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第十一話【質問の答えのせいでコーヒーの味がわからない】
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必要なモノは与えてくれるという発言があったが、パソコンや携帯電話を与えられる可能性は低い。
外部に連絡をさせてもらえる可能性は低いからだ。
外出を禁止するという発言から《殺される可能性》は各段に低くなった…と考えていいと思う…思いたい…希望的観測にすぎないけれど。
佐竹が言っていたように、私をここに残しておきたい男どもがいなかったとしても、基本的にあの金髪の男、山村さん…がいるだろう。
そして私が連れてこられた時のように、
玄関前には二人、見張りなのか警備なのかは知らないが佐竹の言い分だと常にいる…はずである。
運よく玄関の外に出られたとしても、エレベーターを降りた先にはコンシェルジュがいる。
見つかる可能性は高い。
コンシェルジュにも顔を見られている。
たとえ非常階段を見つけられたとしても、地上20階にあるこの階から走り降りたとしてこのマンションの裏口なんていうものがどこにあるのかわからない。
第一、私が逃げたとばれた時点で、1階の外に出られる可能性が低すぎる。
誰にも見られず、玄関から外に出て、見つからずにマンションからの脱出…
(軽く考えただけでも不可能…)
前を歩く佐竹にバレないように嘆息する。
(ちょっと情報が欲しい…な)
佐竹はリビングの中央にあるあの大きなソファにさっきと同じところにストンと腰を下ろすと
「座れ」と一言私に向けた。
2メートルほど離れて突っ立っていた私は、彼の前にあるローテーブルを挟んだ向かいにストンと腰を下ろした。
「チッ、ソコじゃねぇだろ」
とイラついたように小さくごちる佐竹。
が、考え事をしながら「座れ」に対しての意識しか持っていたなかった私は
彼の考えていたことなんかまったく理解できず、(?)と私に入れられたであろう、冷めたコーヒーに手をかけた。
どうやって情報を引き出そうか考えていたが、回りくどいことをするとイラついている目の前の男をさらにイラつかせそうで、直球である程度聞いてみるかと
「質問したいことがあるんですが…」
と声をかけてみる。
自分用のマグカップであろうステンレスマグに口をつけて、冷めていることを実感したのだろう。
佐竹はまた小さく舌打ちして「山村、入れなおせ」と声を少し張った。
金髪山村はまたどこからか「はいっ」と声を出し走って佐竹のそばに行き、マグカップを受け取った。
「吉沢さんも」と声をかけられたのでおずおずとマグカップを差し出す。
「んで?」
ソファの背もたれにギシっと体重を預け、長い脚を組みなおす佐竹。
イケメンはなんでも絵になるなぁ…とどうでもいい感想を飲み込み
「このマンションは3人で住んでいらっしゃるんですか?」
質問の意図が理解できないとでもいいたそうに、不満げに「そうだな」と肯定された。
「山村さんは常にこの家にいるんですか?寝る場所とかはないんですかね」
「基本的には山村はこの家にいるが、いないものと思って生活しろ。あいつのことを気にかける必要はない。」
今度は不機嫌そうに私に告げた。
なんか山村さんが可哀相になる。なんだろう。大丈夫かな虐げられてないかなあの人。
「黒服の方々は「お前が気にかけることじゃない」
質問させてくれねぇ…
「必要なモノは与えると言われたような気がしますが、どこまで可能ですか?」
「…例えば?」
眉を顰め、目を細められる。
いかにも不機嫌という顔を隠そうともしないこの男…
怖いからヤクザ丸出しの顔はあまりしてほしくない。
まぁ笑顔でも、あのニヤニヤした顔は何考えてるかわかんないからやめてほしいんだけど。
「インターネットがつながっている高性能PCとスマホ」
「却下だ。必要がない。」
(やっぱりか…。外との連絡取れる手段を持たせてもらえるとはやっぱり思えないかぁ…)
でも、だとしたら私をここに留め置く必要性が理解できない。
「…ならどうして私はここに監禁されているんでしょうか。情報屋として私を囲いたいという意味ではなかったんですか?」
そう、この人たちは私をハッカーとして、情報屋として囲いたいということを3日前に話していた。
だとするならPC…少なくともスマホを提供しないのはおかしい。
「お前、仕事にする気はないって言ってなかったか?」
ギシッとソファから立ち上がり、ゆっくりと私の前に立った。
「…そうですね。私は私の《趣味》を仕事にするつもりはないです。今でもその気持ちに変わりはありません。
そして、私はあなた方の情報を《一般人》が知る内容以外のことは知りません。
その《一般人》をあなた方のそばで監禁される理由がわからないんです。」
睨まれながら見下ろされるのマジで怖いから……
なんで近づいてきたんだこの人マジでやめてほしいお願いだからやめてください。
いったん発言を区切り反応を見る…が佐竹は微動だにしない。
「情報を知られたり、漏らされるのが困る…というのであれば、あなたたちは私を一人《処分》することなんてたやすいでしょう。なのにわざわざ《監禁》して飼う理由というのは、私に《仕事》をさせたいからじゃないんですか?」
佐竹は不機嫌に細めていた目をやめ、私の目の前でローテーブルに左手をつき腰を下ろした。
なんでそこに座るん。
そこ椅子じゃない。
私と佐竹さんの膝が触れ、私の両足の間に足を割り入れる。
右足を上に足を組み、宙に浮いている右足の甲で私の右のふくらはぎをさする。
(ひぇ……)
何してるのこの人…
嫌でも性的に意識させられる。
考えたくないんですよ、その可能性は…
「《仕事》をさせるため…だけ…ならココに閉じ込める必要はないだろ。そんな面倒くさいことすると思うか?」
「わからないから聞いているんですよ。」
コーヒーのいい匂いが漂ってきた。
「私は《単なる一般人》です。何度も言いますが閉じ込められる理由が見当たりません。解放してください。」
「却下だ。財田も三嶋も、そして俺も、《お前》を気に入った。だからここに連れてきた。」
逃がすつもりは一切ない。
低くうなるようにそう告げながら
すりすりと私のふくらはぎを足先で撫であげると
左足でズリっと片足を横にずらされ、さっきまで私のふくらはぎを撫でていた右足が私の膝の間に割り入れられた。
(……っ!!!?)
足を閉じられなくされた私の顔に青筋が入るのを自覚する。
「ああああのっ!!もう一つ聞きたいことがあるんですがっ!!!」
佐竹の体が私の座っているソファにゆっくりと向かう。
右足の膝が私の股の間のソファに、ギシっと乗せられた。
考えたくない考えたくない怖い怖い怖い怖い怖いっ!!!
「もしっ奇跡的にこの家から私が逃げた場合って……!!!?」
「即捕まえて、もしくは探し出して、連れ戻して、死んだことにして戸籍をなくして、両脚切り取って逃げるなんて考えられないようにして飼うっていうのもいいな…?」
ニヤリと口の端を上げ、ゆっくりと私の耳をペロっと舐め重低音をその口から響かせる。
猟奇的ですね!?
目だけで男の顔をのぞき見ると、ゆらりと瞳の奥に暗闇が揺れた気がした。
コーヒーの香りが近く感じたところで、佐竹の視線が離れ、金髪がコーヒーを持ってきてくれたんだと理解したが、佐竹の体が離れることもなく、目は笑っていない。
ドッドッドッド
自分の心臓の音が死ぬほどうるさい。
「お待たせしました」とステンレスマグと真っ白のマグカップがローテーブルに静かに置き、そっとリビングの奥へと消えていく山村さん。
山村さん……!!
ちょっとコーヒー置いてどっか行かないで助けて!!!
この体勢おかしいとおもわんのか!!おい!!
カムバック!山村!!
その黒い液体が揺れるさまを見つめ、山村さんへの叫び(心の声)を届けることを諦め、自分の状況を考える。
今逃げおおせたとしても、次に見つかったら私は殺されるよりも怖い目に合わされる…
よくわからないけれど…
もしかしなくても…
私にとって一番考えたくない、最悪な状況が出来上がっている…
いい匂いのコーヒーだけど、たぶん味なんかわからない…だろうな…
佐竹の口からでた言葉を脳内で反芻しながら、恐怖に顔が引きつった。
外部に連絡をさせてもらえる可能性は低いからだ。
外出を禁止するという発言から《殺される可能性》は各段に低くなった…と考えていいと思う…思いたい…希望的観測にすぎないけれど。
佐竹が言っていたように、私をここに残しておきたい男どもがいなかったとしても、基本的にあの金髪の男、山村さん…がいるだろう。
そして私が連れてこられた時のように、
玄関前には二人、見張りなのか警備なのかは知らないが佐竹の言い分だと常にいる…はずである。
運よく玄関の外に出られたとしても、エレベーターを降りた先にはコンシェルジュがいる。
見つかる可能性は高い。
コンシェルジュにも顔を見られている。
たとえ非常階段を見つけられたとしても、地上20階にあるこの階から走り降りたとしてこのマンションの裏口なんていうものがどこにあるのかわからない。
第一、私が逃げたとばれた時点で、1階の外に出られる可能性が低すぎる。
誰にも見られず、玄関から外に出て、見つからずにマンションからの脱出…
(軽く考えただけでも不可能…)
前を歩く佐竹にバレないように嘆息する。
(ちょっと情報が欲しい…な)
佐竹はリビングの中央にあるあの大きなソファにさっきと同じところにストンと腰を下ろすと
「座れ」と一言私に向けた。
2メートルほど離れて突っ立っていた私は、彼の前にあるローテーブルを挟んだ向かいにストンと腰を下ろした。
「チッ、ソコじゃねぇだろ」
とイラついたように小さくごちる佐竹。
が、考え事をしながら「座れ」に対しての意識しか持っていたなかった私は
彼の考えていたことなんかまったく理解できず、(?)と私に入れられたであろう、冷めたコーヒーに手をかけた。
どうやって情報を引き出そうか考えていたが、回りくどいことをするとイラついている目の前の男をさらにイラつかせそうで、直球である程度聞いてみるかと
「質問したいことがあるんですが…」
と声をかけてみる。
自分用のマグカップであろうステンレスマグに口をつけて、冷めていることを実感したのだろう。
佐竹はまた小さく舌打ちして「山村、入れなおせ」と声を少し張った。
金髪山村はまたどこからか「はいっ」と声を出し走って佐竹のそばに行き、マグカップを受け取った。
「吉沢さんも」と声をかけられたのでおずおずとマグカップを差し出す。
「んで?」
ソファの背もたれにギシっと体重を預け、長い脚を組みなおす佐竹。
イケメンはなんでも絵になるなぁ…とどうでもいい感想を飲み込み
「このマンションは3人で住んでいらっしゃるんですか?」
質問の意図が理解できないとでもいいたそうに、不満げに「そうだな」と肯定された。
「山村さんは常にこの家にいるんですか?寝る場所とかはないんですかね」
「基本的には山村はこの家にいるが、いないものと思って生活しろ。あいつのことを気にかける必要はない。」
今度は不機嫌そうに私に告げた。
なんか山村さんが可哀相になる。なんだろう。大丈夫かな虐げられてないかなあの人。
「黒服の方々は「お前が気にかけることじゃない」
質問させてくれねぇ…
「必要なモノは与えると言われたような気がしますが、どこまで可能ですか?」
「…例えば?」
眉を顰め、目を細められる。
いかにも不機嫌という顔を隠そうともしないこの男…
怖いからヤクザ丸出しの顔はあまりしてほしくない。
まぁ笑顔でも、あのニヤニヤした顔は何考えてるかわかんないからやめてほしいんだけど。
「インターネットがつながっている高性能PCとスマホ」
「却下だ。必要がない。」
(やっぱりか…。外との連絡取れる手段を持たせてもらえるとはやっぱり思えないかぁ…)
でも、だとしたら私をここに留め置く必要性が理解できない。
「…ならどうして私はここに監禁されているんでしょうか。情報屋として私を囲いたいという意味ではなかったんですか?」
そう、この人たちは私をハッカーとして、情報屋として囲いたいということを3日前に話していた。
だとするならPC…少なくともスマホを提供しないのはおかしい。
「お前、仕事にする気はないって言ってなかったか?」
ギシッとソファから立ち上がり、ゆっくりと私の前に立った。
「…そうですね。私は私の《趣味》を仕事にするつもりはないです。今でもその気持ちに変わりはありません。
そして、私はあなた方の情報を《一般人》が知る内容以外のことは知りません。
その《一般人》をあなた方のそばで監禁される理由がわからないんです。」
睨まれながら見下ろされるのマジで怖いから……
なんで近づいてきたんだこの人マジでやめてほしいお願いだからやめてください。
いったん発言を区切り反応を見る…が佐竹は微動だにしない。
「情報を知られたり、漏らされるのが困る…というのであれば、あなたたちは私を一人《処分》することなんてたやすいでしょう。なのにわざわざ《監禁》して飼う理由というのは、私に《仕事》をさせたいからじゃないんですか?」
佐竹は不機嫌に細めていた目をやめ、私の目の前でローテーブルに左手をつき腰を下ろした。
なんでそこに座るん。
そこ椅子じゃない。
私と佐竹さんの膝が触れ、私の両足の間に足を割り入れる。
右足を上に足を組み、宙に浮いている右足の甲で私の右のふくらはぎをさする。
(ひぇ……)
何してるのこの人…
嫌でも性的に意識させられる。
考えたくないんですよ、その可能性は…
「《仕事》をさせるため…だけ…ならココに閉じ込める必要はないだろ。そんな面倒くさいことすると思うか?」
「わからないから聞いているんですよ。」
コーヒーのいい匂いが漂ってきた。
「私は《単なる一般人》です。何度も言いますが閉じ込められる理由が見当たりません。解放してください。」
「却下だ。財田も三嶋も、そして俺も、《お前》を気に入った。だからここに連れてきた。」
逃がすつもりは一切ない。
低くうなるようにそう告げながら
すりすりと私のふくらはぎを足先で撫であげると
左足でズリっと片足を横にずらされ、さっきまで私のふくらはぎを撫でていた右足が私の膝の間に割り入れられた。
(……っ!!!?)
足を閉じられなくされた私の顔に青筋が入るのを自覚する。
「ああああのっ!!もう一つ聞きたいことがあるんですがっ!!!」
佐竹の体が私の座っているソファにゆっくりと向かう。
右足の膝が私の股の間のソファに、ギシっと乗せられた。
考えたくない考えたくない怖い怖い怖い怖い怖いっ!!!
「もしっ奇跡的にこの家から私が逃げた場合って……!!!?」
「即捕まえて、もしくは探し出して、連れ戻して、死んだことにして戸籍をなくして、両脚切り取って逃げるなんて考えられないようにして飼うっていうのもいいな…?」
ニヤリと口の端を上げ、ゆっくりと私の耳をペロっと舐め重低音をその口から響かせる。
猟奇的ですね!?
目だけで男の顔をのぞき見ると、ゆらりと瞳の奥に暗闇が揺れた気がした。
コーヒーの香りが近く感じたところで、佐竹の視線が離れ、金髪がコーヒーを持ってきてくれたんだと理解したが、佐竹の体が離れることもなく、目は笑っていない。
ドッドッドッド
自分の心臓の音が死ぬほどうるさい。
「お待たせしました」とステンレスマグと真っ白のマグカップがローテーブルに静かに置き、そっとリビングの奥へと消えていく山村さん。
山村さん……!!
ちょっとコーヒー置いてどっか行かないで助けて!!!
この体勢おかしいとおもわんのか!!おい!!
カムバック!山村!!
その黒い液体が揺れるさまを見つめ、山村さんへの叫び(心の声)を届けることを諦め、自分の状況を考える。
今逃げおおせたとしても、次に見つかったら私は殺されるよりも怖い目に合わされる…
よくわからないけれど…
もしかしなくても…
私にとって一番考えたくない、最悪な状況が出来上がっている…
いい匂いのコーヒーだけど、たぶん味なんかわからない…だろうな…
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