3獣と檻の中

蓮雅 咲

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第二十六話【すっぴんの時に限って…】

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結論から言おう。

泣きの1回。と書いて、無駄な抵抗。と読む。

もう三嶋さんとトランプはしない。
決めた。二度としない。

私が決めたゲームは『ダウト』だったのだが、三嶋さんに心理戦とか無理だった。
無理でしかなかった。顔面無表情はそれなりに自負していたのだが、だめだった。

「僕の勝利ということで、では今度こそメイド服に着替えていただきます。もちろん。着替え終わったら約束通り僕が言うまで耳たぶを触っていてもらいます。」

ニコっと笑顔を向けられ、うなだれるしかない私。

立ち上がった三嶋さんがマネキンが着ている衣装を取り、うなだれている私の目の前に置く。

「深月さんがご自分で着替えないのでしたら、僕がお手伝いしましょうか?」

「結構です!」

悲鳴に近い拒否。
目の前で着替えるのだっていやなのに何で男に着替えさせてもらわなければならないのか。

はぁぁぁ……

深いため息を吐き、約束は約束だ。勝負を挑まれて負けたのも泣きの一回をさせてもらっておいて負けたのも自分なのだ。
女に二言はあってはならぬ。

覚悟を決めて立ち上がり、カチューシャを取ると、一気にふわもこワンピースを脱ぎ捨てた。

おおー、いい脱ぎっぷりですねぇ
なんて言いながら拍手される。

悩まし気にストリップを見せるほうが恥ずかしい。
こんなのは勢いだ勢い!!

しかし正面で脱いだり着たりするのはあまりに恥ずかしいので微々たる抵抗で後ろを向く。

「今日は黒の下着にしたんですね。凄くお似合いですよ。偶然だとは思いますが僕の選んだモノです。とても…嬉しいですよ…」

比較的選びやすい下着を選んだだけなのだが…
思わぬ褒められ方をした。
シンプルだが上品な黒のブラジャーとショーツ。サイドを紐で結んで止めること以外は布面積も多くてちょっと安心したんだけど…

…………あれ?

「なんで私の下着のサイズ知ってるんですか?」

ブラジャーのアンダーもトップも私にピッタリ合うサイズだ。
いつ私の下着の情報とか調べたおい…

「なぜでしょうね…?」

正直に言うつもりはないようだ。
ヤクザってストーカーなのかな?恐怖が一つ増えた気がする。

メイド服は、ちょっとフリルが多くてデコルテが見え、胸が協調される半袖丈で、黒のふわっとしたミニ丈ワンピース。
小ぶりなパニエと、上からつけるタイプのコルセット。
白ニーソとフリフリカチューシャ。
ちょっと小さ目の腰でつけるタイプの丸エプロン。
手首には白いレースに黒のサテンリボンで取り付けるタイプのブレスレット左右用。
ブレスレットと同じデザインの太もも用のアクセサリー。1つ。
靴はつま先は丸くて、いかにもロリータが使用しているアレである。色は黒。

明らかにコスプレ用。
なんならえっちぃプレイにご使用になられるのではなかろうかという代物だが、地味に生地がしっかりしている。

全てを着け終え、恐る恐る後ろを振り返る。

「うん、やっぱりとてもお似合いです。ノーメイクでここまでお似合いになるとは……サイズもぴったりですね!」

(……んあああああああああああああ!!!!すっぴん!!!!)

言われるまで忘れていた!
忘れてたんだ!!!
こんな芋女なのになんでこんな衣装着せるんだって思ったけどそれどころじゃなかった!!!

思わず膝から崩れ落ちた。

「……お願いです、化粧もしていないのにこの格好は死ぬほど悲しいので、それ以上顔面について言うのはやめてください。精神的に死ぬ…」

「いやいや、先ほども言いましたが、もともとお似合いになると思って手に入れた衣装ですが、ここまでとは思いませんでした。とても素敵ですよ。」

三嶋さんは座り込んでいる私の横にくると髪を優しく撫で、頭部に口づけた。

「さぁ、立って?もっとよく見せてください。」

手を取り立たされ、ベッドに乗せられた。

では…約束です。
そう言うと、私の左手を取り、耳にそっと触れさせた。
かっと顔が赤くなる。

「そう…とても可愛らしいですよ…?」

男はゆっくりと微笑んだ。
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