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第四十五話【思い出した計画】
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「お嬢様。」
VIPルームを出ると隣の部屋に連れていかれた。
隣の部屋も佐竹さんたちが今いる部屋と同じつくりになっていて、こっちの部屋もVIPルームなんだと認識する。
ちなみに、私の後には山村さんがついてきた。
まぁ当たり前っちゃ当たり前である。
私が一人で行動するわけにはいかない。事情の知らないデパートの従業員(女性)だけなんて財田さんが許しても三嶋さんが許さないだろう。
ソファーなどが置かれている向こう側には
衣装がかけられるバーがあり、そのバーにはすでに何十点もの洋服が掛けられている。
洋服だけではない。
アクセサリー、帽子、靴などトータルコーディネートができるようになっていた。
「あらかじめ副社長から、簡単にではありますが体系についてはお話を伺っておりましたので、お嬢様に似合いそうなものをこちらでピックアップさせていただきました。お気に召すものがありましたら、手に取って当ててみてくださいませ。」
「あ、はい。」
バーに近寄り、ぱらぱらと洋服を見ていく。
キレイ目オフィスにも使える系。
ラフに着れるカジュアルカワイイ系。
気に入らないというわけじゃないけれど、どれも自分に似合うとはあまり思わなかった。
「本日のお召し物はお嬢様が好きなジャンルになられますか?」
ニコっと笑顔で聞かれる。
なんだろう。品定めでもされている気分になるな。
「そうですね。こういうパンクっぽいのとかロックぽいのは結構好きですが、今日買いたいなと思っていたものはルームウェアやラフに着てちょっとした買い物をしに行ける程度の洋服なんです。」
オフィスカジュアル系や、お姉さん系はお呼びではない。
そもそも身長が低いからあまりそういう女性らしいものは着ないのだ。
「なるほど。そうですね。ではこの辺りはどうでしょうか。」
そういって藤宮さんが手にしたのは
パステルカラーのロンTとスキニーのパンツ。そして厚手のニットのカーディガンだった。
「あ、好きです。」
「そうなんですね!お色味はお嬢様ですとこちらもいいですが、こっちもよさそうですね!」
あー、なんかスイッチ入ったぞ。
様子見をしていた感じがあった藤宮さんだが、急にエンジンがかかってきたようだ。
「少々お待ちくださいね!いまスタッフを呼んできます。こちらで用意したものではお嬢様にお似合いになるものもお好みのものもあまりないように感じましたのでフロアに出ましょう。」
エンジンがかかった藤宮さんの行動は早かった。
女性スタッフを2名追加してフロアを駆け回る。
アレがいい、コレじゃないと思案しながら私の前に持ってくる。
私だけではなく、山村さんも目を回している感じがした。
「女性の買い物って大変ですよね…俺なんかこれがいいって速攻で終わっちゃいますよ…」
とコソっと打ち明けてくれた山村さんに、ちょっと可愛いなぁとか思ってしまうあたり、私もだいぶヤクザに毒されているんだろうか。
弟がいたらこんな感じかもしれないなんて考える。
女性向けのフロアを駆け回る藤宮さんたちを後目に、ちょっと疲れてしまった…と通路にあるソファーに腰を下ろし、ため息をつく。
既に何十着も《アリ》を出した状態である。
山村さんも相当お疲れのようなので、そろそろ終わりにしたいな。なんて思ったその時。
(あれ?何真面目に買い物してんだ、私は。)
はたっ
気付いてしまった。
VIP待遇に焦って普通に買い物をしていたが、私の目的は買い物よりも…
「山村さん。すいません。ちょっとトイレ行きたいんですが…」
「あ、了解っす。んじゃ行きましょうか。」
「いや、あそこにあるのトイレですよね。藤宮さんにそろそろ終わりで大丈夫ですって伝えてもらえますか?」
「んー…わかりました。じゃぁちょっと佐々木さんに来てもらうのでそこの入り口まで行きますね。」
「はーい。じゃぁちょっと行ってきますねー」
山村さんはトイレに向かうコーナーのところまで一緒にきてそのまま後ろを向いて電話をし始めた。
準備は整った。
あとは脱出するだけだ。
VIPルームを出ると隣の部屋に連れていかれた。
隣の部屋も佐竹さんたちが今いる部屋と同じつくりになっていて、こっちの部屋もVIPルームなんだと認識する。
ちなみに、私の後には山村さんがついてきた。
まぁ当たり前っちゃ当たり前である。
私が一人で行動するわけにはいかない。事情の知らないデパートの従業員(女性)だけなんて財田さんが許しても三嶋さんが許さないだろう。
ソファーなどが置かれている向こう側には
衣装がかけられるバーがあり、そのバーにはすでに何十点もの洋服が掛けられている。
洋服だけではない。
アクセサリー、帽子、靴などトータルコーディネートができるようになっていた。
「あらかじめ副社長から、簡単にではありますが体系についてはお話を伺っておりましたので、お嬢様に似合いそうなものをこちらでピックアップさせていただきました。お気に召すものがありましたら、手に取って当ててみてくださいませ。」
「あ、はい。」
バーに近寄り、ぱらぱらと洋服を見ていく。
キレイ目オフィスにも使える系。
ラフに着れるカジュアルカワイイ系。
気に入らないというわけじゃないけれど、どれも自分に似合うとはあまり思わなかった。
「本日のお召し物はお嬢様が好きなジャンルになられますか?」
ニコっと笑顔で聞かれる。
なんだろう。品定めでもされている気分になるな。
「そうですね。こういうパンクっぽいのとかロックぽいのは結構好きですが、今日買いたいなと思っていたものはルームウェアやラフに着てちょっとした買い物をしに行ける程度の洋服なんです。」
オフィスカジュアル系や、お姉さん系はお呼びではない。
そもそも身長が低いからあまりそういう女性らしいものは着ないのだ。
「なるほど。そうですね。ではこの辺りはどうでしょうか。」
そういって藤宮さんが手にしたのは
パステルカラーのロンTとスキニーのパンツ。そして厚手のニットのカーディガンだった。
「あ、好きです。」
「そうなんですね!お色味はお嬢様ですとこちらもいいですが、こっちもよさそうですね!」
あー、なんかスイッチ入ったぞ。
様子見をしていた感じがあった藤宮さんだが、急にエンジンがかかってきたようだ。
「少々お待ちくださいね!いまスタッフを呼んできます。こちらで用意したものではお嬢様にお似合いになるものもお好みのものもあまりないように感じましたのでフロアに出ましょう。」
エンジンがかかった藤宮さんの行動は早かった。
女性スタッフを2名追加してフロアを駆け回る。
アレがいい、コレじゃないと思案しながら私の前に持ってくる。
私だけではなく、山村さんも目を回している感じがした。
「女性の買い物って大変ですよね…俺なんかこれがいいって速攻で終わっちゃいますよ…」
とコソっと打ち明けてくれた山村さんに、ちょっと可愛いなぁとか思ってしまうあたり、私もだいぶヤクザに毒されているんだろうか。
弟がいたらこんな感じかもしれないなんて考える。
女性向けのフロアを駆け回る藤宮さんたちを後目に、ちょっと疲れてしまった…と通路にあるソファーに腰を下ろし、ため息をつく。
既に何十着も《アリ》を出した状態である。
山村さんも相当お疲れのようなので、そろそろ終わりにしたいな。なんて思ったその時。
(あれ?何真面目に買い物してんだ、私は。)
はたっ
気付いてしまった。
VIP待遇に焦って普通に買い物をしていたが、私の目的は買い物よりも…
「山村さん。すいません。ちょっとトイレ行きたいんですが…」
「あ、了解っす。んじゃ行きましょうか。」
「いや、あそこにあるのトイレですよね。藤宮さんにそろそろ終わりで大丈夫ですって伝えてもらえますか?」
「んー…わかりました。じゃぁちょっと佐々木さんに来てもらうのでそこの入り口まで行きますね。」
「はーい。じゃぁちょっと行ってきますねー」
山村さんはトイレに向かうコーナーのところまで一緒にきてそのまま後ろを向いて電話をし始めた。
準備は整った。
あとは脱出するだけだ。
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