3獣と檻の中

蓮雅 咲

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第四十三話【あいらぶにっぽん】

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正直こんなに美味しい生魚を食べたのは初めてだった。
口の中でとろけるという表現て本当だったんだな。
と感心してしまった。
回らないお寿司すごい。
日本人でよかった。
I LOVE にっぽん。

お金持ちはこんな美味な食べ物を毎日食べれるのか。
ずるい。

お寿司屋さんで三嶋さんと合流し、6人でわいわいと食べた。
カウンターで食べられなかったのはちょっと悔しいけど、この人たちはヤのつく職業の人たちだから仕方がない。
比較的早い時間とはいえ、ほかの客が入らないわけじゃない。
慣れたように奥に促された私たちだが、財田さんと佐々木さんは店員さんとしばらくしゃべってから座敷に上がってきた。

「魚政は親父の贔屓にしている店でな。大将とシロは昔馴染みなんだ。」
「ああ、なるほど。」

時価の寿司を頬張り、舌鼓を打つ。
美味しいものに罪はない。
そもそもヤクザという存在は意外なところでつながっているものだ。
飲食店、風俗、水商売、芸能。
全てが何かしらどこかで関わっていたりする。
表面化していないだけだ。
どこで繋がっていようが、《見えなければ》関係ない。


と、満腹になった自分の胃に腹立たしく思い、後ろ髪を引かれながら魚政を後にし、再びリムジンに乗り込む。
もっと食べたかった。なんならいくらでも食べれると思ってサーモンとマグロばかり食べた自分を呪いたい。

財田さん、私、佐竹さん、そしてドアの横に座った三嶋さん。
車から脱出しようとは思ってなかったけど、三嶋さんのよくわからない圧がすごい。

「深月さん、そのバッグはどうしたんですか?」
「あ、これはメイクポーチやハンカチなんかを入れさせてもらうためにお願いしました。」
「メイクポーチ…?」
「ちゃんと佐々木さんたちに中身確認してもらいましたよ。」

三嶋さんは私をみたとき、ちょっと顔を顰めていたけど、誰だとかは言わなかった。
普通に私の今日のメイクとか服装とかが好きじゃなかっただけかもしれない。

「シロ、あとでお話があります。」

ギロリと眼鏡が光った気がする。
三嶋さんは本当に要注意だなぁ。
ちょっとしたことでも気付かれそうだ。

『若、予定時間より1時間ほど早いですが、このまま向かいますか?』
佐々木さんの機械ごしの声。

「ヒカル、平気そうか?」
「大丈夫だ。車に乗る前に連絡してある。」
「だそうだ。」
『了解』

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