3獣と檻の中

蓮雅 咲

文字の大きさ
上 下
32 / 106

第二十七話【時間設定って大事】※

しおりを挟む
「いいですか?左手はそのまま。ですよ?」

ニコニコした顔で私の左手から手を放し、そのまま指先を肌につけたまま肘に滑らせていく。

「っ……」

くすぐったさとこれから起きるであろう不安に、身を震わせる。

ゆっくりと三嶋さんの指が肘から放れ、頬にあてがわれた。
頬、首、鎖骨……
皮膚を男の指でそっと、優しく撫でられ、自分の顔が上気している気がした。

「っふ。いい顔になってきましたね。目が潤んで、顔が赤く染まって……」

三嶋さんの顔が妖艶に笑う。
この人は狐でも内に飼ってるんだろうか。
えっちな雰囲気を出すときは異様な艶めかしさがある。

男の右手が鎖骨から胸の脇をつつつーと通りすぎ、腰、そして太ももの上のスカートをなぞる。
パニエを着けているのでスカートの上を指が滑ったところで何も感じないのだが、視覚情報として見えるのが異様に生生しくて嫌になる。

「別に見続けなくてもいいんですよ?僕が勝手にするだけなので。貴女は好きなように過ごしていてください。」

「じゃぁ今すぐ部屋に戻ってもいいですか?」
「できると思いますか?」
「させると思いますかの間違いでは?」
「貴女が私を突き飛ばせるなら…ですが、そんな細腕一本じゃ無理ですね。
それに、左手が耳から離れたら……ふふふ…」

なんだ、その笑い。
何させられるの…超怖いんですが…?

「そうですねぇ、罰ゲームの約束を違えた場合は口淫でもしてもらいましょうか…」

(こう、い、ん…?)

「あれ?したことありませんか?この可愛らしいお口で、僕のナニを気持ちよくするんですよ。」

私の唇をふにっと押しながら撫でる。

「……っ!!!」

こういんて《口淫》か!!!
日本語で言う人、初めてみた…グーにした右手をパーにした左手の上に(ポム。なるほど。)なんて脳内で考えてる場合じゃなかった。
フェラチオって言えばわかりやすかったですかね?クスクス
じゃない。
男のナニを口に入れるなんて冗談じゃない!

首を横に音がなるほどブンブンと振る。

「あらま、全力ですねぇ…そこまでお嫌ですか?でもやりたくないならその左手、離さなければいいだけなので。頑張ってくださいね…?」

ニコっ

アーチ状に伏せられた瞼が怖い。
私は若干涙目になりながら誰にともなく誓う。
絶対耳離さない。絶対にだ。

なんだか当初の罰ゲームからどんどん条件が増えている気がする。
メイド服を着るくらいどうってことなかったのではないだろうか。
自爆が自爆を呼んでるような気もする。
…私がアホなだけなんだろうか……

するすると三嶋さんの右手が太ももを撫で、左手は私の右頬に当てられる。
気が付くと男の顔が間近にあり、唇を奪われていた。

「んんっ…!」

ベッドが壁に沿うように置かれ、壁に寄りかかるようにその上に座っていた私は
後ろに逃げることもできずに、彼の深い口づけに抗うこともできず…
貪るように口内を嘗め尽くされる。

徐々に上がってくる右手、内腿をすりっと触られると体が跳ねた。

覆いかぶさるようにベッドに倒され、三嶋さんの顔が首筋に埋まり、
リップ音が首筋から聞こえる。

「やっ!めてくださ…」
「恥ずかしい…ですか?恥ずかしがっているのも可愛らしいので、もっと恥ずかしくなって欲しいんですけど…ふっ」

首筋から顔が離れ真上から見下ろされるような形になる。
顔を見られるのは異様に恥ずかしくて、右手を目に当て少しでも顔を隠そうと試みる。

「顔を隠すのは頂けないですね。僕が楽しめない」

傲慢な言い草に苛立ちを覚える…けど今はそれをぶつけても仕方ない。

「じ…時間!!!決めましょう!!!」
「時間?」
「そうです…!だってタイムリミットがないと私にとって終わりがなくなっちゃいます!三嶋さんが「良い」と言うまでとか1年とか言われたら困りますし!」
「そうですね…まぁ最もと言えば最も…?」

三嶋さんは私の上から退くと、スマホを取り出し、では1時間というのはどうでしょうか。と言ってきた。

「一時間左手がこのままなのは正直ツライです。なので10分で。」
「10分…無理ですね。せっかく6回も勝ったのに。少なくとも1回×10分で60分です。」
「無理です!!!じゃぁ15分。」
「…50」
「……20」
「45」
「……30!!これ以上は譲れません!私の腕が死んじゃう!!」

「はぁ…貴女って人は…僕に譲歩させる人はなかなかいないんですよ?僕も貴女に甘い……」

30でいいですよ。その代わり、一瞬でも放れた場合は口、使ってもらいますからね。
そういいながらスマホを操作し、タイマーを30分にセットして私に見せた。

なんだろう。私に優しいのでは?
泣きの一回も追加してくれたし。
地味にいい人なのでは?
あれ?騙されてる?

「では、タイマースタート。」

新たに始まった三嶋vs深月の攻防。
私は30分耐え切れるのか。
耐え切れなくても耐える。
じゃないと私が大変なことになる。
とりあえず目先の男の魔の手から逃げるしかない。
何をしてでも逃げる。

まずは、ベッドから逃げることからだ。
私は体を起こした。

三嶋さんとの追いかけっこの始まりだ。
体力を使ってでもこの30分は死に物狂いで逃げる。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

社長の×××

恩田璃星
恋愛
真田葵26歳。 ある日突然異動が命じられた。 異動先である秘書課の課長天澤唯人が社長の愛人という噂は、社内では公然の秘密。 不倫が原因で辛い過去を持つ葵は、二人のただならぬ関係を確信し、課長に不倫を止めるよう説得する。 そんな葵に課長は 「社長との関係を止めさせたいなら、俺を誘惑してみて?」 と持ちかける。 決して結ばれることのない、同居人に想いを寄せる葵は、男の人を誘惑するどころかまともに付き合ったこともない。 果たして課長の不倫を止めることができるのか!? *他サイト掲載作品を、若干修正、公開しております*

処理中です...