3獣と檻の中

蓮雅 咲

文字の大きさ
上 下
75 / 106

第七十話【雰囲気作り】※

しおりを挟む

「お前軽いなァ、飯はちゃんと食わせてるんだけどなァ…」
「………。」

壁に追いやられたあと、すっとお尻の下に手を入れられそのまま片腕で支えられ担がれている私です。
軽いとかマジで言ってんのか…
落ちるのが怖いので首に手を回し抱き着いている形になっているわけで。

「まさか怖いのか?」
「小人が巨人に抱き抱えられてるんですよ…怖くないわけないじゃないですか!」
「ヒカルに常に抱きかかえられてるだろうが。」
「そもそもこんな体験佐竹さんと貴方にしかされてないんですっ!」

ぷるぷると小刻みに震えながらいる私に、楽しそうに背中も支えてくれながら移動する。
もうさー、わかり切ってることだけど絶対ベッドいくんだよね。わかるわかる。
ベッドルームのドアを開け、パチンと電気をつけて中に入る財田さんの髪の毛からいい匂いがする。

「こらこら、抱きしめてくれるのはいいが、頭を抱えるのはどうよ、前見えなくて落とすぞおい」
「ひぇ」

気が付いたら頭を抱えていたらしい私は肩に手を回すことにした。
安定感はある程度あるものの、万が一ということがある。

すっと優しくベッドにおろしてくれた財田さんは、そのまま私を押し倒した。

唇が耳の下あたりにチュっと音を立てて触れる。
少し硬い黒い髪が私の頬に触れて少しくすぐったい。

そのまま何度かチュッチュと唇が下に向かい、鎖骨あたりに来た時に気づいた。
服がほぼ脱がされている。
なんだこれ、ワンピースの生地が胸の上にまとめてあるんだけど…!

「はい、バンザーイ」

反射的に手を上にあげるしぐさをした瞬間、纏っていた服がスポンと脱がされ、下着姿になってしまった。

「……手慣れてますね…」
皮肉たっぷりに言ってやる。

「そりゃァ、回数はお前よりやってるだろうよ?」

その間も、「よっ」とか「はい。」とか言いつつ態勢をかえつつブラジャーも剥がされた。

胸を隠すように腕を交差させるとクスクスっとまた笑われた。

「今から全部見られるってのに、隠す意味あんのかねェ」
「関係ないですっ!恥ずかしいものは恥ずかしい!」

セックスという行為において、嫌悪しかなかった私だが、獣たちと過ごしていたわずかな時間、そして佐竹さんとの行為のせいなのか、恐怖というのは薄れていた。
今目の前にいる、財田さんの雰囲気も恐怖を感じるようなものではなく、どちらかというと温和な感じだ。

「安心しな、痛いことはしない。俺様はセックスうまいからな。天国見せてやるよ」
「誰にでも言ってそう。」

ギロリと睨めつけながら、のしかかる男に軽口を言ってみる。

今まで財田さんとの会話は大して多くはない。
雑談程度と、初期の交渉くらいなものだ。
最初の交渉の時は殺されるんじゃないかというほど高圧的で、支配者のソレだった雰囲気や空気は一切感じない今だから言える軽口でもある。

「おうおう、言うようになったじゃねェか!」

ニヤっと口の端を上げながら楽しそうに笑う黒獅子が、私の目を見つめながら、ツツツーと脇の下あたりから腰骨のあたりまで指でなぞる。

「っ!」

ビクンと反応してしまう自分が恥ずかしい。
これから行われる行為。
身に着けているのはショーツのみ。
胸を隠すために両手はふさがっている。
顔をいくら背けても、痛いほど視線が突き刺さる。
その熱い視線と、これから何をされるのかという気持ちで、心臓が痛い。

セックスが始まる雰囲気が、出来上がってしまった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした

瀬名。
恋愛
大学1年生の冬。母子家庭の私は、母に逃げられました。 家も取り押さえられ、帰る場所もない。 まず、借金返済をしてないから、私も逃げないとやばい。 …そんな時、借金取りにきた私を買ってくれたのは。 ヤクザの若頭でした。 *この話はフィクションです 現実ではあり得ませんが、物語の過程としてむちゃくちゃしてます ツッコミたくてイラつく人はお帰りください またこの話を鵜呑みにする読者がいたとしても私は一切の責任を負いませんのでご了承ください*

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

処理中です...