3獣と檻の中

蓮雅 咲

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第十五話【お前の望みは叶えない】※

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【佐竹視点】___



『前戯…いらないです』『私が気持ちいいとかどうでもいい』

そう言った目の前の女の言っていることがよくわからなかった。
普通の人間なら「痛い」ことはされたく無い。
男が女を自分本位に犯すことを良しとしないのは普通の事だ。

少なくとも、今、裸をさらし、俺に抱かれる覚悟を決めたこの女を
俺は痛めつけようとして抱こうとしているわけではない。
ただの性処理のための女なら、甲高い嬌声を上げさせ、濡れさせるためだけの愛撫など、
する時間ももったいないと思うほど、俺の生活に時間の余裕があるわけでもない。
今までは自身の高ぶったモノを、女の中に埋め、熱を吐き出して終わりだ。それが普通。
それが体を開く女に対して誠実な対応だなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
人間として最低だと言われても「そうだな」で終わってしまう話だ。
だが、だから何だというんだ。俺は関東一とうたわれる暴力団の若頭の右腕だ。
特別に想いを寄せているわけでもない、単なる性処理の相手に対して『使い捨て』だという扱いをすることに何が悪いのか。

でも、こいつは違う。
こいつをグズグズにして、俺に目を向けさせようとしているのに。
俺に抱かれることを《良し》としているのに、愛されることを拒む。

赤くぷっくりと立ち上がっている右胸の頂きをギュッと摘まむ。

「っ!!!」

痛みを耐えるように深月は歯を食いしばって顔を顰めた。

「痛いの嫌だろ?なら気持ちいいの、受け入れればいいじゃねえか」

痛みを嫌うくせに、愛撫をいらないという。
目の前の女がわからない。

痛みを与えたその場所を
今度は優しく撫でる。

「……っふ…」

小さく息を吐くように喘ぐ声は、熱を孕んでいるように聞こえる。
細めた瞼の中は微かにうるんでいるのが見え、俺自身が熱を持ち立ち上がろうとしていた。

「なに、お前痛いほうがいいの?」

上目遣いで深月の顔を仰ぎ見れば、眉根を寄せながらぷるぷると首を小さく振った。

「痛みが好きなわけでは…なくっ…セックスが、も、目的な…ら…っ、そうしてくれ…て、いい、のでっ」

(あー、『早く終わらせろ』ってことか……)
ふぅん……と俺は目を細めた。

俺に、さっさと終われ、と。
俺から、さっさと解放させろ、と。

入れて、出して、終わり。
そういうセックスをしろって言いたいのか。
さっさと終わらせて解放しろ、快楽なんかいらない。

目の前で俺の愛撫に反応している女から告げられた言葉の意味を
そう汲み取ると、俺の心臓がチリっと痛みを覚えた気がした。

お前の望みがそうだというなら。
その望みは絶対に叶えてやらない……
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