3獣と檻の中

蓮雅 咲

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第九話【お姫様だっこの恐怖】(下)

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「ヒカル、お前。楽しそうなことしてんじゃねぇか。」
「と、いうか。お姫様抱っこってどういう趣旨ですか?」

貴方なら俵抱きのほうがよっぽど似合うと思いますが…
とニコニコと眼鏡は続けて言う。

「こっちの方が逃げにくいだろぉ?」

首を少しだけ傾けニヤっと笑った佐竹。
逃げにくいとかなんとかどうでもいいんではよ下ろしてほしいんですがっ……!!?

「ああああああのっ!いい加減下ろしてほしいんですけどっ!!!」
「…却下。」
「だからなんで?!」

私の反応が面白かったのか、今度の下ろしてほしいコールについてはクツクツと喉を鳴らして笑うのみだった。
さっきのはなんでだめなのか。
ていうか却下しか言ってくれないのなんでなんだほんとに、、、却下マンか。

佐竹は私を抱いたまま三嶋の隣にドカっと座り、足を持っていたほうの手を放し、私は彼の膝に座る形になった。

なんだこれ、なんだ…本当になんなんだ。
ニヤニヤと笑顔を見せる私を抱き続ける男。

「…ヒカル…いい度胸してんなお前」
「今更だろ。前回はお前がほぼしゃべってお前が抜け駆けしたんだから、俺にも権利はあんだろうが」

バリッと何か私の横で稲妻でも走ったかのような気がしたのは気のせいだろうか。
私を放さない男VSローテーブルを挟んだ黒獅子。
彼らの背後には獅子と龍がいるに違いない。

(なんの話してんだこの人ら…)

なんでもいいから下ろしてほしいし、さっさと用事を済ませて帰りたい。
まだ拠点に帰るわけにはいかないから帰るとは言わないかもしれないが、少なくともこの人たちから離れたい。
と内心は饒舌にしゃべっているが、先ほど佐竹に却下されたときのまま固まっている。
そんな私を横目に見ながら、三嶋がマグカップをテーブルに戻しながら声を出した。

「どうでもいいけど、彼女固まっていますよ…?」

ことあるごとに隙を見ては「おろして」と伝えているが一行に下ろしてくれない佐竹。
軽く私を支える程度に抱えているのかと思い、三嶋が声を掛けてくれ私に視線が集中した瞬間、今だ!!と佐竹から体を放そうとしたらクイっと腰を押さえられた。

(なんで!!なんで放してくれないのじゃぁぁぁぁ)
と心の中で叫ぶがそれだけで身動きが取れなくなるほどの力強さだった。

ピキーンと私の体はまたもや固まり、私の向いている正面にいる三嶋に救いの目を向ける。

「無理ですね。佐竹が貴女を放すことを拒否しているようですので、私にはどうすることもできません。」

三嶋が両肩を少し上げてお手上げポーズをする。
なんで!?どうしてこうなった!?

ここ1か月の中で「なんでこうなった」って何回思ったことか…
ため息の回数とともにカウントしておくべきだったのかもしれない。

見上げるとニヤっと口元を引き上げ、目を細めて私を見る佐竹の顔。

(それどういう表情なの…)

一般人からしたら悪魔の微笑みですよ……と私は背中に冷や汗が垂れるんじゃないかという感覚になる。
そのままギギギと首を黒獅子に向けると、両手を組みながら肘を膝につけ、右足を上下にゴゴゴと振り続けている。

超睨んでるっ!!!なんかよくわからんけどめっちゃ怒ってるぅぅぅ!!!!
怖い怖い怖いっ!!!

チッと黒獅子が舌打ちをしため息を1つつくと

「仕方ねぇな、このまま話するぞ。」

と、やっとこ本題に入るようだ。

どこにいたのかキンパツのハーフアップチャラ男が私と佐竹の分の飲み物を持ってきてローテーブルに置いた。
マグカップには黒く揺らめく飲み物だ。

「今日からお前にはこの家にいてもらう。お前が必要なものはこの山村に言いつけろ。外に出ることは一切禁じる。」

………
………
………

「おい、聞いてんのか」

金髪がおいてくれたマグカップに手を伸ばし、ふーふーっと息を吹きかけてコクコクと飲みながら、視線に気づき目を上げると三人して私を見ていた。

「…私!?」

「…お前以外に誰がいんだよ!!」

黒獅子が吠えた。

「いや、ほらここに二人いるじゃないデスか…え?今のお話私あてだったんですか…そうですか。」

この人なんていったっけ?

「えっと、この家にいろ、外に出ることは禁止……。必要な…モノは山村へ…?」

指を折りながら黒獅子が言ったであろうことを復唱していく。

キョロキョロと全員の顔を見る。
金髪にも目を向けるとペコっと軽く頭を下げた。

んんん?
どういうこと?!

「え、待ってください。私あなた方と関わるの嫌だって言いましたよね?」

黒獅子に言葉を向ける。

「言ったな。」

「その話、前回されてませんよね?」

今度は三嶋にブンっと顔を向ける

「してませんね。」

真上にある佐竹にも恐る恐る顔を向ける

「拒否、したいん…ですが…」

「もちろん、却下…だ」

ニヤリ…と不敵な笑みを私に向ける男たち。

「…なんで?!」
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