3獣と檻の中

蓮雅 咲

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第九十二話【睡眠は大事。】

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軟禁生活もだいぶ慣れたもんだ。

財田さんに時間がある日は、部屋に来てそれはそれは大切に抱かれる。
最初の時のように、愛しそうに。
本当に愛されているかのように錯覚する。
目が覚めれば男に抱きしめられている状況にもいい加減慣れた。
慣れてしまった。

最初なんて目の前にイケメンが寝ていることに驚きすぎて変な声、出たし。
抱きしめられていたから身動きできなくて、財田さんが起きるまで石化状態だったし?

まぁでも、今ではほらこの通り。
そっと財田さんの腕を押し上げ、ゆっくりとベッドを降りることもできる。
ね?出来…出来……!?

「どこ行くつもりだァ?まだ早い…このままでいろ……」

……なんで起きてんだよ…昨日は起きなかっただろ…!

「ちょ…ちょっとトイレに…」

兎に角、体に巻き付いている腕をどかそうと力を籠めるが、私の体の上から腕が動かないどころか、自分の胸に私の頭を押し付けるようにぎゅっと抱きしめる財田さん。

「俺は昨日帰りが遅かったんだ…。もう少し労われェ…」

「んっ…」と、少し体制を整えながら、目を開けずに私の頭に顔を摺り寄せ、寝起きの掠れた声で囁く。

…くっそ。
そんな声で言われたら、なんか、無碍に出来ないじゃないか…

ほだされてるなぁ…と思いつつ、昨晩は本当に遅かったんだろうなとちょっとだけ心配する。

なんでかっていうと、私は昨日、ハマった海外ドラマの一気見をし始めていて、深夜の三時過ぎまで起きていたからだ。
財田さんとの初めての情事から1か月ほど経っているが、その間、3日と開けずに顔を見せていた財田さん。
私の体力が尽きるまで致しても、私が目を覚ますころにはすでにいなくなっていて…

この人はまぁまぁ早く死にそう。とか思ったものだ。
過労死か睡眠不足で絶対に早死にする。と断言できるほどには。

私が起きていた時間、この人はまだ来ていなかった。
ということは私が寝た後にこの部屋に来て、寝ている私の隣に来て抱き枕にして寝たということになる。
現在は朝8時。
よほどのショートスリーパーでもない限り睡眠不足過ぎるだろう。

私の視界は財田さんの胸に押し付けられていて真っ暗なわけだが、私の頭の上で寝息が聞こえてきたし、身動き取れないし。
お布団はぬくぬくだし。

このぬくもりを手放すのはまだもうちょっと後でもいいかもしれない。

今回は起きるのを諦めることにしよう。
たまには二度寝も悪くない。

すり…と財田さんの胸に顔をうずめ、二度寝体勢をとり、瞼を閉じた。
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