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第八十話【堕ちた天使センターフォールド】
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「まったくぅ、私は佐々木さんだけ来るんだと思ってたのに、みんなでゾロゾロと…だいたい来るなら来るって一言連絡入れてくれりゃーこっちだっていろいろ準備できたのに!」
ソファーにドカンと座ってバッグからコンパクトをとりだし、ファンデーションをパタパタと叩きながらぶつくさと文句を言う。
ベージュのパンツスタイルのドレスを着こなし、チラチラと自分の後ろにいる佐々木に目を向けながらリップを唇に塗ってンパっと音をならし、本人は満足げだ。
どう見てもゴリラが厚化粧をしてるようにしか見えないんだが…
手元にあったコンパクトから何かを取り出し、向かいに座っている俺に見えるようにローテブルにソレを捨てる。
足を組み替え、「コレ。」と一言吐き捨てるようにつぶやき、ソファーに持たれるマリア。
「完全に新種ね。」
目の端で捨てたソレを見つめながらタバコに火をつける。
テーブルには小さめのビニールに入った白い錠剤が数個入っていた。
「LSDでもMDMAでもない。世間一般に出回っているセックスドラッグでもなければ覚せい剤でもない。成分なんかは専門じゃないからわからないけど。ただ、ここ数ヶ月めちゃくちゃ出回り始めてるわね。もちろん…」
と続けて紫煙を口から吐き出しながら続ける。
「うたい文句は【痩せる】【体力増強】【セックスが気持ちよくなる】ってヤツ。ドラッグ定番のうたい文句ね。コレ持ってた子はモモちゃんっていうんだけど。飲むだけで痩せるってのと気分が乗らないときの撮影で濡れやすくなるならっていう理由でお試しにもらったらしいのだけどまだ飲んだことはなかったみたい。危ないものだったら怖いからって。モモちゃんにはお説教しておいたから心配ないわよ」
「モモって1カ月前に入った新人じゃねェか?あの、ギャンブル狂の両親から売られた。」
「世も末よ。どうやったらあんなにいい子がクソ親から生まれるのか理解できないわ!可哀相に、ここのヤンキーみたいな女の子にもいびられて…真面目に生きてきた子なのに。どうせドラッグも押し付けられたのよ!」
「まぁ庇ってやるならお前がやれよ。俺らはそんなの構ってたら仕事にならねぇからな」
「わかってるわよぉ…」
「でも、そのモモって子。本当に飲まなくてよかったと思いますよ。」
ヒカルの部下であるハチの同僚。タマがドアに寄りかかりながら話を遮った。
「…来てたのか」
ヒカルが声のした方に視線だけ向けて反応した。
「ボスたちが来てるって話題もちきりだったから来てみたよー」
タマと呼ばれたこの女の名前は三田真。
黒地にオレンジ味の強い茶色のメッシュの入った髪。
細身の体躯をしており、見た目はまるで三毛猫である。
身軽さとその見た目からなのかタマと呼ばれている。
ヒカル曰く、タマは情報収集が主な仕事だとか…
「あらぁ、タマちゃんいたのぉー?」
「マリアちゃんやほー!佐々木さん来ててよかったね!」
「そうなの!テンション上がっちゃうわよね!」
きゃいきゃいと盛り上がる二人にヒカルがストップをかける。
「盛り上がるのは後にしてくれるか?タマ、どういうことだ?」
あー、ごめんごめん。と片手をあげながらタマがマリアの横にトスンと座る。
「その薬物はセンターフォールド。CFって呼ばれてるみたいだねぇ。マリアちゃんが言ってたけど。よくあるうたい文句で出回ってる。使えば寝なくても食べなくても3日くらいは余裕でいられるみたい。頭も冴えて、体の疲れも感じない。痛みも快感に変わってセックスなんか飛びまくり。下半身もビンビンなのが1日中。まるでスーパーマンだね。ただし、依存性がすごい強い。薬が切れてくると吐き気と倦怠感と割れるような頭痛。恐怖に陥る幻覚に見舞われる。って話。耐えきれなくて薬追加。まぁこのループに入ると普通に死ぬよね。ってことで薬を使用した人間はほぼ1カ月くらいで失踪。もしくは原因不明の心臓麻痺で死んでるっぽい。失踪のほうは探す人がいないって感じか、組織的に処理されてるかって感じ。」
「…。」
「ここの女優や男優はほぼ使用してないね。ただここ一ヶ月で行方不明になってる男優が二人。一人は2週間前に死亡が確認されてる。もう一人は話題にあがったモモちゃんに薬を提供したやつだね。そいつを目下捜索中。」
「マリアはどこが出どころかなんてわかってたらさっさと俺らに言ってるわなァ…」
「てか藤倉がわからないのに私がわかるわけないじゃない。ねぇ、さ・さ・き・さん♡」
ハハハとから笑いをする佐々木の顔はいつもの笑顔だ。
「それこそSBに頼んでみたらいいんじゃないかなぁーって思うんだけどなー?」
タマの一言で俺とヒカルが目を合わせた。
ソファーにドカンと座ってバッグからコンパクトをとりだし、ファンデーションをパタパタと叩きながらぶつくさと文句を言う。
ベージュのパンツスタイルのドレスを着こなし、チラチラと自分の後ろにいる佐々木に目を向けながらリップを唇に塗ってンパっと音をならし、本人は満足げだ。
どう見てもゴリラが厚化粧をしてるようにしか見えないんだが…
手元にあったコンパクトから何かを取り出し、向かいに座っている俺に見えるようにローテブルにソレを捨てる。
足を組み替え、「コレ。」と一言吐き捨てるようにつぶやき、ソファーに持たれるマリア。
「完全に新種ね。」
目の端で捨てたソレを見つめながらタバコに火をつける。
テーブルには小さめのビニールに入った白い錠剤が数個入っていた。
「LSDでもMDMAでもない。世間一般に出回っているセックスドラッグでもなければ覚せい剤でもない。成分なんかは専門じゃないからわからないけど。ただ、ここ数ヶ月めちゃくちゃ出回り始めてるわね。もちろん…」
と続けて紫煙を口から吐き出しながら続ける。
「うたい文句は【痩せる】【体力増強】【セックスが気持ちよくなる】ってヤツ。ドラッグ定番のうたい文句ね。コレ持ってた子はモモちゃんっていうんだけど。飲むだけで痩せるってのと気分が乗らないときの撮影で濡れやすくなるならっていう理由でお試しにもらったらしいのだけどまだ飲んだことはなかったみたい。危ないものだったら怖いからって。モモちゃんにはお説教しておいたから心配ないわよ」
「モモって1カ月前に入った新人じゃねェか?あの、ギャンブル狂の両親から売られた。」
「世も末よ。どうやったらあんなにいい子がクソ親から生まれるのか理解できないわ!可哀相に、ここのヤンキーみたいな女の子にもいびられて…真面目に生きてきた子なのに。どうせドラッグも押し付けられたのよ!」
「まぁ庇ってやるならお前がやれよ。俺らはそんなの構ってたら仕事にならねぇからな」
「わかってるわよぉ…」
「でも、そのモモって子。本当に飲まなくてよかったと思いますよ。」
ヒカルの部下であるハチの同僚。タマがドアに寄りかかりながら話を遮った。
「…来てたのか」
ヒカルが声のした方に視線だけ向けて反応した。
「ボスたちが来てるって話題もちきりだったから来てみたよー」
タマと呼ばれたこの女の名前は三田真。
黒地にオレンジ味の強い茶色のメッシュの入った髪。
細身の体躯をしており、見た目はまるで三毛猫である。
身軽さとその見た目からなのかタマと呼ばれている。
ヒカル曰く、タマは情報収集が主な仕事だとか…
「あらぁ、タマちゃんいたのぉー?」
「マリアちゃんやほー!佐々木さん来ててよかったね!」
「そうなの!テンション上がっちゃうわよね!」
きゃいきゃいと盛り上がる二人にヒカルがストップをかける。
「盛り上がるのは後にしてくれるか?タマ、どういうことだ?」
あー、ごめんごめん。と片手をあげながらタマがマリアの横にトスンと座る。
「その薬物はセンターフォールド。CFって呼ばれてるみたいだねぇ。マリアちゃんが言ってたけど。よくあるうたい文句で出回ってる。使えば寝なくても食べなくても3日くらいは余裕でいられるみたい。頭も冴えて、体の疲れも感じない。痛みも快感に変わってセックスなんか飛びまくり。下半身もビンビンなのが1日中。まるでスーパーマンだね。ただし、依存性がすごい強い。薬が切れてくると吐き気と倦怠感と割れるような頭痛。恐怖に陥る幻覚に見舞われる。って話。耐えきれなくて薬追加。まぁこのループに入ると普通に死ぬよね。ってことで薬を使用した人間はほぼ1カ月くらいで失踪。もしくは原因不明の心臓麻痺で死んでるっぽい。失踪のほうは探す人がいないって感じか、組織的に処理されてるかって感じ。」
「…。」
「ここの女優や男優はほぼ使用してないね。ただここ一ヶ月で行方不明になってる男優が二人。一人は2週間前に死亡が確認されてる。もう一人は話題にあがったモモちゃんに薬を提供したやつだね。そいつを目下捜索中。」
「マリアはどこが出どころかなんてわかってたらさっさと俺らに言ってるわなァ…」
「てか藤倉がわからないのに私がわかるわけないじゃない。ねぇ、さ・さ・き・さん♡」
ハハハとから笑いをする佐々木の顔はいつもの笑顔だ。
「それこそSBに頼んでみたらいいんじゃないかなぁーって思うんだけどなー?」
タマの一言で俺とヒカルが目を合わせた。
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