3獣と檻の中

蓮雅 咲

文字の大きさ
上 下
9 / 106

第四話【すっぴんとキス】

しおりを挟む
不敵に笑う、百獣の王のような黒髪黒目のイケメン。
その横にはツーブロックの身ぎれいな男らしい髭イケメン。
後ろにはニコニコとほほ笑んでいるが本心を笑顔で隠しているような眼鏡スーツイケメン。
金髪の肩くらいまである髪をハーフアップにして控えるチャラ男風微イケメン。

…なんだろう…この気持ち。ここ暴力団事務所ですよね?ホストクラブとか?異次元かな?

(…イケメンと触れ合うような人種じゃない上にヤクザと関わりたくもない…早く解放してほしい…)

「お前、俺のモノにならねぇか?」
「…ハイ?」

ちょ、ちょっとまって?
いまなんておっしゃいましたか?

「お前のその《ちょっと好奇心旺盛なノゾキ趣味》を活かして俺に囲われるのはどうだって話だ。」

あー、なるほどなるほど。

「拒否権は?」
「ねぇなぁ」

…ふざけんなおい。ないってなんだないって。

「拒否したいんですが。」
「警察にもってくかぁ?」
「拒否したいんですけど、それも」
「じゃぁ飼われるしかねぇなぁ」
「ヤクザさんと関わり持ちたくないんですよ、私一般人なんで。」

はぁ…とため息を吐いて、ニヤニヤ笑う漆黒の瞳に睨み返す。

「正直、ノゾキ趣味のほうは警察に足がつくような真似はしていませんし。情報を売ったりなんてことも今までしてきていませんし。なにをどうやって調べたのかわかりませんが《ソレ》が《私》だという証拠は何もないはずですし、あなた方も警察なんか関わりたくないんじゃないですか?」

それに…と付け加える。

「今回の男の情報をあなた方に渡したのは、近隣住人と私の安寧のためであってあなた方のためではありません。《たまたま》あなた方の欲しい情報を《たまたま》持ち合わせていただけの《一般人》を囲う必要性が感じませんので。今回のこの謝礼に関しては、そちらの《誠意》ということで頂戴しますが。それだけです。断ったってどうせ知らないうちに振り込まれてるんでしょうし…」

ほぉ…?と目の前の男から漏れた声。
なにに関心してんのかしらんけども。

「なので、命の保証、今回の件に関してですね。と、この謝礼のみで今回のお話は終了としてほしいんですよ。確約していただけませんか?」

私はチラっと腕時計を見やる。
そろそろ頃合いなんだよなぁ…

「もう一度言う。
俺に飼われる気はないか?命の保証も、金もくれてやる。ノゾキ趣味も活かせる。不自由はさせねぇ」

ヒュッっと後ろの金髪が息を飲んだ。
低くうなるように、今までの不敵な笑みではなく、真顔で睨まれ言われるその声に、思わず私も息を飲む。
…怖い。拒否したいとさっきまで普通に言っていたが断ったら明日には東京湾…な空気に一瞬でなる。
これだからヤクザは……

断ったら死にそう、マジ、超怖い。
でもここで負けるわけにはいかない…いかないんだ。

「……私も自分の身がかわいいんです。貴方たちの商売にかかわるとろくなことにならないのは明白。私のノゾキは趣味であって仕事にするつもりはないんですよ…申し訳ありませんが。」
「自分の身が可愛いなら断るのは得策じゃねぇぞ」
「そうかもしれませんね…まぁ何を言われても私は趣味を仕事にするつもりはありませんし、飼われる気もありませんので」

引かない私を見つめる4人。
……いたたまれない…
スゥっと目を細めて黒髪の獅子が私を見つめる。
目を離さずに見つめ返すとフッと空気が軽くなった。

「しゃーねぇな、今日はこの辺でいーや」

いーやって軽いな?!
さっきまでの重苦しい空気…断ったら殺す的なオーラはどこいった…殺されなくてよかったけども!!!

はぁ…っとそこで私は自分が息を止めていたことが分かった。
緊張しすぎて死ぬかと思った。目で殺されるかと思った。怖い怖かったもうヤダ。帰る。

「…おもしれぇな、お前。」
黒い獅子が私にクツクツと笑う。

笑いごとじゃないから、マジで。

「なぁ。」

立ち上がり楽しそうに笑いながら私の座っているソファの肘に片足を載せながら座った。

「俺お前のこと気に入ったわ。」

そういうと、私の顎をとり上に向かせ

「…んぅっ!?」

チュッという音を鳴らし

「絶対手に入れて見せる」

ニヤリとまたあの不敵な笑みを浮かべた。



(…あ、私すっぴんだわ……)

外に出るつもりが一切なかったからすっぴん眼鏡でゴロゴロしてたところを強制連行されたのを思い出した。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

地味女で喪女でもよく濡れる。~俺様海運王に開発されました~

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
新米学芸員の工藤貴奈(くどうあてな)は、自他ともに認める地味女で喪女だが、素敵な思い出がある。卒業旅行で訪れたギリシャで出会った美麗な男とのワンナイトラブだ。文字通り「ワンナイト」のつもりだったのに、なぜか貴奈に執着した男は日本へやってきた。貴奈が所属する博物館を含むグループ企業を丸ごと買収、CEOとして乗り込んできたのだ。「お前は俺が開発する」と宣言して、貴奈を学芸員兼秘書として側に置くという。彼氏いない歴=年齢、好きな相手は壁画の住人、「だったはず」の貴奈は、昼も夜も彼の執着に翻弄され、やがて体が応えるように……

処理中です...