3獣と檻の中

蓮雅 咲

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第四十八話【改ざん】

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「ふーん。なるほどね。じゃぁ深月はその隣の部屋に住んでいたヤツの情報を三嶋に渡したのが原因だと思ってるってことだね。」
「うん、そう。」

ふむふむと、春生がコーヒーを飲みながらうなずいている。

「わかった。んじゃ今日は逃げたりなんだりで疲れたでしょう。その、きっもち悪い化粧落として寝な。俺はできることやっちゃうわ。」
「はーい」
「あ、部屋にPC搬入してあるけどまだ繋いでない。セッティングは起きてからにして、俺がいいって言うまでネットは禁止。」

ソファーから立ち上がったところでそんなこと言われた。

「えー…」
「全部深月がしでかしたことでしょー。自分で尻ぬぐい出来ない状態になっちゃってるんだから文句はいえないよ?」
「うっ」

痛いところを突かれた。

「あと、貸し1追加ね。」
「ひぃぃぃぃ」

ニコっと綺麗な笑顔で言われた恐怖の言葉。
それ以上聞くのが怖くてリビングを慌てて出ていく私なのだった。

廊下に出たところで立ち止まる。
言い忘れたことがあった。

ガチャ。
再びリビングのドアを開け、顔だけドアから顔を出し、心配を掛けたであろう兄に向ってニカっと笑う。

「心配かけてごめんね、ありがとう。」

__ただいま。




+++++

春生視点___


コロンと口の中に丸い棒付きキャンディを突っ込む。
可愛い可愛い己の仕事道具のPCの前に座り、パチパチとキーボードを叩く。


龍桜会に深月が関わってしまったことに気づいたのは、深月の緊急事態の連絡を受けたからだった。
深月曰く、「突撃お宅訪問(強制)inヤクザの事務所」だそうで。
お宅訪問前に連絡を受けた時点で深月の家はこっちで処分し、その後、連絡が2時間来なかった場合新しい家の手配をすることになっていた。
ただ、家の手配をしたものの、その後そこに行く気配はなく、今度は深月とは縁のなさそうな高級マンションにGPSは留まった。
監視カメラを覗いてみると、龍桜会の幹部に抱かれてマンションに入っていくところで。

(何してんのこいつ!!ずるい!!)
じゃなかった。

マンションの最上階で止まるエレベーター。
しがみ付く深月。

(かぁわいい…俺も今度しよう。)
じゃなくて。

暴力的なことはされていなさそうなのでしばらく様子を見ることにした。
してたら抹殺案件だけど、連れていかれるときに深月からの連絡はなかった。
切迫してたら連絡してくるだろうからそこまでではないのかもしれない…とその時は判断した。

部屋の中に入っていくのを見届け、隣のモニターで龍桜会について調べる。
2時間。
調べた結果がコレかぁ…
事務所拉致の後に受けた連絡の時に、隣の男の話は触りだけ聞いたけど…
これはちょっと面倒なことに巻き込まれたな…というのが、俺の感想だった。


(さて、俺ができる最善の情報改ざんしましょうねぇー)

暗めの部屋に青白い液晶画面の光。
キーボードから発するLEDライトの光。

鼻歌を歌いながら、カタタタタとキーボードの音を鳴らした。

可愛い可愛い。愛してやまない妹のために。
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