3獣と檻の中

蓮雅 咲

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第七十二話【自分の腕の中に…】

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財田視点___



(おーおー、気づいてないんだろうけど男としては嬉しい行為だなァ)

背中に手を回されて求められているように感じるのは男だけなのか。
それとも俺だけなのかわからないが、普段話すときのような、『頼まれても自分から頼ることはしない』意思を感じる態度ではなく、パニックに近い状態で、縋られるような行為ってのは男心をくすぐられた。

ショーツの上からでもわかるほど、愛液があふれ出ている。
体が期待しているのがわかる。

キュっと背中に回された腕が締まり、深月と肩が触れ合った。
白い肌は少しだけ汗ばんで、うっすらとピンクに染まっている。

女は興奮を収めるための道具であり、快楽を求めた結果の使い捨てであり、甲高い声や、甘ったるく喘ぐ道具が発する音は不快だと思うときのほうが多かった。
これならオナニーしてたほうがましだと思ったことも少なくはない。
割り切った関係の女を作るのも面倒で、商売女を買うことも少なくはなかったが、どの女も基本的には金と地位に目がくらんでいるような女ばかり。
表舞台で引っ付いてくる女も裏で出会う女も「オレ」を見ることなんてあるのかどうかも怪しい。

深月と出会ってから、気になり、気に入り。
キスをするくらいしか今日までできていないわけだが、どうだろう。
キスの仕方も知らないような女は今まで記憶にない。忘れているだけかもしれないが。
たどたどしい舌使い。
苦しそうに眉を寄せる様。
時折あふれ出る喘ぐ声も、まるで小鳥が鳴いているように感じた。

嫌悪も不快もない。
ただこいつと触れあいたい。感じあいたい。愛し合いたいと思った。

愛し合うとか俺が何言ってんだと自分で思う。
今まで女は道具やおもちゃ程度に思っていたんだ。
なのにこいつの心までも自分に向けたい。そう思った。
理由なんて知らない。
初恋だなんて冗談じゃないと思わなくもない。

それでも。
俺は深月がイイ。


身近にはいない、変わった女。
ヤクザを恐れるどころか、交渉をしてくるような女。
金や権力に媚びを売るわけではなく、しっかりと考えることができる女。
しっかりしているのかと思えば、隙だらけで、守りたくなる女。

初めて、自分のそばに、腕の中に置いておきたいと思えた女だ。

どんなことをしてでも手に入れる。
例え、自分だけのものにならなかったとしても。

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