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第三十七話【イケオジの情報収集】
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「そういえば、吉沢さんのご両親て亡くなられているんですよね?」
「…まぁ、一応。」
なんで私の親が死んでること知ってるんだ…
あー…まぁいろいろ調べられてるんだった。
スリーサイズまで知ってるくらいだから家庭環境くらい調べてるよね。
「正確には父親は行方不明ですけど。」
ゆるゆるとタルトを口に運ぶ。
声はできるだけ緊張感を出さないように気を付ける。
タルトを口に入れながら話してはいるけど
口に入れたモノの味がしなくなった。
私が佐々木さんの話題に普通に答えたことで私からある程度情報を引き出せると思ったのか、
随分ぶっこんだ質問をされた。
糖分を口に入れられるのはありがたい。
この手の情報戦は脳内フル稼働しても私にかわせるかわからない。
コミュ障の人生経験の少ない私VS人生経験豊富な普段から情報収集しているであろうヤクザのおっさんなんて勝てる気がしない。
「まだ子供の頃にお父様が行方不明なんてご苦労されたんじゃないですか?」
「……まぁ、それなりですよ。」
回りくどい言い回しは面倒だしこの話題さっさと終わらせたい。
「で、何が聞きたいんですか?回りくどいの好きじゃないんですよ。」
タルトを半分ほど胃に収め、テーブルに置く。
口がパサパサする。
緊張からなのか、タルトのせいなのか、どっちもか…。
マグカップを手にして口に運ぶ。
(やっぱり味がしない)
「正しい情報を出すとは限りませんけど。」
付け加える。
カチャリ、と、マグカップから手を放し、私に向き直る佐々木さんの表情は、さっきと変わらず紳士的な柔らかな笑顔だ。
笑顔の仮面でもかぶっているんだろうか。怒っててもこの表情を崩すことはなさそう。
……この笑顔で人ぶん殴ったりするんだろうか…こわ…
「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ、私は会話をしたいのであって質疑応答をしたいわけじゃないので。というか、情報を得るのに雑談なんかしませんよ?」
「……どうだか」
本当本当!とケラケラ笑うイケオジ。
なんだろう…得も言われぬ怖さがこの人からにじみ出てるんだけど、もうほんとやだ。
ヤクザって本当ヤダ。
「そもそも龍桜会は荒事は専門じゃないんですよぉー、だから私の出番なんてほとんどないですし…佐竹くんが大体やってくれるからねぇ」
いや、もうどいつもこいつも恐怖。
「さて、じゃぁちょっとだけ質問させてもらいますよ」
そういって膝に肘を当てて両手を口元で組む。
既視感を感じる佇まいだが、残念なことに初老の男性は脇に控えていない。
「未成年の君が、施設に入らず一人暮らししていたのはなぜ?もともと住んでいた家で暮らしていたわけじゃないよね」
「一人で生活できたからですよ。金銭面も問題はなかったので。」
「家を借りるのはどうしたんだい?」
「弁護士さんですよ。どこのどなたか覚えていませんけど。成人するまでは弁護士さんがいたので。」
「そんなに昔のことじゃないのに覚えていないの?」
「そうですねぇ。あまり頻繁に連絡とっていたわけじゃないので、担当が変わったりもしましたし。」
「でもその情報、出てこなかったんだよねぇ」
「そうなんですかー、未成年だったからですかね?」
ちょっと考え込むように黙るイケオジ。
タルトの上に乗っているモモをフォークでつつく私。
「そういえば、君のお父さんは君が幼いころに再婚して離婚しているけど、その奥さんは今何をしてるのかな?」
「知りません。」
「君が1人になったときも?」
「知らないですね。連絡先も知らなかったので当時連絡することもできませんでしたし。」
「調べようとしなかったの?ハッカーなんだよね?」
「そもそも10年も前に離婚した相手の子供から連絡来ても困るだけでしょう?血のつながりがあるわけでもない、他人ですよ。私も向こうに迷惑かけたくないですし、自分で生活できる状態だったので必要に思いませんでした。」
「なるほど。」
「ただいまもどりましたぁぁ!」
ガチャッドタタタ
リビングの外からの声に安堵した。
ないす山村!!!
「山村さんも戻ってきたことですし。そろそろこのお話やめましょうか」
私はそう区切りをつけると、ガサガサと荷物を運んでいる山村さんのもとへ急ぐ。
「…まぁ、一応。」
なんで私の親が死んでること知ってるんだ…
あー…まぁいろいろ調べられてるんだった。
スリーサイズまで知ってるくらいだから家庭環境くらい調べてるよね。
「正確には父親は行方不明ですけど。」
ゆるゆるとタルトを口に運ぶ。
声はできるだけ緊張感を出さないように気を付ける。
タルトを口に入れながら話してはいるけど
口に入れたモノの味がしなくなった。
私が佐々木さんの話題に普通に答えたことで私からある程度情報を引き出せると思ったのか、
随分ぶっこんだ質問をされた。
糖分を口に入れられるのはありがたい。
この手の情報戦は脳内フル稼働しても私にかわせるかわからない。
コミュ障の人生経験の少ない私VS人生経験豊富な普段から情報収集しているであろうヤクザのおっさんなんて勝てる気がしない。
「まだ子供の頃にお父様が行方不明なんてご苦労されたんじゃないですか?」
「……まぁ、それなりですよ。」
回りくどい言い回しは面倒だしこの話題さっさと終わらせたい。
「で、何が聞きたいんですか?回りくどいの好きじゃないんですよ。」
タルトを半分ほど胃に収め、テーブルに置く。
口がパサパサする。
緊張からなのか、タルトのせいなのか、どっちもか…。
マグカップを手にして口に運ぶ。
(やっぱり味がしない)
「正しい情報を出すとは限りませんけど。」
付け加える。
カチャリ、と、マグカップから手を放し、私に向き直る佐々木さんの表情は、さっきと変わらず紳士的な柔らかな笑顔だ。
笑顔の仮面でもかぶっているんだろうか。怒っててもこの表情を崩すことはなさそう。
……この笑顔で人ぶん殴ったりするんだろうか…こわ…
「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ、私は会話をしたいのであって質疑応答をしたいわけじゃないので。というか、情報を得るのに雑談なんかしませんよ?」
「……どうだか」
本当本当!とケラケラ笑うイケオジ。
なんだろう…得も言われぬ怖さがこの人からにじみ出てるんだけど、もうほんとやだ。
ヤクザって本当ヤダ。
「そもそも龍桜会は荒事は専門じゃないんですよぉー、だから私の出番なんてほとんどないですし…佐竹くんが大体やってくれるからねぇ」
いや、もうどいつもこいつも恐怖。
「さて、じゃぁちょっとだけ質問させてもらいますよ」
そういって膝に肘を当てて両手を口元で組む。
既視感を感じる佇まいだが、残念なことに初老の男性は脇に控えていない。
「未成年の君が、施設に入らず一人暮らししていたのはなぜ?もともと住んでいた家で暮らしていたわけじゃないよね」
「一人で生活できたからですよ。金銭面も問題はなかったので。」
「家を借りるのはどうしたんだい?」
「弁護士さんですよ。どこのどなたか覚えていませんけど。成人するまでは弁護士さんがいたので。」
「そんなに昔のことじゃないのに覚えていないの?」
「そうですねぇ。あまり頻繁に連絡とっていたわけじゃないので、担当が変わったりもしましたし。」
「でもその情報、出てこなかったんだよねぇ」
「そうなんですかー、未成年だったからですかね?」
ちょっと考え込むように黙るイケオジ。
タルトの上に乗っているモモをフォークでつつく私。
「そういえば、君のお父さんは君が幼いころに再婚して離婚しているけど、その奥さんは今何をしてるのかな?」
「知りません。」
「君が1人になったときも?」
「知らないですね。連絡先も知らなかったので当時連絡することもできませんでしたし。」
「調べようとしなかったの?ハッカーなんだよね?」
「そもそも10年も前に離婚した相手の子供から連絡来ても困るだけでしょう?血のつながりがあるわけでもない、他人ですよ。私も向こうに迷惑かけたくないですし、自分で生活できる状態だったので必要に思いませんでした。」
「なるほど。」
「ただいまもどりましたぁぁ!」
ガチャッドタタタ
リビングの外からの声に安堵した。
ないす山村!!!
「山村さんも戻ってきたことですし。そろそろこのお話やめましょうか」
私はそう区切りをつけると、ガサガサと荷物を運んでいる山村さんのもとへ急ぐ。
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