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二章
061 ゴールデンリッチ
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ラキちゃんにマップを作成してもらったので、まずはボス部屋へ通じるルートのある可能性が高いエリアから優先して、二十四層を探索していく。
ただ、ボス部屋へ通じるルートは今俺達がいる場所からではちょっとばかり望みが薄いので、転移門を見つけるために行き止まりもキッチリと確認しながら進んでいる。
俺は先程から新しい剣を使っているが、とりあえずこれまでのように扱う事が出来ている……と思う。
折角この剣は日本刀のように両手持ちを前提とした柄の寸法なので、両手持ちによる気合の籠った一撃も打てるようになりたい。
そう思い、今は盾を仕舞ってチャンチャンバラバラと振り回している。
剣術の上達は自分の才能では一朝一夕にはいかないのは分かっているので、少しずつ慣れていこうと思う。
久しぶりにギルドでマリウス先生の講習を受けるのも良いかもしれない。
暫く進むと、とある行き止まりで久しぶりの宝箱を発見する。
「……宝箱発見!」
「よし! 周囲警戒だ。――ラキちゃん宝箱の確認お願い」
「はーい」
宝箱に入っていたのは鎧下の防御ジャケットだった。胸の所に水色の宝石が付いている。
軽装鎧に適した作りのようで、軽装鎧で防御が薄くなる部分に魔物の革と思われる素材で補強が施されている。
素人目に見ても結構良い品だと思う。
「鎧下だね。効果は胸のとこの宝石を摘まんで魔力を流せば、水魔法が発動して汗などで湿った中の水気を除去してくれる。――生活魔法が使えない冒険者に人気のやつだな。よく露店で見かけるよ」
「はいはーい欲しい! これ人気でさ、店に並んでもすぐ売り切れちゃってなかなか買えないんだよー」
「……ちょっと待て。俺も欲しいぞ!」
ハンスに続いてミステルも名乗り上げてきた。
今回のパーティで生活魔法が使えないのはハンスとミステルの二人だけだったので、まあこれは仕方がない。
「んじゃ二人でどっちの物にするか決めてくれ」
「おう! 恨みっこなしだかんな!」
「……無論だ!」
結果、じゃんけん勝負で買ったのはミステルだった。
「あーーーっ!?」
「……よしっ! ――これでこの夏はサラサラだ……フフフ」
がっくりと項垂れるハンスの肩を叩き、 「今度お店で見かけたら押さえておくから」 と慰めてやる。
俺達は移動を再開し、定期的にラキちゃんにマップを確認してもらいつつ、少しずつマップを埋めて行く。
ある程度進んでみて判ったのは、やはり今の場所からでは転移門を介さない限りボス部屋の座標までは行けないという事だった。
それからは優先的に転移門を探すために行き止まりを捜索すると、再び宝箱を発見した。
中身は質の良さそうな魔導石が三個だった。
「それなりの魔導石が三個か。収入としてはかなり良いんだけどなぁ……」
「最近はどうしても装備やアクセサリーの方に期待しちゃうから、ちょっと残念な気持ちになるな」
「そうなんですよね」
中層からは長い期間愛用できる装備が出るようになるので、俺達のような中層冒険者に成り立ては、まず装備を整える事に躍起になる。
中層冒険者の先輩であるハンス達もまだ納得のいく段階にまで装備が整ってはいないようなので、今はまだ手元に残るお金よりも装備を整える事を優先しているようだ。
どうしても店での購入の方が割高になるってのもあるし、防具は仕立て直しにもお金が掛かってしまうので、誰しもが可能なら宝箱から手に入れて自力で揃えてしまいたいと思っている。
ただ、お店や露店にもたまーに掘り出し物やお勧めもあったりするので、その辺を巡るのもそれはそれで有意義だし楽しかったりする。
いくつもの行き止まりを探索するが、なかなか転移門を見つける事ができない。
その代わりに、また宝箱を見つけてしまった。なんか今日は宝箱とご縁があるので、その点は嬉しい限りだ。
俺達は周囲を警戒し、ラキちゃんに開けてもらう。
「えっ、水着?」
ラキちゃんの言葉にハンス達は一斉に宝箱に集中してしまう。おい、周囲の警戒しろ……。
俺も宝箱の中身をちらりと覗いてみると、そこにはドラクエⅢの女戦士さんが着用しているような……。
「ビキニアーマーだっ!」
ハンスの言葉を機に三人が一斉にリンメイの方を向いたので、つられて俺もリンメイの方を見てしまった。
「……なっ、……あたいはぜってー着ねぇからなっ!」
超嫌そうな顔をしてリンメイは拒絶していた。
リンメイというか獣人は体毛そのものが魔力を通せば並の革よりも強靭な防御力を見せることもあって、結構薄着な人が多い。
リンメイも草摺(腰鎧)の下は革製のショートパンツで腿を出していたり、鎧の下はハイネックノースリーブな防御ジャケットを着て二の腕が出ていたりする。
それでもやっぱり嫌か。まあそうだよね……。
「まあ売るにしても、このパーティで宝箱から取り出すのはリンメイしかいないだろ」
「……ッ! しょーがねーなー……」
リンメイは一瞬だけラキちゃんをちらりと見るも、諦めたように宝箱から取り出してくれた。
両手で摘まむように持ち、とっても微妙な顔をしている。
丈夫そうな水着に肩甲(肩鎧)と草摺(腰鎧)が付いただけにしか見えないそれは、まるで昆虫の甲羅のように美しい輝きをみせており、所々に宝石もちりばめられて非常に美しいデザインをしている。
「……んー、まぁ需要はある所にはあるから、売れば結構な額になると思う。一応だが効果は、装着時に薄着であればあるほど防御力が増し、他者の視線が集まれば集まるだけ身体強化にプラス補正がかかる」
「おお、凄いじゃないか」
「……着ねーかんな」
ジト目で念を押すようにそう言うと、 リンメイは 「まったくもう」 と呟きながらそそくさと仕舞ってしまった。
ふと時計を確認すると、そろそろ夕方に差し掛かっている。
一旦降りてきた階段まで戻って今日はこれで終了にしようかと話し合った結果、もう一か所この先にある行き止まりを確認してから戻ろうという事になった。
今日はこれで終了かなと思いつつ行き止まりに向かったのだが……、なんとそこには転移門があった。
「……あっ、ボス部屋まで繋がってます」
「「「やった!」」」
ラキちゃんの言葉に、思わず皆で歓声をあげてしまう。
いつものように転移門を抜けた先でラキちゃんにマップの確認をしてもらうと、どうやらここはボス部屋までかなり近い場所だった。
もう行き止まりを探索する必要は無いので、俺達は真っ直ぐにボス部屋前まで向かう事にする。
ボス部屋前に到着する頃には、既に時間は夜となっていた。
万全を期すなら今日の突入は止めてここでキャンプしたいと皆に伝えると、皆もそのつもりだったようで快く了承してくれた。
ボス攻略の打ち合わせも十分にしておきたかったし、やはり今日一日の疲労は少しでも回復してボス戦に望みたかったので非常に助かる。
夕食を終え、今は皆で魔動焜炉の火を囲んでお茶を飲みながら、まったりとしている所だ。
「そういえばこの階層のボスってどんな奴なの?」
二十五層までの攻略情報はリンメイが調べておいてくれると言っていたので、今回は任せっきりにしてしまっていた。
「この階層のボスはゴールデンリッチっていう魔法士のアンデッドなんだけど、なんでも金ぴかのガイコツらしいぜ」
「へぇー……」
なにそのふざけた名前……。
「基本的に三種類の土属性魔法をランダムで撃っては地面に潜るみたい」
「金だけに土属性魔法の攻撃が得意か……。来るときに見かけたアンデッドの魔法士を強くした感じかな?」
「なんかアレとは比べものにならないくらい強くて厄介らしいぜ」
ハンスが会話に加わり教えてくれる。
ボスなんだからかなり強いんだろうが、比べものにならないのか……。
「まず、ゴールデンロードって技はソイツが杖の石突を地面に打ち付けると、何本もの金色の太い線が扇状に伸びると同時にそこから金色のトゲが突き出してくる。次に、ゴールデンシャワーって技は杖をくるんと回転させると、金貨みたいな礫を沢山打ち出してくる。これは石弾の金貨版だな。三つ目のゴールデンボンバーって技は、杖頭を地面に叩き付けると、狙った場所が金色の丸い床面になって、そこから毬栗のように金色のトゲが大量に突き出してくる」
「なるほど、動作で何の攻撃が来るのか分かるのはいいね。――しかしなんつー技名だ。一体どこの冒険者だよ、そんな呼び方しだした奴は」
「えっ? 名付けたの冒険者じゃないぞ。なんかソイツ、自分で技出す時に名乗るらしいぜ」
うは、自己申告の技名だったのかよ! てか喋るのかよ!
「マジか……。また随分と人間臭いボスなんだな」
「ですね。――折角だし、今から明日の攻略手順でも決めておきませんか?」
「そうだな」
トーイが明日のボス攻略の打ち合わせをしようと提案してくれたので、それぞれが仕入れてきた情報を出し合い攻略手順を決める事にした。
話し合った末に決めた攻略方法は結構チームワークが必要な動きをしなくてはいけなかったため、寝る前に全員で何度か動きの練習をしてみることにした。
その様子はまるで学芸会の練習のようだったので思わず子供の頃を思い出してしまい、自然と笑みがこぼれてしまった。
「はよーっす」 「おはようございます」 「……おはよう」
「おう、おはよう」 「おはよ」 「おはようございまーす」
魔動焜炉を囲んでいた俺達は、テントから出てきたハンス達と挨拶を交わす。
「疲れは取れたか?」
「おうばっちり!」
俺達が先に起きていたのは、昨日は前半の見張りを譲ってもらったので、今回は俺達が後半の見張りを受け持ったから。
夜通しの見張りは安全そのもので、他の冒険者パーティがこのエリアに訪れることも無く朝を迎えた。
その間、折角だったので少しだけリンメイにロングソードの扱い方の指導をしてもらい、おかしな箇所などを修正してもらったりもしていた。
俺達が剣を振っている間、ありがたい事にラキちゃんはシチューを仕込んでくれていた。
おかげで今朝は辺り一帯に良い匂いが立ち込めている。
「なんか良い匂いがしますね」
「ラキちゃんがシチュー作ってくれたから、お前ら顔洗ったら食べようぜ」
「……やった! すぐ行ってくる」
それから皆で朝食を取り、さっさとキャンプは片づけてしまう。
しかしすぐにはボス部屋へ突入せず、もう一度ボス攻略の動きを練習しておく事にした。
何度か練習して、なんとなく良い感じになったので、いよいよボス戦へ挑む事に。
「よし、んじゃそろそろ行くか。皆よろしく!」
「「「おう!」」」
ただ、ボス部屋へ通じるルートは今俺達がいる場所からではちょっとばかり望みが薄いので、転移門を見つけるために行き止まりもキッチリと確認しながら進んでいる。
俺は先程から新しい剣を使っているが、とりあえずこれまでのように扱う事が出来ている……と思う。
折角この剣は日本刀のように両手持ちを前提とした柄の寸法なので、両手持ちによる気合の籠った一撃も打てるようになりたい。
そう思い、今は盾を仕舞ってチャンチャンバラバラと振り回している。
剣術の上達は自分の才能では一朝一夕にはいかないのは分かっているので、少しずつ慣れていこうと思う。
久しぶりにギルドでマリウス先生の講習を受けるのも良いかもしれない。
暫く進むと、とある行き止まりで久しぶりの宝箱を発見する。
「……宝箱発見!」
「よし! 周囲警戒だ。――ラキちゃん宝箱の確認お願い」
「はーい」
宝箱に入っていたのは鎧下の防御ジャケットだった。胸の所に水色の宝石が付いている。
軽装鎧に適した作りのようで、軽装鎧で防御が薄くなる部分に魔物の革と思われる素材で補強が施されている。
素人目に見ても結構良い品だと思う。
「鎧下だね。効果は胸のとこの宝石を摘まんで魔力を流せば、水魔法が発動して汗などで湿った中の水気を除去してくれる。――生活魔法が使えない冒険者に人気のやつだな。よく露店で見かけるよ」
「はいはーい欲しい! これ人気でさ、店に並んでもすぐ売り切れちゃってなかなか買えないんだよー」
「……ちょっと待て。俺も欲しいぞ!」
ハンスに続いてミステルも名乗り上げてきた。
今回のパーティで生活魔法が使えないのはハンスとミステルの二人だけだったので、まあこれは仕方がない。
「んじゃ二人でどっちの物にするか決めてくれ」
「おう! 恨みっこなしだかんな!」
「……無論だ!」
結果、じゃんけん勝負で買ったのはミステルだった。
「あーーーっ!?」
「……よしっ! ――これでこの夏はサラサラだ……フフフ」
がっくりと項垂れるハンスの肩を叩き、 「今度お店で見かけたら押さえておくから」 と慰めてやる。
俺達は移動を再開し、定期的にラキちゃんにマップを確認してもらいつつ、少しずつマップを埋めて行く。
ある程度進んでみて判ったのは、やはり今の場所からでは転移門を介さない限りボス部屋の座標までは行けないという事だった。
それからは優先的に転移門を探すために行き止まりを捜索すると、再び宝箱を発見した。
中身は質の良さそうな魔導石が三個だった。
「それなりの魔導石が三個か。収入としてはかなり良いんだけどなぁ……」
「最近はどうしても装備やアクセサリーの方に期待しちゃうから、ちょっと残念な気持ちになるな」
「そうなんですよね」
中層からは長い期間愛用できる装備が出るようになるので、俺達のような中層冒険者に成り立ては、まず装備を整える事に躍起になる。
中層冒険者の先輩であるハンス達もまだ納得のいく段階にまで装備が整ってはいないようなので、今はまだ手元に残るお金よりも装備を整える事を優先しているようだ。
どうしても店での購入の方が割高になるってのもあるし、防具は仕立て直しにもお金が掛かってしまうので、誰しもが可能なら宝箱から手に入れて自力で揃えてしまいたいと思っている。
ただ、お店や露店にもたまーに掘り出し物やお勧めもあったりするので、その辺を巡るのもそれはそれで有意義だし楽しかったりする。
いくつもの行き止まりを探索するが、なかなか転移門を見つける事ができない。
その代わりに、また宝箱を見つけてしまった。なんか今日は宝箱とご縁があるので、その点は嬉しい限りだ。
俺達は周囲を警戒し、ラキちゃんに開けてもらう。
「えっ、水着?」
ラキちゃんの言葉にハンス達は一斉に宝箱に集中してしまう。おい、周囲の警戒しろ……。
俺も宝箱の中身をちらりと覗いてみると、そこにはドラクエⅢの女戦士さんが着用しているような……。
「ビキニアーマーだっ!」
ハンスの言葉を機に三人が一斉にリンメイの方を向いたので、つられて俺もリンメイの方を見てしまった。
「……なっ、……あたいはぜってー着ねぇからなっ!」
超嫌そうな顔をしてリンメイは拒絶していた。
リンメイというか獣人は体毛そのものが魔力を通せば並の革よりも強靭な防御力を見せることもあって、結構薄着な人が多い。
リンメイも草摺(腰鎧)の下は革製のショートパンツで腿を出していたり、鎧の下はハイネックノースリーブな防御ジャケットを着て二の腕が出ていたりする。
それでもやっぱり嫌か。まあそうだよね……。
「まあ売るにしても、このパーティで宝箱から取り出すのはリンメイしかいないだろ」
「……ッ! しょーがねーなー……」
リンメイは一瞬だけラキちゃんをちらりと見るも、諦めたように宝箱から取り出してくれた。
両手で摘まむように持ち、とっても微妙な顔をしている。
丈夫そうな水着に肩甲(肩鎧)と草摺(腰鎧)が付いただけにしか見えないそれは、まるで昆虫の甲羅のように美しい輝きをみせており、所々に宝石もちりばめられて非常に美しいデザインをしている。
「……んー、まぁ需要はある所にはあるから、売れば結構な額になると思う。一応だが効果は、装着時に薄着であればあるほど防御力が増し、他者の視線が集まれば集まるだけ身体強化にプラス補正がかかる」
「おお、凄いじゃないか」
「……着ねーかんな」
ジト目で念を押すようにそう言うと、 リンメイは 「まったくもう」 と呟きながらそそくさと仕舞ってしまった。
ふと時計を確認すると、そろそろ夕方に差し掛かっている。
一旦降りてきた階段まで戻って今日はこれで終了にしようかと話し合った結果、もう一か所この先にある行き止まりを確認してから戻ろうという事になった。
今日はこれで終了かなと思いつつ行き止まりに向かったのだが……、なんとそこには転移門があった。
「……あっ、ボス部屋まで繋がってます」
「「「やった!」」」
ラキちゃんの言葉に、思わず皆で歓声をあげてしまう。
いつものように転移門を抜けた先でラキちゃんにマップの確認をしてもらうと、どうやらここはボス部屋までかなり近い場所だった。
もう行き止まりを探索する必要は無いので、俺達は真っ直ぐにボス部屋前まで向かう事にする。
ボス部屋前に到着する頃には、既に時間は夜となっていた。
万全を期すなら今日の突入は止めてここでキャンプしたいと皆に伝えると、皆もそのつもりだったようで快く了承してくれた。
ボス攻略の打ち合わせも十分にしておきたかったし、やはり今日一日の疲労は少しでも回復してボス戦に望みたかったので非常に助かる。
夕食を終え、今は皆で魔動焜炉の火を囲んでお茶を飲みながら、まったりとしている所だ。
「そういえばこの階層のボスってどんな奴なの?」
二十五層までの攻略情報はリンメイが調べておいてくれると言っていたので、今回は任せっきりにしてしまっていた。
「この階層のボスはゴールデンリッチっていう魔法士のアンデッドなんだけど、なんでも金ぴかのガイコツらしいぜ」
「へぇー……」
なにそのふざけた名前……。
「基本的に三種類の土属性魔法をランダムで撃っては地面に潜るみたい」
「金だけに土属性魔法の攻撃が得意か……。来るときに見かけたアンデッドの魔法士を強くした感じかな?」
「なんかアレとは比べものにならないくらい強くて厄介らしいぜ」
ハンスが会話に加わり教えてくれる。
ボスなんだからかなり強いんだろうが、比べものにならないのか……。
「まず、ゴールデンロードって技はソイツが杖の石突を地面に打ち付けると、何本もの金色の太い線が扇状に伸びると同時にそこから金色のトゲが突き出してくる。次に、ゴールデンシャワーって技は杖をくるんと回転させると、金貨みたいな礫を沢山打ち出してくる。これは石弾の金貨版だな。三つ目のゴールデンボンバーって技は、杖頭を地面に叩き付けると、狙った場所が金色の丸い床面になって、そこから毬栗のように金色のトゲが大量に突き出してくる」
「なるほど、動作で何の攻撃が来るのか分かるのはいいね。――しかしなんつー技名だ。一体どこの冒険者だよ、そんな呼び方しだした奴は」
「えっ? 名付けたの冒険者じゃないぞ。なんかソイツ、自分で技出す時に名乗るらしいぜ」
うは、自己申告の技名だったのかよ! てか喋るのかよ!
「マジか……。また随分と人間臭いボスなんだな」
「ですね。――折角だし、今から明日の攻略手順でも決めておきませんか?」
「そうだな」
トーイが明日のボス攻略の打ち合わせをしようと提案してくれたので、それぞれが仕入れてきた情報を出し合い攻略手順を決める事にした。
話し合った末に決めた攻略方法は結構チームワークが必要な動きをしなくてはいけなかったため、寝る前に全員で何度か動きの練習をしてみることにした。
その様子はまるで学芸会の練習のようだったので思わず子供の頃を思い出してしまい、自然と笑みがこぼれてしまった。
「はよーっす」 「おはようございます」 「……おはよう」
「おう、おはよう」 「おはよ」 「おはようございまーす」
魔動焜炉を囲んでいた俺達は、テントから出てきたハンス達と挨拶を交わす。
「疲れは取れたか?」
「おうばっちり!」
俺達が先に起きていたのは、昨日は前半の見張りを譲ってもらったので、今回は俺達が後半の見張りを受け持ったから。
夜通しの見張りは安全そのもので、他の冒険者パーティがこのエリアに訪れることも無く朝を迎えた。
その間、折角だったので少しだけリンメイにロングソードの扱い方の指導をしてもらい、おかしな箇所などを修正してもらったりもしていた。
俺達が剣を振っている間、ありがたい事にラキちゃんはシチューを仕込んでくれていた。
おかげで今朝は辺り一帯に良い匂いが立ち込めている。
「なんか良い匂いがしますね」
「ラキちゃんがシチュー作ってくれたから、お前ら顔洗ったら食べようぜ」
「……やった! すぐ行ってくる」
それから皆で朝食を取り、さっさとキャンプは片づけてしまう。
しかしすぐにはボス部屋へ突入せず、もう一度ボス攻略の動きを練習しておく事にした。
何度か練習して、なんとなく良い感じになったので、いよいよボス戦へ挑む事に。
「よし、んじゃそろそろ行くか。皆よろしく!」
「「「おう!」」」
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