70 / 106
❸
第六十五話【吉沢深月の情報】
しおりを挟む
時は遡って…
龍桜会 事務所___
吉沢深月がデパートから逃げ、三日。
事務所で荒れていた佐竹のもとに連絡が入り、資料が届けられた。
佐竹の部下から届けられた深月の改変前の過去。
それはあまりに壮絶な内容だった。
出生とともに生んだ母親は死亡し、父方の祖母の元で4歳まで生活。
その後、父に引き取られ、継母と義兄とともに生活。
その後1年で離婚した父の元で生活。
ここまでは3人とも既に知っている情報だ。
だが、そこからネグレクトと虐待。
たびたび学校で栄養失調で倒れ、その度に虐待されていると判断され児童相談所に連絡が行っている。
最終的には性的にも虐待があったことが発覚。
《近所の人》が警察に通報し、深月を救助。
そのまま、一時的にその家族に保護される。
父親はたまたま深月が救助された時現場におらず、そのまま逃走。
行方不明のまま時間がたち、死亡手続きが行われた。
当時の深月の写真が何枚か添付されている紙を眺め、三人とも顔が歪む。
少女時代の深月のこんな姿を見たいなんて誰が思うだろうか。
写真を見た人誰もが、目を背けたくなる程に彼女の体には痣や傷が無数にあった。
病院で診察した際に撮られた証拠の写真だということは明白で、まだ幼い深月がどれだけ心と体に傷を背負っているのか、恐怖の10年間だっただろう過去を思うと、全員言葉にならなかった。
「ムナクソな話っスよ…学校でも大人たちから腫物のように扱われ、同級生たちからも避けられていたっぽいッス。誰も彼女の話を聞く人も助けようとする人もいなかったなんて…」
沈黙を破るように、佐竹の部下である男が壁に背を当てたまま下を向き、床を蹴る。
「吉沢深月の過去の方はその資料で全部ッス。で、こっち。こっちが本命ッス。」
先に渡された資料を三人とも読み終わり全員顔をしかめていたところで、男は本命とやらの資料を渡してきた。
「本命?」
「組長…そうッス。コレは吉沢深月の父親、吉沢順平についてっス。」
「ハチ、結論から言え。生きてるのか?」
「ボス、待って!順を追って話すから待って、怖いッス!!!」
ドン!と男の背中が壁に打ち付けられる音がする。
佐竹はハチと呼んだ部下に詰め寄り、襟をつかんで迫っていた。
「ヒカル、落ち着け。おいハチ、説明しろ。」
財田が佐竹の肩をグっと掴み、ハチをギロリと睨む。
ガルルルと歯をむき出しにし、殴りかかる勢いでハチを掴んだ手を離し、ゆっくりとハチから離れる。
けほっと一つ咳をして、襟を正しながらハチが資料を指さす。
「資料を見てほしいんスけど…まぁ説明しまスよ。」
喉をさすりながら、デスクに上に置かれた資料をひょいと取り上げ話し始める。
「えーと、吉沢順平。結論から言うと《吉沢順平》は死んでますが、生きてるッス。」
『それについてはコッチで説明してあげるよぉー』
龍桜会 事務所___
吉沢深月がデパートから逃げ、三日。
事務所で荒れていた佐竹のもとに連絡が入り、資料が届けられた。
佐竹の部下から届けられた深月の改変前の過去。
それはあまりに壮絶な内容だった。
出生とともに生んだ母親は死亡し、父方の祖母の元で4歳まで生活。
その後、父に引き取られ、継母と義兄とともに生活。
その後1年で離婚した父の元で生活。
ここまでは3人とも既に知っている情報だ。
だが、そこからネグレクトと虐待。
たびたび学校で栄養失調で倒れ、その度に虐待されていると判断され児童相談所に連絡が行っている。
最終的には性的にも虐待があったことが発覚。
《近所の人》が警察に通報し、深月を救助。
そのまま、一時的にその家族に保護される。
父親はたまたま深月が救助された時現場におらず、そのまま逃走。
行方不明のまま時間がたち、死亡手続きが行われた。
当時の深月の写真が何枚か添付されている紙を眺め、三人とも顔が歪む。
少女時代の深月のこんな姿を見たいなんて誰が思うだろうか。
写真を見た人誰もが、目を背けたくなる程に彼女の体には痣や傷が無数にあった。
病院で診察した際に撮られた証拠の写真だということは明白で、まだ幼い深月がどれだけ心と体に傷を背負っているのか、恐怖の10年間だっただろう過去を思うと、全員言葉にならなかった。
「ムナクソな話っスよ…学校でも大人たちから腫物のように扱われ、同級生たちからも避けられていたっぽいッス。誰も彼女の話を聞く人も助けようとする人もいなかったなんて…」
沈黙を破るように、佐竹の部下である男が壁に背を当てたまま下を向き、床を蹴る。
「吉沢深月の過去の方はその資料で全部ッス。で、こっち。こっちが本命ッス。」
先に渡された資料を三人とも読み終わり全員顔をしかめていたところで、男は本命とやらの資料を渡してきた。
「本命?」
「組長…そうッス。コレは吉沢深月の父親、吉沢順平についてっス。」
「ハチ、結論から言え。生きてるのか?」
「ボス、待って!順を追って話すから待って、怖いッス!!!」
ドン!と男の背中が壁に打ち付けられる音がする。
佐竹はハチと呼んだ部下に詰め寄り、襟をつかんで迫っていた。
「ヒカル、落ち着け。おいハチ、説明しろ。」
財田が佐竹の肩をグっと掴み、ハチをギロリと睨む。
ガルルルと歯をむき出しにし、殴りかかる勢いでハチを掴んだ手を離し、ゆっくりとハチから離れる。
けほっと一つ咳をして、襟を正しながらハチが資料を指さす。
「資料を見てほしいんスけど…まぁ説明しまスよ。」
喉をさすりながら、デスクに上に置かれた資料をひょいと取り上げ話し始める。
「えーと、吉沢順平。結論から言うと《吉沢順平》は死んでますが、生きてるッス。」
『それについてはコッチで説明してあげるよぉー』
0
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。


マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041


ヤクザと私と。~養子じゃなく嫁でした
瀬名。
恋愛
大学1年生の冬。母子家庭の私は、母に逃げられました。
家も取り押さえられ、帰る場所もない。
まず、借金返済をしてないから、私も逃げないとやばい。
…そんな時、借金取りにきた私を買ってくれたのは。
ヤクザの若頭でした。
*この話はフィクションです
現実ではあり得ませんが、物語の過程としてむちゃくちゃしてます
ツッコミたくてイラつく人はお帰りください
またこの話を鵜呑みにする読者がいたとしても私は一切の責任を負いませんのでご了承ください*

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる