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第一章 弘樹,転生す
第十四話 蜂との決戦をした件
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さて,と。どうしましょう。
俺は迫りくる蜂殺しながらため息をつくのだった。
俺が魔法を放ち蜂をまとめて倒す。だが蜂の群れは犠牲など気にせず突っ込んでくる。
これはきりがないな。千匹なんて数,どうやっても一気には倒せないし,かといって耐久していてもそれこそ蜂の思うつぼだぞ。
だから,俺は全力で駆逐しないといけない。MPの消費は気になるがここは一気に肩をつけに行くべきか。
そして俺は大規模な魔法の準備をする。
「これでどうだ,獄炎」
この魔法は俺の周囲を燃やし尽くす魔法。周りの地面はえぐれそこにいた生物の生存など不可能に思えた。
これは決まっただろ。これを食らって生きているようならあの蜂の一匹ずつのステータスは相当高いことになってしまうぞ。
だが,俺の期待を裏切るように,俺の魔法が消えるとそこには数は減ったものの,かなりの数の蜂がいた。
まじかよ。これはこの階層のエリアボスクラスなのか。ん? なんだ。
俺は横から急に大型の魔物の気配を感じ,その場から飛びのく。いそいでもともと俺がいた場所を見ると,横一直線に土がえぐれていた。
「報告します。新たな魔物の気配です。サイズは中型。おそらくタイプは虫。蜂に襲われた瞬間に現れたことを考えると,先ほどの蜂の上位個体の可能性が高いです」
まじかよ。蜂マシマシかよ。これはまじでやばいかもな。それに上位個体だと。なら兵隊バチとでもいうのかな。
「さらに報告です。その数,十」
じゅ,10? それは本当か。だとしたらかなりマズイ展開になっているな。主導権が握られていやがる。
そして俺もその蜂の上位個体を目視できるようになった。目は赤く,その大きさはゆうに三メートルを超え,六本の足の一つには大きな槍を持っていた。それは文字どうり兵隊バチであった。
おう。これはほんとに兵隊バチやな。それに魔物が槍を持つことなんてあるんだな。初めて見た。
「マスター,新しいものにはしゃが内でください。それと魔物の中には武器を持った物も確認されているため,それほど珍しいことではありません。ただ,もちろん大幅に強くなっていますので注意してください」
すまん。すまん。つい,な。それにしてもこれは厄介だな。俺は今は武器を持てないから部気持ちとは相性が悪い。
前に剣使いが槍使いに勝つには三倍の実力がいるって聞いたことがある。だったら武器を持たない俺はどうなんだよ。
だけど,俺はみすみす負けはしないぜ。”先手必勝”だ。一気に仕掛ける。
俺は獄炎を発射する。だがその攻撃でも兵隊蜂はおろか普通の蜂も倒せていなかった。
ん? これはおかしいな。何かが起きているはずだ。俺の攻撃で一体も死なないなんておかしい。それに普通の蜂は少しだけど減っている気がする。
だが蜂たちは俺の悠長に考えさせる時間はくれないようだ。数の力でどんどん攻撃をしてくる。
「灼熱の息吹」
「獄炎」
「獄炎」
「灼熱の息吹」
「獄炎」
俺は応戦するがこれといった効果は見えない。
ちっ。こいつらは厄介だな。へらねぇ。だけど絶対に何かトリックがあるはずだ。
「マスター,報告します。敵個体数減少するばかりか増加しています。中型の個体に関しては最初から5匹ほど増えています」
増加,だと。それは,まず過ぎるな。
なぜだ。なぜ増加している。雑魚はともかく中型のがこれ以上増えたらやられるかもしれん。理由を探らなくては。どんどん新しい個体が生まれている? いやないな。もしくは無限に援護が来るようになっているのか。あるいは,あの蜂は幻覚か
おい鑑定,一つ調べてくれ。俺の経験値は増えているか。
「増えています」
じゃあ,幻覚の類ではないのか。だとしたら⋯⋯。だったら調べてみよう。あいつらのステータスを鑑定してくれ
「分かりました。中型の個体は既に鑑定済みです。特におかしな点は見つけられませんでしたが,表示します」
クオータービー
Lv432
HP10000
MP300
攻撃力1000
物理防御力400
魔法防御力400
素早さ1800
スキル 槍術
下位個体統率
高速移動
なるほど,蜂の上位個体だからクオータービーってわけか。分かり易いぜ。確かに違和感はないな。問題は小型の方か。小型のも頼む。
「分かりました。鑑定成功しました。表示します」
ビー^
Lv50
HP200
MP5
攻撃力30
物理防御力11
魔法防御力10
素早さ100
スキル 増殖
なるほど。だがこの謎は解けた。おそらくこの増殖スキルに秘密があるな。
鑑定さん,増殖スキルを鑑定できるか。多分それに秘密があるはずだ。
「可能です。増殖スキル鑑定,成功。鑑定結果表示します」
増殖
所持者が死亡した際,確率で自分と同個体または上位個体を発生させる。レベルは受け継がれる。
なるほどこのスキルか。これがあったから無限に増えていたわけだな。それにしても厄介なスキルだな。確立がどのくらいかは分からないが上位個体を発生させられるのか。どうにかしてこのスキルを無効化していかないと勝てない。だが,全く分からない時よりは全然いい!
「マスター,さらに報告します。さきほどから観察していた結果,どこかから援軍が来ていることが判明しました」
やはり。つまりクオータービーは増殖スキルで,ビーは援軍と増殖で増えていたというわけだな。これは倒しても減らないわけだわ。むしろ倒されると強くなっていくのか。
「判明しましたね」
ああ。ただ問題は分かったところで対処ができないところなんだよな。とりあえず,増えないクオータービーを先に倒さないとやばそうだから集中攻撃をしよう。
「そうですね。その案が一番妥当かと思います」
作戦は決まったけど実行するのは本当に大変だな。さすが,この階層で生き残っている種族だと思うよ。だけど俺も負けられない。なぜなら生きたいからだ。この魔物を倒して俺はまた一つ強くなる。
◇
「これで八体目」
あれから数々の攻防を繰り広げてきたが,クオータービーは残り七体まで減った。ビーは狙わないようにしているのだが攻撃をすれば当たってしまう。あいつらのHPはあほみたいに少ないから一発俺の魔法が当たれば死んでしまう。幸いあいつらのクオータービーになれる確率はそんなに高くない。1%あればいいほうだ。そしてクオータービーの数には限りがある。殺せばへる。
だがビーは死んだときかなり高い確率でビーになる。これは厄介だ。
それに実際一体一体の強さはあまりない。あまりないと言っても油断するといっきにたくさんのビーから攻撃を受け馬鹿にならないダメージを食らうのだが。やはり数は力だな。
「報告します。援軍が来ていた方位から敵性モンスターの巣の場所が割り出せました」
巣? 巣なんてあったのか。
「はい。援軍が来ていることからどこかに巣がある可能性が高いので調べました」
そうか。それは思いつかなかった。だが言われてみれば当たり前か。ここで生きていく以上どこかに基地を作りたいと思うのは必然だ。だったらそこから逃げるようにして戦えばいつかは援軍もなくなるのか。
「いえ,近づくことをおすすめします。おそらく,このビーは今も生成されています。これを断つにはやつらの巣を叩き,ビーの生成を行っている物を倒すしかありません」
今も生成されているのか。なるほど,これは気づけなかったらあぶなかったな。そうと決まったらこの蜂の猛攻を防ぎながら少しずつ巣に近づいていくとしよう。
「巣はここから南西です」
こっちだな。分かった。
そして俺は巣にむかって全力で進みだす。もちろん蜂の相手もしているからそこまでの速度は出ないがそれでも俺が素に到達するのは時間の問題だ。だが少し進んだところで蜂の数が一気に増えた。
まさか,あいつらは俺の狙いが分かったのか。そしてそれを阻止しようとしているのかも知れないな。
「そうかも知れません。大変です,弘樹。大型の兵隊バチが新たに十体ほどやってきました」
分かった。じゃあまずは今いる物を片付けなくちゃな。いったんここは本気で応戦するか。それに巣の場所が分かったってことはもうビーに気を使う必要はないのか。じゃあ,ここら一体吹き飛ばしてしまおう。幸い俺のMPはまだまだあるしな。
「すべてを片付けるということであれば火力が足りないかと」
じゃあ,どうすればいいんだよ。
「炎魔力操作を使って新しい魔法を作ればいいかと」
炎魔力操作か。だがそれは俺には難易度が高くてできそうにないが,大丈夫なのか?
「問題ありません。なぜならマスターが成長しているからです」
ほんとか。まあ,鑑定が言うなら俺はやってみるができなくても文句は言うなよ。
「はい,もちろんです。だって弘樹がミスすることなんてないですから」
おいおい。買いかぶりすぎたぞ。だが俺は期待に応えないとな。じゃあ,さっそく開発するか。
「弘樹,開発中の戦闘は私が請け負いましょうか?」
ん? どういうことだ。もしかして鑑定が戦うのか?
「いえ,違います。私が弘樹の体を乗っ取って戦うのです」
乗っ取るって,ちょっと怖いな。それにそんなことができるのか?
「はい,もちろんです」
じゃあ,やってみるか。その間に俺が新しい魔法を開発すればいいんだな。
「そういうことです」
じゃあ,それ,やろう。俺の体を使って変なことしちゃだめだよ。
「もう,何言っているんですか」
そして俺は視界がなくなった。
なるほど,身体を乗っ取られるっていうのはこういうことか。意識だけある患児だな。じゃあ,さっそく開発するか。
だが俺が炎魔力操作を起動しようとしても何も起きない。
ん,起動できない。そういえば,前鑑定のやつ,炎魔力操作はある一定の魔法を発動するのではなく,炎の魔力を操りやすくするものです。って言ってたな。
つまり,これは新しい魔法を作るというより炎の魔力を操作して自分の思い描いた事象を引き起こすって感じか。具体的には,技とかじゃなくて単純に炎を放つみたいなことができるのか。
そう思うと頭の中でイメージを膨らます。
それなら,まずは炎の魔力を,今回は全て自分の魔力を使っていいか。そして練り上げる。起こす事象は周囲の爆発による破壊かな。おお,これは込められる魔力に限界がないぞ。つまり,これは火力の上限がない!
その時俺の意識に響いてくる声があった。
「体の主導権を元に戻しますか」
ああ,頼む。なんか行ける気がしてきた。そっちはどうだ。
「全く問題ないですね。蜂を完全に封じています」
鑑定さんにも任されたしここは男を見せるとき。やるしかない。
そして俺の視界がいつものに戻る。
よし。早速行くか。まずは魔力操作で炎の魔力を練り,周囲を爆発。威力は最大で。クオータービーが新しく生まれたところでそいつすら燃やし尽くせる火力で。
「発動,オリジナル魔法,爆炎陣フレイム・ゾーン」
ーーードゴーーーーーン。
それはまさに業火。範囲のすべてを燃やし尽くす尽きぬ炎。俺の放ったまわりの木々をを焼き払った。そして魔法は威力を失うこともなく森をを焼き払う。当然,そこにいた魔物を全て燃やし尽くしクレーターを作った。
◇
「こんなになるんだな」
そう呟きながら,俺はもともと森であった荒野に一人,立って(四足で)いた。
「毎度毎度思うんですが,なぜそんなに魔法に火力を込めるんですか」
いやだってさ,あんなに魔物がいたら焼ききれなかったとき,怖いじゃん。あ,そうだ。ビーの発生源である巣はどうなったの。多分今なら軽く叩けるよ。今滅ぼしちゃおう。
「消滅しました」
「え?」
「だから消滅しました」
消滅って,もしかしてそんなものなかったとかってこと?
「いえ,先ほどのマスターの魔法で消え去りました。ちょうど左の方に見えるくぼみが巣であったと思います」
あ,マジすか。
俺が少し目をやるとそこには本当にくぼみがあった。もともと深い穴だったからクレーターができても残ったのだろう。
「まじです。ただ,これで今日の,いえこれからの拠点にはいい場所ができましたね」
なぜだろう。鑑定さんから圧を感じる。妖精にもなっていないのにおかしいな。
「なんか今変なことを思ってませんか?」
いや,そんなことはないよー。ひゅひゅっひゅっひゅ。
「弘樹,口笛更けてません。それで話を戻します。ここはなかなかいい場所でしょう。このダンジョンに残っている森とはかなり距離が離れていますし奇襲は防げるでしょう」
あ,良かった。まだ森残ってたんだ。俺の攻撃でなくなったかと思ったよ。
「当たり前です。ダンジョンがどれくらいの広さを誇っていると思っているんですか。それに,よく目を凝らせば遠くに木が見えますよ」
俺が目を凝らすときのてっぺんが見える。
「何はともあれ,拠点が見つかって良かったですね。はっ。もしかしてこれを狙ってあのような大規模魔法を使ったのですか。さすがです」
鑑定さんの俺を見る目が変わった気がする。
いや違うから。これから野営の準備するから周り見はっておいて。
そういうと俺は歩き出した。
「分かりました」
そして俺たちは野営の準備をするのだった。
あれ,でも野営って何を準備すればいいんだろう⋯⋯。
俺は迫りくる蜂殺しながらため息をつくのだった。
俺が魔法を放ち蜂をまとめて倒す。だが蜂の群れは犠牲など気にせず突っ込んでくる。
これはきりがないな。千匹なんて数,どうやっても一気には倒せないし,かといって耐久していてもそれこそ蜂の思うつぼだぞ。
だから,俺は全力で駆逐しないといけない。MPの消費は気になるがここは一気に肩をつけに行くべきか。
そして俺は大規模な魔法の準備をする。
「これでどうだ,獄炎」
この魔法は俺の周囲を燃やし尽くす魔法。周りの地面はえぐれそこにいた生物の生存など不可能に思えた。
これは決まっただろ。これを食らって生きているようならあの蜂の一匹ずつのステータスは相当高いことになってしまうぞ。
だが,俺の期待を裏切るように,俺の魔法が消えるとそこには数は減ったものの,かなりの数の蜂がいた。
まじかよ。これはこの階層のエリアボスクラスなのか。ん? なんだ。
俺は横から急に大型の魔物の気配を感じ,その場から飛びのく。いそいでもともと俺がいた場所を見ると,横一直線に土がえぐれていた。
「報告します。新たな魔物の気配です。サイズは中型。おそらくタイプは虫。蜂に襲われた瞬間に現れたことを考えると,先ほどの蜂の上位個体の可能性が高いです」
まじかよ。蜂マシマシかよ。これはまじでやばいかもな。それに上位個体だと。なら兵隊バチとでもいうのかな。
「さらに報告です。その数,十」
じゅ,10? それは本当か。だとしたらかなりマズイ展開になっているな。主導権が握られていやがる。
そして俺もその蜂の上位個体を目視できるようになった。目は赤く,その大きさはゆうに三メートルを超え,六本の足の一つには大きな槍を持っていた。それは文字どうり兵隊バチであった。
おう。これはほんとに兵隊バチやな。それに魔物が槍を持つことなんてあるんだな。初めて見た。
「マスター,新しいものにはしゃが内でください。それと魔物の中には武器を持った物も確認されているため,それほど珍しいことではありません。ただ,もちろん大幅に強くなっていますので注意してください」
すまん。すまん。つい,な。それにしてもこれは厄介だな。俺は今は武器を持てないから部気持ちとは相性が悪い。
前に剣使いが槍使いに勝つには三倍の実力がいるって聞いたことがある。だったら武器を持たない俺はどうなんだよ。
だけど,俺はみすみす負けはしないぜ。”先手必勝”だ。一気に仕掛ける。
俺は獄炎を発射する。だがその攻撃でも兵隊蜂はおろか普通の蜂も倒せていなかった。
ん? これはおかしいな。何かが起きているはずだ。俺の攻撃で一体も死なないなんておかしい。それに普通の蜂は少しだけど減っている気がする。
だが蜂たちは俺の悠長に考えさせる時間はくれないようだ。数の力でどんどん攻撃をしてくる。
「灼熱の息吹」
「獄炎」
「獄炎」
「灼熱の息吹」
「獄炎」
俺は応戦するがこれといった効果は見えない。
ちっ。こいつらは厄介だな。へらねぇ。だけど絶対に何かトリックがあるはずだ。
「マスター,報告します。敵個体数減少するばかりか増加しています。中型の個体に関しては最初から5匹ほど増えています」
増加,だと。それは,まず過ぎるな。
なぜだ。なぜ増加している。雑魚はともかく中型のがこれ以上増えたらやられるかもしれん。理由を探らなくては。どんどん新しい個体が生まれている? いやないな。もしくは無限に援護が来るようになっているのか。あるいは,あの蜂は幻覚か
おい鑑定,一つ調べてくれ。俺の経験値は増えているか。
「増えています」
じゃあ,幻覚の類ではないのか。だとしたら⋯⋯。だったら調べてみよう。あいつらのステータスを鑑定してくれ
「分かりました。中型の個体は既に鑑定済みです。特におかしな点は見つけられませんでしたが,表示します」
クオータービー
Lv432
HP10000
MP300
攻撃力1000
物理防御力400
魔法防御力400
素早さ1800
スキル 槍術
下位個体統率
高速移動
なるほど,蜂の上位個体だからクオータービーってわけか。分かり易いぜ。確かに違和感はないな。問題は小型の方か。小型のも頼む。
「分かりました。鑑定成功しました。表示します」
ビー^
Lv50
HP200
MP5
攻撃力30
物理防御力11
魔法防御力10
素早さ100
スキル 増殖
なるほど。だがこの謎は解けた。おそらくこの増殖スキルに秘密があるな。
鑑定さん,増殖スキルを鑑定できるか。多分それに秘密があるはずだ。
「可能です。増殖スキル鑑定,成功。鑑定結果表示します」
増殖
所持者が死亡した際,確率で自分と同個体または上位個体を発生させる。レベルは受け継がれる。
なるほどこのスキルか。これがあったから無限に増えていたわけだな。それにしても厄介なスキルだな。確立がどのくらいかは分からないが上位個体を発生させられるのか。どうにかしてこのスキルを無効化していかないと勝てない。だが,全く分からない時よりは全然いい!
「マスター,さらに報告します。さきほどから観察していた結果,どこかから援軍が来ていることが判明しました」
やはり。つまりクオータービーは増殖スキルで,ビーは援軍と増殖で増えていたというわけだな。これは倒しても減らないわけだわ。むしろ倒されると強くなっていくのか。
「判明しましたね」
ああ。ただ問題は分かったところで対処ができないところなんだよな。とりあえず,増えないクオータービーを先に倒さないとやばそうだから集中攻撃をしよう。
「そうですね。その案が一番妥当かと思います」
作戦は決まったけど実行するのは本当に大変だな。さすが,この階層で生き残っている種族だと思うよ。だけど俺も負けられない。なぜなら生きたいからだ。この魔物を倒して俺はまた一つ強くなる。
◇
「これで八体目」
あれから数々の攻防を繰り広げてきたが,クオータービーは残り七体まで減った。ビーは狙わないようにしているのだが攻撃をすれば当たってしまう。あいつらのHPはあほみたいに少ないから一発俺の魔法が当たれば死んでしまう。幸いあいつらのクオータービーになれる確率はそんなに高くない。1%あればいいほうだ。そしてクオータービーの数には限りがある。殺せばへる。
だがビーは死んだときかなり高い確率でビーになる。これは厄介だ。
それに実際一体一体の強さはあまりない。あまりないと言っても油断するといっきにたくさんのビーから攻撃を受け馬鹿にならないダメージを食らうのだが。やはり数は力だな。
「報告します。援軍が来ていた方位から敵性モンスターの巣の場所が割り出せました」
巣? 巣なんてあったのか。
「はい。援軍が来ていることからどこかに巣がある可能性が高いので調べました」
そうか。それは思いつかなかった。だが言われてみれば当たり前か。ここで生きていく以上どこかに基地を作りたいと思うのは必然だ。だったらそこから逃げるようにして戦えばいつかは援軍もなくなるのか。
「いえ,近づくことをおすすめします。おそらく,このビーは今も生成されています。これを断つにはやつらの巣を叩き,ビーの生成を行っている物を倒すしかありません」
今も生成されているのか。なるほど,これは気づけなかったらあぶなかったな。そうと決まったらこの蜂の猛攻を防ぎながら少しずつ巣に近づいていくとしよう。
「巣はここから南西です」
こっちだな。分かった。
そして俺は巣にむかって全力で進みだす。もちろん蜂の相手もしているからそこまでの速度は出ないがそれでも俺が素に到達するのは時間の問題だ。だが少し進んだところで蜂の数が一気に増えた。
まさか,あいつらは俺の狙いが分かったのか。そしてそれを阻止しようとしているのかも知れないな。
「そうかも知れません。大変です,弘樹。大型の兵隊バチが新たに十体ほどやってきました」
分かった。じゃあまずは今いる物を片付けなくちゃな。いったんここは本気で応戦するか。それに巣の場所が分かったってことはもうビーに気を使う必要はないのか。じゃあ,ここら一体吹き飛ばしてしまおう。幸い俺のMPはまだまだあるしな。
「すべてを片付けるということであれば火力が足りないかと」
じゃあ,どうすればいいんだよ。
「炎魔力操作を使って新しい魔法を作ればいいかと」
炎魔力操作か。だがそれは俺には難易度が高くてできそうにないが,大丈夫なのか?
「問題ありません。なぜならマスターが成長しているからです」
ほんとか。まあ,鑑定が言うなら俺はやってみるができなくても文句は言うなよ。
「はい,もちろんです。だって弘樹がミスすることなんてないですから」
おいおい。買いかぶりすぎたぞ。だが俺は期待に応えないとな。じゃあ,さっそく開発するか。
「弘樹,開発中の戦闘は私が請け負いましょうか?」
ん? どういうことだ。もしかして鑑定が戦うのか?
「いえ,違います。私が弘樹の体を乗っ取って戦うのです」
乗っ取るって,ちょっと怖いな。それにそんなことができるのか?
「はい,もちろんです」
じゃあ,やってみるか。その間に俺が新しい魔法を開発すればいいんだな。
「そういうことです」
じゃあ,それ,やろう。俺の体を使って変なことしちゃだめだよ。
「もう,何言っているんですか」
そして俺は視界がなくなった。
なるほど,身体を乗っ取られるっていうのはこういうことか。意識だけある患児だな。じゃあ,さっそく開発するか。
だが俺が炎魔力操作を起動しようとしても何も起きない。
ん,起動できない。そういえば,前鑑定のやつ,炎魔力操作はある一定の魔法を発動するのではなく,炎の魔力を操りやすくするものです。って言ってたな。
つまり,これは新しい魔法を作るというより炎の魔力を操作して自分の思い描いた事象を引き起こすって感じか。具体的には,技とかじゃなくて単純に炎を放つみたいなことができるのか。
そう思うと頭の中でイメージを膨らます。
それなら,まずは炎の魔力を,今回は全て自分の魔力を使っていいか。そして練り上げる。起こす事象は周囲の爆発による破壊かな。おお,これは込められる魔力に限界がないぞ。つまり,これは火力の上限がない!
その時俺の意識に響いてくる声があった。
「体の主導権を元に戻しますか」
ああ,頼む。なんか行ける気がしてきた。そっちはどうだ。
「全く問題ないですね。蜂を完全に封じています」
鑑定さんにも任されたしここは男を見せるとき。やるしかない。
そして俺の視界がいつものに戻る。
よし。早速行くか。まずは魔力操作で炎の魔力を練り,周囲を爆発。威力は最大で。クオータービーが新しく生まれたところでそいつすら燃やし尽くせる火力で。
「発動,オリジナル魔法,爆炎陣フレイム・ゾーン」
ーーードゴーーーーーン。
それはまさに業火。範囲のすべてを燃やし尽くす尽きぬ炎。俺の放ったまわりの木々をを焼き払った。そして魔法は威力を失うこともなく森をを焼き払う。当然,そこにいた魔物を全て燃やし尽くしクレーターを作った。
◇
「こんなになるんだな」
そう呟きながら,俺はもともと森であった荒野に一人,立って(四足で)いた。
「毎度毎度思うんですが,なぜそんなに魔法に火力を込めるんですか」
いやだってさ,あんなに魔物がいたら焼ききれなかったとき,怖いじゃん。あ,そうだ。ビーの発生源である巣はどうなったの。多分今なら軽く叩けるよ。今滅ぼしちゃおう。
「消滅しました」
「え?」
「だから消滅しました」
消滅って,もしかしてそんなものなかったとかってこと?
「いえ,先ほどのマスターの魔法で消え去りました。ちょうど左の方に見えるくぼみが巣であったと思います」
あ,マジすか。
俺が少し目をやるとそこには本当にくぼみがあった。もともと深い穴だったからクレーターができても残ったのだろう。
「まじです。ただ,これで今日の,いえこれからの拠点にはいい場所ができましたね」
なぜだろう。鑑定さんから圧を感じる。妖精にもなっていないのにおかしいな。
「なんか今変なことを思ってませんか?」
いや,そんなことはないよー。ひゅひゅっひゅっひゅ。
「弘樹,口笛更けてません。それで話を戻します。ここはなかなかいい場所でしょう。このダンジョンに残っている森とはかなり距離が離れていますし奇襲は防げるでしょう」
あ,良かった。まだ森残ってたんだ。俺の攻撃でなくなったかと思ったよ。
「当たり前です。ダンジョンがどれくらいの広さを誇っていると思っているんですか。それに,よく目を凝らせば遠くに木が見えますよ」
俺が目を凝らすときのてっぺんが見える。
「何はともあれ,拠点が見つかって良かったですね。はっ。もしかしてこれを狙ってあのような大規模魔法を使ったのですか。さすがです」
鑑定さんの俺を見る目が変わった気がする。
いや違うから。これから野営の準備するから周り見はっておいて。
そういうと俺は歩き出した。
「分かりました」
そして俺たちは野営の準備をするのだった。
あれ,でも野営って何を準備すればいいんだろう⋯⋯。
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