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第八十三話【三嶋の飴と鞭3】※
しおりを挟むSMルームがさぁ、あるなんて誰も思わないじゃーん。
瞼にチュとかさー、優しく頬を撫でるとかさー。
甘い行為じゃん?
だまされた―。めっちゃだまされた―。
チュ、チュ、時々ペロ。
瞼だけではなく、頬。唇。髪。鼻。耳。首筋。
いたるところにちゅっちゅされるし、ぺろぺろされるし、時折かぷかぷと食べられるし。
くすぐったくて、恥ずかしくて、SMグッズに囲まれてるのも忘れてあまーい雰囲気にのまれてたの。
気づいたらね。
両手が椅子に拘束されておりました。
手際が良いというか、私がアホだったというか。
ひじ掛けにね。
ベルトというか枷がついててね。
手首、しっかり固定されてたよね。
「痛いところはありませんか?抜けない程度に緩めてはあるんですけど」
そうだね、抜けないね。
「痛くはないですが…」
「よろしい。僕のキス、気持ちよかったですか?まったく気付く様子がなくてちょっと心配しましたよ?」
「……っ」
恥ずかしくて三嶋さんから顔をそむける。
クスッという笑いが聞こえたと思ったら、頭を撫でられた。
本気で恥ずかしい。
二度目につかまってからというもの、この獣たちの私に対する対応や言動がだだ甘で、そういう甘い雰囲気とか言葉とかの耐性がなさ過ぎて戸惑いが凄い。
三嶋さんはそんなことないと思ってたのになぁ…
というかドエス眼鏡という属性やばない?
ていうか、そんなことよりこの状況から脱却するにはどうしたらいいの!
このままじゃどんなひどい事されるかわかんないんだけど!!
ジャラ…という音がして、嫌な予感に三嶋さんのほうを向く。
少し離れたところで何やら黒い革っぽいものとかベルトっぽいものとかなんかいろいろ!いろいろ見てる!
「あ!あの!!私痛いのとか、その…ムチとか…ロウソク…とか怖いし無理なんですけど…」
反射的に声かけたはいいけど、怖すぎて俯きながら声が小さくなった。
ジャラっと持っていたものを置いたような音がして、三嶋さんが私の前に跪き、私に頬に手を添えた。
「怖がらせましたね…すみません…。大丈夫ですよ。僕は貴女を悲しませたいわけじゃないんです。どうせ泣くなら苦痛の涙ではなく、快楽での涙のほうが僕は好きですし…」
「……痛くない?」
「はい。」
「殴らない?」
「しません。」
「怒鳴らない?」
「しません。使う道具とか、用途とか、全部説明します。深月さんが本気で怖いとか命の危険があると感じたものは断ってください。私も配慮します。それでどうですか?」
「……わかりました。じゃぁこのベルト外してください」
「だめです。」
「なんで!怖いんですけど!」
「これは深月さんの安全のためにしているベルトです。外せません。」
「安全てどういうことですか…私が暴れたらアブナイってことですか。」
「あとは僕の趣味です。」
「趣味なんじゃん!」
「安全の為っていうのは嘘じゃないですよ」
ニコっと笑顔を見せながら安心するように頭を撫でてくれる三嶋さん。
既にこの状態が嫌だとは思っているけれど…
「うぅぅ…」
ガクリ。
これ以上押し問答してもこのベルトは外してもらえない。
配慮をするってことはそういうことだ。
「本当に本当に無理なのに辞めてくれなかったら、後で財田さんに言います。」
「ありがとうございます。それで大丈夫ですよ。」
ちゅっ
唇に軽いキスを落として三嶋さんがまた離れる。
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