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二章 人間での生活
第十三話 ギルマスと決闘した件
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決闘場において,最初に動いたのはガルムだった。
試合場の端から端まで一瞬で移動すると持っていた大剣を俺にむかって思いっきりふる。それだけで周りに信じられないほどの風圧が生まれ,俺の周りの地面が粉砕された。
実際その動きを捕らえられたのはその場で数人しかいなかった。その斬撃は俺に直撃するかと思われた,が俺はギリギリのところでかわし,剣はむなしく空を切り地面にあたる。
なるほど,#こういう_のうきん_#タイプか。これはカウンター狙いがいいな。
そう思った俺はそれからガルムの攻撃をかわす。地獄の魔窟で鍛え上げられた弘樹の戦闘能力は数値上でもそれ以外でもガルドを大きく上回っていた。
ガルムが大ぶりの一撃を放つ。横一閃にふられたそれを俺はしゃがむことで回避する。だがまけんとガルムが追撃をする。それを俺は一歩下がり回避する。
まさに一進一退。激しい攻防であるかに思えた。周りにいた冒険者は酒も飲まずにただその戦いに見入っている。どうやらこのレベルの戦いを見るのは初めてのようだ。
だが戦っている本人たちからすれば拮抗などしていなかった。
ガルムは焦っていた。
(おかしい,おかしいぞ。なぜこの冒険者は俺の攻撃を避けれているのか。なぜ俺の速度についてこれるんだ)
弘樹は知らないがガルムは元Aランク冒険者である。その強さはこの街で知らないものなどおらず,二つ名『粉砕王』でも有名だった。
だが目の前の冒険者にはその攻撃が全く効いていなかった。それどころか舐められていると思わずにはいられない。
それに対して弘樹はかなり余裕だった。最初こそ人間での戦いになれるのに時間がかかったが慣れてしまった今としてはガルムの剣戟が手に取るようにわかっていた。
確かにシーの言っていたことは確かだったな。きっとギルマスは頭の良さで選ばれるんだ。そりゃそうか。日本で言う部長とか係長とかだもんな。
いつ反撃しよう。変な時にしちゃうとガルムさんの身が危険だからちゃんと安全な時にしないとね。でも何で文官のギルマスが戦いに出てきたんだろう。
もしかしてガルムさんは俺にあえて勝たせてBランクに上げようとしてくれているのか。そっか。なんて優しい人なんだ。
じゃあなおさら安全に負けさせないとな。いいタイミングあるといいんだけど。
俺がこう思っている間にもガルムは攻撃し続けていた。ちなみにまわりの冒険者たちは二人の戦いに全く追いつけていなかった。
「おいおい,もしかしてあいつ実はすごい奴なんじゃね」
冒険者の誰かがそういう。するとそれに同意するように次々に意見が出てくる。
「もしかして超強かったやつが冒険者証をなくして一から再スタートしたとか」
「いやいや,あいつは実は貴族のお坊ちゃんで今社会勉強中とか」
「それ言うなら騎士団長の息子だろ」
「あーー」
冒険者のあほな読みは全く的を得てないが,それでも盛り上がっているようだ。さすが冒険者である。
そういう間にも決闘に変化が出てきた。ガルムが疲れ始めてきたのだ。そしてついに彼は剣戟をやめ剣を地面にさすと弘樹に話しかける。
「はぁはぁ。お前,何で攻撃してこないんだ」
「なんでって,そりゃあ俺が実力不足だからですよ」
これは俺がせめてもギルマスの威厳を保たせようと思ったから出てきた言葉だ。それに対してガルムはその言葉を違う意味に捉える。
(実力不足? もしかしてこいつは俺をいつでも倒せる力を持っていて俺を確実に殺そうとしているのか。つまり殺すのに実量不足? それを俺に気づかせて降参させるつもりか。だとしたらあいつは相当の力を持っているんじゃ)
たどり着くまでの道のりは違うが結論はあっている。だがその後の弘樹の言葉でさらに怖気ずくことになる。
「えっと,俺まだ戦いになれていないので繊細なことできないんですよ。だから今はよけていました」
これは完全に脅し文句である。弘樹は全くきづいてないが。そしてこれを聞いたガルムの反応はあからさまだった。
(やっぱり俺を殺せる力を持っているんだ。それで攻撃したら手加減できないと。これはやばい相手と戦っちまったかもな)
額からは嫌な汗が出てきて足は恐怖で震える。これは中断すべきだと思い弘樹に話しかける。
「なあ弘樹,この決闘だが⋯⋯」
「次で決めます」
「へ?」
「だから次で決めます。どうやってやるか決めました。次で終わりです」
もちろん弘樹の決めるとはいかに無力化するということであったが変なことを思いこんでいたガルムは焦っていた。
(マズイ,殺される。あいつは準備の準備が整ったっていうことは俺を殺す準備が整ったっていうことだ。つまり,次で決められるころされる。どうにかしてこの決闘をとめなければ)
「あ,あの弘樹君,この決闘だけど⋯⋯」
その時だった。
「ワァーーー」
弘樹の次で決める発言をうけ,見ていた冒険者のテンションは今日一番で上がっていた。
「ついに決着か」
「俺はやっぱりガルムさんが勝つと思うな」
「いや,あたいはあの坊やに一票」
「負けたやつおごりな」
周りにはこの決闘のことを聞いた冒険者で埋め尽くされいた。どこかから聞いてたくさんの冒険者がやってきたのだろう。そして不幸なことにもガルムの叫びはその声によって遮られた。
その中心で俺が言う。
「それでは行きます」
瞬間俺が文字どうり消える。人間形態の戦い方を完全につかんだ俺は本来の持つ力を完全に発揮できるようになっていた。そして文字どうり全力の弘樹を捕らえられる人などこの場にいるわけもない。そして気づいた時には俺はもともとガルムがいた場所でガルムを抱えて立っていた。
「ウワァァァ」
周りの冒険者が一気に歓声を上げる。そして審判が信じられないと言った表情で
「た,ただ今の決闘,ヒロキの勝ち」
と言った。俺がギルマスに勝った瞬間だった。
試合場の端から端まで一瞬で移動すると持っていた大剣を俺にむかって思いっきりふる。それだけで周りに信じられないほどの風圧が生まれ,俺の周りの地面が粉砕された。
実際その動きを捕らえられたのはその場で数人しかいなかった。その斬撃は俺に直撃するかと思われた,が俺はギリギリのところでかわし,剣はむなしく空を切り地面にあたる。
なるほど,#こういう_のうきん_#タイプか。これはカウンター狙いがいいな。
そう思った俺はそれからガルムの攻撃をかわす。地獄の魔窟で鍛え上げられた弘樹の戦闘能力は数値上でもそれ以外でもガルドを大きく上回っていた。
ガルムが大ぶりの一撃を放つ。横一閃にふられたそれを俺はしゃがむことで回避する。だがまけんとガルムが追撃をする。それを俺は一歩下がり回避する。
まさに一進一退。激しい攻防であるかに思えた。周りにいた冒険者は酒も飲まずにただその戦いに見入っている。どうやらこのレベルの戦いを見るのは初めてのようだ。
だが戦っている本人たちからすれば拮抗などしていなかった。
ガルムは焦っていた。
(おかしい,おかしいぞ。なぜこの冒険者は俺の攻撃を避けれているのか。なぜ俺の速度についてこれるんだ)
弘樹は知らないがガルムは元Aランク冒険者である。その強さはこの街で知らないものなどおらず,二つ名『粉砕王』でも有名だった。
だが目の前の冒険者にはその攻撃が全く効いていなかった。それどころか舐められていると思わずにはいられない。
それに対して弘樹はかなり余裕だった。最初こそ人間での戦いになれるのに時間がかかったが慣れてしまった今としてはガルムの剣戟が手に取るようにわかっていた。
確かにシーの言っていたことは確かだったな。きっとギルマスは頭の良さで選ばれるんだ。そりゃそうか。日本で言う部長とか係長とかだもんな。
いつ反撃しよう。変な時にしちゃうとガルムさんの身が危険だからちゃんと安全な時にしないとね。でも何で文官のギルマスが戦いに出てきたんだろう。
もしかしてガルムさんは俺にあえて勝たせてBランクに上げようとしてくれているのか。そっか。なんて優しい人なんだ。
じゃあなおさら安全に負けさせないとな。いいタイミングあるといいんだけど。
俺がこう思っている間にもガルムは攻撃し続けていた。ちなみにまわりの冒険者たちは二人の戦いに全く追いつけていなかった。
「おいおい,もしかしてあいつ実はすごい奴なんじゃね」
冒険者の誰かがそういう。するとそれに同意するように次々に意見が出てくる。
「もしかして超強かったやつが冒険者証をなくして一から再スタートしたとか」
「いやいや,あいつは実は貴族のお坊ちゃんで今社会勉強中とか」
「それ言うなら騎士団長の息子だろ」
「あーー」
冒険者のあほな読みは全く的を得てないが,それでも盛り上がっているようだ。さすが冒険者である。
そういう間にも決闘に変化が出てきた。ガルムが疲れ始めてきたのだ。そしてついに彼は剣戟をやめ剣を地面にさすと弘樹に話しかける。
「はぁはぁ。お前,何で攻撃してこないんだ」
「なんでって,そりゃあ俺が実力不足だからですよ」
これは俺がせめてもギルマスの威厳を保たせようと思ったから出てきた言葉だ。それに対してガルムはその言葉を違う意味に捉える。
(実力不足? もしかしてこいつは俺をいつでも倒せる力を持っていて俺を確実に殺そうとしているのか。つまり殺すのに実量不足? それを俺に気づかせて降参させるつもりか。だとしたらあいつは相当の力を持っているんじゃ)
たどり着くまでの道のりは違うが結論はあっている。だがその後の弘樹の言葉でさらに怖気ずくことになる。
「えっと,俺まだ戦いになれていないので繊細なことできないんですよ。だから今はよけていました」
これは完全に脅し文句である。弘樹は全くきづいてないが。そしてこれを聞いたガルムの反応はあからさまだった。
(やっぱり俺を殺せる力を持っているんだ。それで攻撃したら手加減できないと。これはやばい相手と戦っちまったかもな)
額からは嫌な汗が出てきて足は恐怖で震える。これは中断すべきだと思い弘樹に話しかける。
「なあ弘樹,この決闘だが⋯⋯」
「次で決めます」
「へ?」
「だから次で決めます。どうやってやるか決めました。次で終わりです」
もちろん弘樹の決めるとはいかに無力化するということであったが変なことを思いこんでいたガルムは焦っていた。
(マズイ,殺される。あいつは準備の準備が整ったっていうことは俺を殺す準備が整ったっていうことだ。つまり,次で決められるころされる。どうにかしてこの決闘をとめなければ)
「あ,あの弘樹君,この決闘だけど⋯⋯」
その時だった。
「ワァーーー」
弘樹の次で決める発言をうけ,見ていた冒険者のテンションは今日一番で上がっていた。
「ついに決着か」
「俺はやっぱりガルムさんが勝つと思うな」
「いや,あたいはあの坊やに一票」
「負けたやつおごりな」
周りにはこの決闘のことを聞いた冒険者で埋め尽くされいた。どこかから聞いてたくさんの冒険者がやってきたのだろう。そして不幸なことにもガルムの叫びはその声によって遮られた。
その中心で俺が言う。
「それでは行きます」
瞬間俺が文字どうり消える。人間形態の戦い方を完全につかんだ俺は本来の持つ力を完全に発揮できるようになっていた。そして文字どうり全力の弘樹を捕らえられる人などこの場にいるわけもない。そして気づいた時には俺はもともとガルムがいた場所でガルムを抱えて立っていた。
「ウワァァァ」
周りの冒険者が一気に歓声を上げる。そして審判が信じられないと言った表情で
「た,ただ今の決闘,ヒロキの勝ち」
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