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第六十五話【吉沢深月の情報】
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時は遡って…
龍桜会 事務所___
吉沢深月がデパートから逃げ、三日。
事務所で荒れていた佐竹のもとに連絡が入り、資料が届けられた。
佐竹の部下から届けられた深月の改変前の過去。
それはあまりに壮絶な内容だった。
出生とともに生んだ母親は死亡し、父方の祖母の元で4歳まで生活。
その後、父に引き取られ、継母と義兄とともに生活。
その後1年で離婚した父の元で生活。
ここまでは3人とも既に知っている情報だ。
だが、そこからネグレクトと虐待。
たびたび学校で栄養失調で倒れ、その度に虐待されていると判断され児童相談所に連絡が行っている。
最終的には性的にも虐待があったことが発覚。
《近所の人》が警察に通報し、深月を救助。
そのまま、一時的にその家族に保護される。
父親はたまたま深月が救助された時現場におらず、そのまま逃走。
行方不明のまま時間がたち、死亡手続きが行われた。
当時の深月の写真が何枚か添付されている紙を眺め、三人とも顔が歪む。
少女時代の深月のこんな姿を見たいなんて誰が思うだろうか。
写真を見た人誰もが、目を背けたくなる程に彼女の体には痣や傷が無数にあった。
病院で診察した際に撮られた証拠の写真だということは明白で、まだ幼い深月がどれだけ心と体に傷を背負っているのか、恐怖の10年間だっただろう過去を思うと、全員言葉にならなかった。
「ムナクソな話っスよ…学校でも大人たちから腫物のように扱われ、同級生たちからも避けられていたっぽいッス。誰も彼女の話を聞く人も助けようとする人もいなかったなんて…」
沈黙を破るように、佐竹の部下である男が壁に背を当てたまま下を向き、床を蹴る。
「吉沢深月の過去の方はその資料で全部ッス。で、こっち。こっちが本命ッス。」
先に渡された資料を三人とも読み終わり全員顔をしかめていたところで、男は本命とやらの資料を渡してきた。
「本命?」
「組長…そうッス。コレは吉沢深月の父親、吉沢順平についてっス。」
「ハチ、結論から言え。生きてるのか?」
「ボス、待って!順を追って話すから待って、怖いッス!!!」
ドン!と男の背中が壁に打ち付けられる音がする。
佐竹はハチと呼んだ部下に詰め寄り、襟をつかんで迫っていた。
「ヒカル、落ち着け。おいハチ、説明しろ。」
財田が佐竹の肩をグっと掴み、ハチをギロリと睨む。
ガルルルと歯をむき出しにし、殴りかかる勢いでハチを掴んだ手を離し、ゆっくりとハチから離れる。
けほっと一つ咳をして、襟を正しながらハチが資料を指さす。
「資料を見てほしいんスけど…まぁ説明しまスよ。」
喉をさすりながら、デスクに上に置かれた資料をひょいと取り上げ話し始める。
「えーと、吉沢順平。結論から言うと《吉沢順平》は死んでますが、生きてるッス。」
『それについてはコッチで説明してあげるよぉー』
龍桜会 事務所___
吉沢深月がデパートから逃げ、三日。
事務所で荒れていた佐竹のもとに連絡が入り、資料が届けられた。
佐竹の部下から届けられた深月の改変前の過去。
それはあまりに壮絶な内容だった。
出生とともに生んだ母親は死亡し、父方の祖母の元で4歳まで生活。
その後、父に引き取られ、継母と義兄とともに生活。
その後1年で離婚した父の元で生活。
ここまでは3人とも既に知っている情報だ。
だが、そこからネグレクトと虐待。
たびたび学校で栄養失調で倒れ、その度に虐待されていると判断され児童相談所に連絡が行っている。
最終的には性的にも虐待があったことが発覚。
《近所の人》が警察に通報し、深月を救助。
そのまま、一時的にその家族に保護される。
父親はたまたま深月が救助された時現場におらず、そのまま逃走。
行方不明のまま時間がたち、死亡手続きが行われた。
当時の深月の写真が何枚か添付されている紙を眺め、三人とも顔が歪む。
少女時代の深月のこんな姿を見たいなんて誰が思うだろうか。
写真を見た人誰もが、目を背けたくなる程に彼女の体には痣や傷が無数にあった。
病院で診察した際に撮られた証拠の写真だということは明白で、まだ幼い深月がどれだけ心と体に傷を背負っているのか、恐怖の10年間だっただろう過去を思うと、全員言葉にならなかった。
「ムナクソな話っスよ…学校でも大人たちから腫物のように扱われ、同級生たちからも避けられていたっぽいッス。誰も彼女の話を聞く人も助けようとする人もいなかったなんて…」
沈黙を破るように、佐竹の部下である男が壁に背を当てたまま下を向き、床を蹴る。
「吉沢深月の過去の方はその資料で全部ッス。で、こっち。こっちが本命ッス。」
先に渡された資料を三人とも読み終わり全員顔をしかめていたところで、男は本命とやらの資料を渡してきた。
「本命?」
「組長…そうッス。コレは吉沢深月の父親、吉沢順平についてっス。」
「ハチ、結論から言え。生きてるのか?」
「ボス、待って!順を追って話すから待って、怖いッス!!!」
ドン!と男の背中が壁に打ち付けられる音がする。
佐竹はハチと呼んだ部下に詰め寄り、襟をつかんで迫っていた。
「ヒカル、落ち着け。おいハチ、説明しろ。」
財田が佐竹の肩をグっと掴み、ハチをギロリと睨む。
ガルルルと歯をむき出しにし、殴りかかる勢いでハチを掴んだ手を離し、ゆっくりとハチから離れる。
けほっと一つ咳をして、襟を正しながらハチが資料を指さす。
「資料を見てほしいんスけど…まぁ説明しまスよ。」
喉をさすりながら、デスクに上に置かれた資料をひょいと取り上げ話し始める。
「えーと、吉沢順平。結論から言うと《吉沢順平》は死んでますが、生きてるッス。」
『それについてはコッチで説明してあげるよぉー』
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