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第五十話【失態】
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【財田視点】___
「深月がいないってどういう事だ?ア?」
佐々木からの緊急連絡を受けたのは、ヒカルが支払いを終えたすぐあとだった。
VIPルームに全員がそろい、深月の担当と他従業員も含め、この部屋には今15人ほどが集まっている。
深月がいなくなった現場はもぬけの殻で、深月の担当をしていた藤宮他2名がトイレをくまなく捜したが見当たらず、佐々木が俺に連絡をしてきた。
腰よりも下に下げた頭部から謝罪の言葉が佐々木と山村から出る。
佐々木はさすがというか、引き締めた顔はしているが落ち着いている。
山村は顔面蒼白だ。
トイレに行きたいと山村と共にトイレのある通路まで行き、女子トイレに向かうところを山村は見ている。
通路にはずっと山村がついていて、佐々木に連絡し、その場を佐々木と交代。
その間も深月はトイレから出てくる姿を確認していない。
山村が藤宮にコンタクトを取り、佐々木のいるトイレの通路まで戻るが、その後10分トイレから深月は出てきていない。
佐々木が見逃すようなミスはしない。
山村と佐々木が交代するまでに5分もたっていない。
構造上、トイレから出てきて山村佐々木のいる通路を通らないでフロアに出ることはできない。
「佐々木さん、深月さんを捜しに女子トイレに入りましたか?窓などはありましたか?」
「はい、山村と共に女子トイレに入らせていただきました。佐竹さんが9時から貸し切りにしてくださったおかげで他の客もいませんでしたし、緊急事態でしたので。窓はありませんでした。」
「個室も一つ一つ確認しましたか?」
「はい。1か所扉が閉まっている個室があり、確認しましたが個室の中には誰もいませんでした。」
シュウに佐々木が頭を下げたまま答える。
「まずいですね…どのみち深月さんはもうここにはいませんよ…」
「「大変申し訳ありませんっ」」
シュウのため息交じりの声のあと、佐々木山村が声をそろえる。
「っは!やられたなァ!」
手をパチンと額に当て、笑いながら空を見る。
やられた。
まさかこんなところで逃げられると思っていなかった。
「佐々木、お前男子トイレは確認したか?」
「……。」
すぅっと頭を上げる佐々木の目には迷いがあった。
「申し訳ありません、確認しておりません。」
ドゴッ
左へ体が流れ体勢を崩すも、踏ん張り、吹っ飛ばされることをギリギリ留めた佐々木に、思わずヒュゥと口笛を吹きたくなる。
さらに拳を振りかざしたその腕を取り、「やめとけ、ヒカル」とだけつぶやく。
「なァ、佐々木。山村。お前ら深月をなめてたろ。だからこういう事になる。」
口の端から流れ出る血を、人差し指で拭ってやり、その血を佐々木のスーツにこすりつける。
「処分は後だ。いったん戻るぞ。佐々木、山村お前たちには死ぬ気で探してもらうからな」
「「はっ」」
「深月がいないってどういう事だ?ア?」
佐々木からの緊急連絡を受けたのは、ヒカルが支払いを終えたすぐあとだった。
VIPルームに全員がそろい、深月の担当と他従業員も含め、この部屋には今15人ほどが集まっている。
深月がいなくなった現場はもぬけの殻で、深月の担当をしていた藤宮他2名がトイレをくまなく捜したが見当たらず、佐々木が俺に連絡をしてきた。
腰よりも下に下げた頭部から謝罪の言葉が佐々木と山村から出る。
佐々木はさすがというか、引き締めた顔はしているが落ち着いている。
山村は顔面蒼白だ。
トイレに行きたいと山村と共にトイレのある通路まで行き、女子トイレに向かうところを山村は見ている。
通路にはずっと山村がついていて、佐々木に連絡し、その場を佐々木と交代。
その間も深月はトイレから出てくる姿を確認していない。
山村が藤宮にコンタクトを取り、佐々木のいるトイレの通路まで戻るが、その後10分トイレから深月は出てきていない。
佐々木が見逃すようなミスはしない。
山村と佐々木が交代するまでに5分もたっていない。
構造上、トイレから出てきて山村佐々木のいる通路を通らないでフロアに出ることはできない。
「佐々木さん、深月さんを捜しに女子トイレに入りましたか?窓などはありましたか?」
「はい、山村と共に女子トイレに入らせていただきました。佐竹さんが9時から貸し切りにしてくださったおかげで他の客もいませんでしたし、緊急事態でしたので。窓はありませんでした。」
「個室も一つ一つ確認しましたか?」
「はい。1か所扉が閉まっている個室があり、確認しましたが個室の中には誰もいませんでした。」
シュウに佐々木が頭を下げたまま答える。
「まずいですね…どのみち深月さんはもうここにはいませんよ…」
「「大変申し訳ありませんっ」」
シュウのため息交じりの声のあと、佐々木山村が声をそろえる。
「っは!やられたなァ!」
手をパチンと額に当て、笑いながら空を見る。
やられた。
まさかこんなところで逃げられると思っていなかった。
「佐々木、お前男子トイレは確認したか?」
「……。」
すぅっと頭を上げる佐々木の目には迷いがあった。
「申し訳ありません、確認しておりません。」
ドゴッ
左へ体が流れ体勢を崩すも、踏ん張り、吹っ飛ばされることをギリギリ留めた佐々木に、思わずヒュゥと口笛を吹きたくなる。
さらに拳を振りかざしたその腕を取り、「やめとけ、ヒカル」とだけつぶやく。
「なァ、佐々木。山村。お前ら深月をなめてたろ。だからこういう事になる。」
口の端から流れ出る血を、人差し指で拭ってやり、その血を佐々木のスーツにこすりつける。
「処分は後だ。いったん戻るぞ。佐々木、山村お前たちには死ぬ気で探してもらうからな」
「「はっ」」
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