63 / 106
❸
第五十八話【戻ってきたマンション】
しおりを挟む
「お久しぶりです、深月さん。」
お元気そうで何よりです。
なんてソファーから立ち上がりながら三嶋さんが私に言う。
元気は元気だけど元気じゃないです。
二度と来たくないし来ないと思っていたあのマンションに逆戻りしたわけですし。
なんなら今のこの状態も状況もかなり良くないので、元気でいられるわけがないといいますか。
「あの、佐竹さん?マンションについたんだし、コレ外してもらえませんかね?」
コレ。
コレとは。
あの素敵なホテルの一室の中で、ぎゅうっとされた後。
『深月…』と囁かれて両手を取られ、不覚にもドキっとしたのに。
カチャ、カチャ。と音がしたと思ったら指錠をはめられていた。
みなさん、指錠というのをご存じだろうか。
私は初めて見た。
楕円形のプレート状になった手錠のことである。
ただし、手首に嵌めるものではなく、親指を嵌める。
手錠よりもコンパクトでかつ、稼働域が減って何もできないのである。
その後あれよあれよという間にここまで連れ戻されてしまったのである。
今回はお姫様抱っこではなかっただけまだましだけど。
「んー、もう少し我慢しような?」
なんでだ!?
前で固定されている私の親指たちを佐竹さんに掲げ、コレと差し出していたわけだが、その手をとり、ソファに促される。
佐竹さんがソファーに座り、私はその膝に横向きで座らされる。
相変わらずの定位置である。
もう諦めた。
何を言ってもこの人には通用しないし、結局やらされるし。
クスクスと向かいで笑い声が聞こえ、三嶋さんの肩が揺れているのが見えた。
「ヒカルが満足そうにしている姿を見るのは久しぶりですね。深月さんを膝にのせているのもなんだか懐かしい。」
まぁ、3カ月ぶりですしね。そら懐かしいでしょうよ。
てか、私を探すの諦めてたんじゃないんかい。
「もう私を探すの諦めていたんだと思いました。」
「なわけ。」
間髪入れずに上から答えられて、それはそれで驚いた。
だって年明けから探している感じは見えなかったって…
「さて、深月さんが無事なのが確認できたということで。僕はちょっと行くところがあるので。深月さん、後程。」
あとは任せましたよ。
と佐竹さんに言うと三嶋さんはリビングを出て行った。
「…うぉっ!?」
三嶋さんが出ていくのを目で追って呆けていると、急に体が浮いた。
今日はお姫様抱っこないとおもったのに!!!
「腕、頭に回して。」
完結にものをいう佐竹さん。
いや、あの。
回すよ回すけどね?
親指固定されてると結構いろいろやりずらいよ!?
すると、リビングとつながっていたあの開かずの扉の前に立った。
前に来たときは「ここはお前には関係ない」みたいなことを言われていた場所である。
よく見えないが佐竹さんが何かをしたら、鉄で出来ているようなドアが横にヴンとスライドした。
「ここはもともとシェルターだ。何かあったときのために、外部からの攻撃の一切を遮断できる。天災だろうが、爆撃だろうが。」
天災はいいとして、爆撃って何。戦争でもするの?
あ、戦争は戦争でも抗争の方か?職業柄。それなら納得。
「何日でも、籠れる。」
……。
何日でも?
私いま佐竹さんにここに連れてこられて……
あれ?どういうことだ?
ストンと私を下した場所。
それはこのシェルターと呼ばれた部屋に置かれた、キングサイズのベッド。
んんんんん?!
「深月…」
「んふっ!」
いやいやいやいや
急だな!ベッドに置かれた時点であれだとは思ったけれども!!
いきなりキスをされて、目を見開く。
ゆっくりと唇が離れ、熱い瞳で見つめられる。
なんだろう、この人。
ホテルでも思ったけど、なんだか不思議と怖くない……
お元気そうで何よりです。
なんてソファーから立ち上がりながら三嶋さんが私に言う。
元気は元気だけど元気じゃないです。
二度と来たくないし来ないと思っていたあのマンションに逆戻りしたわけですし。
なんなら今のこの状態も状況もかなり良くないので、元気でいられるわけがないといいますか。
「あの、佐竹さん?マンションについたんだし、コレ外してもらえませんかね?」
コレ。
コレとは。
あの素敵なホテルの一室の中で、ぎゅうっとされた後。
『深月…』と囁かれて両手を取られ、不覚にもドキっとしたのに。
カチャ、カチャ。と音がしたと思ったら指錠をはめられていた。
みなさん、指錠というのをご存じだろうか。
私は初めて見た。
楕円形のプレート状になった手錠のことである。
ただし、手首に嵌めるものではなく、親指を嵌める。
手錠よりもコンパクトでかつ、稼働域が減って何もできないのである。
その後あれよあれよという間にここまで連れ戻されてしまったのである。
今回はお姫様抱っこではなかっただけまだましだけど。
「んー、もう少し我慢しような?」
なんでだ!?
前で固定されている私の親指たちを佐竹さんに掲げ、コレと差し出していたわけだが、その手をとり、ソファに促される。
佐竹さんがソファーに座り、私はその膝に横向きで座らされる。
相変わらずの定位置である。
もう諦めた。
何を言ってもこの人には通用しないし、結局やらされるし。
クスクスと向かいで笑い声が聞こえ、三嶋さんの肩が揺れているのが見えた。
「ヒカルが満足そうにしている姿を見るのは久しぶりですね。深月さんを膝にのせているのもなんだか懐かしい。」
まぁ、3カ月ぶりですしね。そら懐かしいでしょうよ。
てか、私を探すの諦めてたんじゃないんかい。
「もう私を探すの諦めていたんだと思いました。」
「なわけ。」
間髪入れずに上から答えられて、それはそれで驚いた。
だって年明けから探している感じは見えなかったって…
「さて、深月さんが無事なのが確認できたということで。僕はちょっと行くところがあるので。深月さん、後程。」
あとは任せましたよ。
と佐竹さんに言うと三嶋さんはリビングを出て行った。
「…うぉっ!?」
三嶋さんが出ていくのを目で追って呆けていると、急に体が浮いた。
今日はお姫様抱っこないとおもったのに!!!
「腕、頭に回して。」
完結にものをいう佐竹さん。
いや、あの。
回すよ回すけどね?
親指固定されてると結構いろいろやりずらいよ!?
すると、リビングとつながっていたあの開かずの扉の前に立った。
前に来たときは「ここはお前には関係ない」みたいなことを言われていた場所である。
よく見えないが佐竹さんが何かをしたら、鉄で出来ているようなドアが横にヴンとスライドした。
「ここはもともとシェルターだ。何かあったときのために、外部からの攻撃の一切を遮断できる。天災だろうが、爆撃だろうが。」
天災はいいとして、爆撃って何。戦争でもするの?
あ、戦争は戦争でも抗争の方か?職業柄。それなら納得。
「何日でも、籠れる。」
……。
何日でも?
私いま佐竹さんにここに連れてこられて……
あれ?どういうことだ?
ストンと私を下した場所。
それはこのシェルターと呼ばれた部屋に置かれた、キングサイズのベッド。
んんんんん?!
「深月…」
「んふっ!」
いやいやいやいや
急だな!ベッドに置かれた時点であれだとは思ったけれども!!
いきなりキスをされて、目を見開く。
ゆっくりと唇が離れ、熱い瞳で見つめられる。
なんだろう、この人。
ホテルでも思ったけど、なんだか不思議と怖くない……
0
お気に入りに追加
546
あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。


お兄ちゃんはお医者さん!?
すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。
如月 陽菜(きさらぎ ひな)
病院が苦手。
如月 陽菜の主治医。25歳。
高橋 翔平(たかはし しょうへい)
内科医の医師。
※このお話に出てくるものは
現実とは何の関係もございません。
※治療法、病名など
ほぼ知識なしで書かせて頂きました。
お楽しみください♪♪

ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。


地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~
あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる