザのお偉いさんだ!藤倉の下ぁぁぁああああのほうに居る龍桜会の組長なんかとは格が違うんだぞぉ」
ニヤニヤとしながら佐々木さんの後ろにいる私に向かって体を横に倒しながらドヤ顔をさらす。
「佐々木さん」
「はい」
「この人は私の父です。それは間違いない」
「はい」
「でも田辺組の幹部なんですよね?」
「はい」
せっかくの花見という名の家族団らんピクニックがこの男のせいで台無しだ。
「何しに来たんですか、あなた」
「ん-、お前をむかえに」
「付いていくと思いますか?」
「なに、お前もしかしてそいつらと一緒にいたいの?」
「少なくともあなたといるよりは」
男の目がすぅっと細められ、私たちを見回すように歩き始める。
1
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説


若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる