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二章
037 五層フィールドエリア
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今日はラキちゃんと二人で五層のフィールドエリアに薬草採取だ。
フィールドエリアにも勿論魔物は出現するが、こんな低層なら大家さんお手製の魔物除けの香があれば滅多に寄ってくる事は無い。
寧ろ一番用心するのは例によって人間だったりする。
ダンジョン前広場の噴水の所まで来たら、キリム達がいた。リンメイも一緒だ。
とりあえずお互い挨拶を交わす。これから迷宮エリアの探索かな?
「キリム達はこれから迷宮探索?」
「はい。一緒に行くパーティがまだ来ないので、待ってるところです」
「おじさん達は薬草採取?」
「そう」 「でーす」
「と言う事で俺達は行くよ。んじゃ、気を付けてな」
「おじさん達もね」
俺達はキリム達と別れ、ダンジョンへ入って行く。転移門を使って五層のフィールドエリアへ。
ここは最初の転移門という事もあり最も到達難易度が低いため、俺達のように薬草採取をする人が結構いたりする。
俺達もそんな人たちに紛れて薬草採取に向かう。
このフィールドエリアは聖都アルテリア周辺に似た平原や湿原が広大に広がっているが、場所により植生が異なるので必要に応じて向かう方向が異なる。
今回は大家さんに頼まれたキンミツリという薬草を重点的に採取する予定だ。
俺達は大家さんに書いてもらった植生図を頼りに進んでいく。
「あっ、これじゃないかな?」
「おっ、そうだね。流石ですよラキシスさん」
「うふふ」
「じゃ、この辺から採ってこうか?」
「はーい」
俺達は早速採取していく。
この日のためにラキちゃんにも剪定ばさみと、片手で使えるスコップを買ってあげた。
ラキちゃんは自分専用の物が増えていくのが嬉しいようで、大事に使っている。
分かるなあ、俺も職場で使う工具とは別に、自分専用の工具が少しずつ増えていくのが嬉しかったもん。
採取しながら少しずつ移動していると、不意にラキちゃんが何かに気が付いた。
「あっ、リンメイお姉ちゃん」
「えっ?」
ラキちゃんの言葉に驚き、俺も顔を上げると、向こうからリンメイがやってくるのが見えた。
どうしたんだろう?
「リンメイお姉ちゃーん!」
ラキちゃんが立ち上がり両手を振ると、向こうも気が付いたようで小走りに駆けてきた。
「よっ!」
「あれ、キリム達と迷宮に行ったんじゃなかったのか?」
「うん、やっぱり行くの止めた。んで暇になったから、おっさん達追いかけてきた」
「そうなんだ、でもよくここが分かったな」
「臭いを辿って来た」
マジか。君のお姉さんの時も思ったが、君ら犬並みに鼻が良いな!
「そっか。でも俺達も薬草採取してるだけで、あんまし面白みも無いと思うぞ」
「いいよ別に。暇つぶしできれば」
「何かあったのか?」
「んー、……合流したパーティが、あたいと以前揉めた奴らだったんだ」
「あー、そうなのか」
そしてリンメイは嫌な事を思い出したのか、不貞腐れた感じで俯いてしまう。
それから、ポツリと呟いた。
「あたいの事良く思ってねー奴等にさ、おべっか使ってまで仲良くしてーと思わねーもん」
「そっか」
そうだな、別に狭いコミュニティに属しているわけでもないんだし、これまでの相手との関係をマイナスからゼロに戻す努力よりも、新しい相手とゼロからプラスにする方がリンメイにとっては良いのかもしれないな。
それに輪の中に入れない疎外感て、かなり精神的にくるんだよね。一人でいた方が遥かに良いほどに。
「とりあえずキリム達には後で謝っとけよ」
「……うん」
リンメイもしゃがみ込み、その辺の草をブチブチと毟りながら上の空な返事を返した。
「あっ、これ薬草だ。名前わかんねーけど」
「へぇー、何となく分かるんだ?」
「うん。全く知識無い物だと、良い悪い、危険安全、有益無益って感じに大雑把な事しかわかんねーけど、これが薬草ってのは見えた」
おぉー、情報が全く無くても、かなり大雑把な情報は頭に流れてくるんだな。……って、よく考えたら俺の 【虫の知らせ】 だってそうじゃないか。
成る程と思ってリンメイが手に持っている薬草を見ると、俺達が採取しているキンミツリじゃない!
「ちょっ、ちょっとそれ見せて!」
そう言いリンメイから受け取ると、俺のお手製の薬草手帳を取り出し確認をする。これってもしかしたら……。
「あった! やっぱり大家さんが欲しがってたミズナギだ! これどこに生えてた?」
「ここ」
リンメイが指差す場所を見ると、やはり株立ちの樹形で一つの根から幾つもの株が出ている薬草だった。大家さんに教えてもらった通りだ。
周囲を見渡してみるが残念な事に、これしか見当たらなかった。珍しい薬草だからしょうがないか。
大家さんは庭で育てたいと言ってたから、これは根ごと掘り起こして持って帰ろう。
「ありがとうリンメイ、これは嬉しい! 後でキッチリ報酬は払うよ!」
「お、おう。――じゃ、替わりにその手帳見せて」
「ん? いいぞ」
そう言って俺の薬草手帳を貸してあげたら、パラパラパラ……っと捲ってからパタンと閉じて、
「よし、覚えた」
と言ってのけた。
はぁ!? なんだそれ! お前はエスパー魔美の高畑さんかよ!
これだからチートなギフト持ちは……。
「おぉー、おっさんの手帳のおかげで名前とか色んな情報が鮮明に見えるようになった」
やはりこのギフト凄いな……。
それからリンメイは楽しくなったのか、あちらこちらを鑑定している。
とりあえず俺はミズナギを掘り起こし、土ごと根の部分に袋を被せてラキちゃんの亜空間収納に入れさせてもらう。
「ラキちゃんこれお願いできるかな?」
「はーい」
それから俺達も薬草採取を再開し、大家さんが必要とする数量まで採取したので昼食を取る事にした。
「リンメイはお弁当持ってるか?」
「ん? あるぞ」
リンメイはダンジョン前広場で買ったであろうサンドイッチの弁当を取り出した。
「おっ、なんか二人の弁当美味そうだな!」
「ふふん! 俺達の下宿先の大家さんお手製のサンドイッチ弁当だ。良ければ半分交換してあげよう」
「えっマジで? じゃ、これ……と、これと交換な」
「リンメイお姉ちゃん、私のも交換していいよ」
「おっ、なんか悪いな」
そう言いつつ、しっかり交換してもらっている。
それから雑談をしながら、のんびりと昼食を取る事になった。
「そうそう、あたいも魔法士の適性調べたら、一つだけ生活魔法以上があったんだよ!」
「おお! 凄いじゃないか」
「へっへー! とはいえ、おっさんと同じで遠距離に打ち出せるほどじゃなかったけどな」
「それでも十分じゃないか。属性攻撃ができるのは大きいぞ。それで何の属性だったんだ?」
「それがさ、氷属性だったんだよ! …………あたい、お姉ちゃんに憧れててさ。お姉ちゃんは 【氷の女王】 って氷雪系最上位のギフト持ちだから少し近づけた感じがして嬉しかったんだ」
「そうか、良かったじゃないか」
「おう!」
やはりリンメイはお姉さんに憧れていたか。何となくそうだろうなとは思っていたけど。
そういえばリンメイとお姉さん二人とも白虎のように白い毛並みだよな。もしかしてシロクマのように寒い地方の出身なのか?
「リンメイって雪国育ちだったりする?」
「そうだけどなんで?」
「いや、ひょっとして出身地域もそういった属性に影響してるのかなーと思っただけ」
「あー、そうか。そういうのもあるかもしんねーな」
そう言い、 ニシシ とリンメイは屈託なく笑った。
さて、今日も少し投擲術の練習をするか。
「二人とも、もう少しゆっくりしてるといいよ。俺、ちょっとそこで投擲術の練習するから」
そう言って鞄から的を取り出す。
俺は的を近くの木に括り付け、それから練習を始めた。
「なんか面白そうだな。あたいにもやらせてよ」
暫く眺めていたリンメイは興味を持ったのか、自分もやりたいと言ってきた。
「ん? いいぞ。やり方分かるか?」
「だいじょーぶ。おっさんの投げ方見てコツは掴めた」
ああ、そういえばそんなギフトの使い方もあったね。
だがしかし! コツは掴めてもすぐにできるとは限らないぜ!
「ん? こうか?」
そう言い、リンメイはスコンスコンと綺麗に的に当てていく。
更には生活魔法を使った投げ方までやりだした。
クッ! 大金払って教えてもらった俺の立場が無いじゃないか。これだから才能のある子は……。
「アハハ! おもしれーなこれ!」
「私もやりたいー!」
ラキちゃんも興味を持ったのか、リンメイと一緒にやりだした。
ラキちゃんにリンメイがコツを教えてあげると、あっという間に習得してしまったようだ。
二人ともとっても上手だね……。ちょっと悔しい。
「よーし! 皆で的当て勝負しようぜ! どん尻が今話題のスイーツ奢りな!」
「その勝負乗った!」
「乗ったー!」
フフフ、勝負だと? 俺の闘志に火を付けてくれるじゃないかリンメイ君。師匠直伝の意地を見せてやる!
ルールは、立った状態、しゃがんだ状態、振り向いて、右から移動して、左から移動して、を三本ずつ投げて得点を競う事に。
魔力は使っても使わなくてもどちらでも良しとした。
――結果は!
「わーい! いっちばーん!」
「くっそー、二番かよ」
「ぐやぢいー! 大金払って教えてもらった俺がビリとか悲しすぎるゥ!」
ラキちゃんが一位、リンメイが二位、そして俺がどん尻だった。
現実は厳しいなあ、まったくもー!
「へっへー、おっさんゴチでーす!」
「ゴチでーす!」
「しょうがない、んじゃスイーツ食べに繁華街に行こうか」
「「おー!」」
と言う事で、今日はもう薬草採取は終わりにして帰る事にした。
俺達が転移門の前まで戻ってきたら、隣の六層へ向かう階段から上がってきたパーティの一人がこちらに気が付き、声を発した。
「あれ? リンメイちゃん?」
その声を聞いた途端、リンメイは固まってしまった。
フィールドエリアにも勿論魔物は出現するが、こんな低層なら大家さんお手製の魔物除けの香があれば滅多に寄ってくる事は無い。
寧ろ一番用心するのは例によって人間だったりする。
ダンジョン前広場の噴水の所まで来たら、キリム達がいた。リンメイも一緒だ。
とりあえずお互い挨拶を交わす。これから迷宮エリアの探索かな?
「キリム達はこれから迷宮探索?」
「はい。一緒に行くパーティがまだ来ないので、待ってるところです」
「おじさん達は薬草採取?」
「そう」 「でーす」
「と言う事で俺達は行くよ。んじゃ、気を付けてな」
「おじさん達もね」
俺達はキリム達と別れ、ダンジョンへ入って行く。転移門を使って五層のフィールドエリアへ。
ここは最初の転移門という事もあり最も到達難易度が低いため、俺達のように薬草採取をする人が結構いたりする。
俺達もそんな人たちに紛れて薬草採取に向かう。
このフィールドエリアは聖都アルテリア周辺に似た平原や湿原が広大に広がっているが、場所により植生が異なるので必要に応じて向かう方向が異なる。
今回は大家さんに頼まれたキンミツリという薬草を重点的に採取する予定だ。
俺達は大家さんに書いてもらった植生図を頼りに進んでいく。
「あっ、これじゃないかな?」
「おっ、そうだね。流石ですよラキシスさん」
「うふふ」
「じゃ、この辺から採ってこうか?」
「はーい」
俺達は早速採取していく。
この日のためにラキちゃんにも剪定ばさみと、片手で使えるスコップを買ってあげた。
ラキちゃんは自分専用の物が増えていくのが嬉しいようで、大事に使っている。
分かるなあ、俺も職場で使う工具とは別に、自分専用の工具が少しずつ増えていくのが嬉しかったもん。
採取しながら少しずつ移動していると、不意にラキちゃんが何かに気が付いた。
「あっ、リンメイお姉ちゃん」
「えっ?」
ラキちゃんの言葉に驚き、俺も顔を上げると、向こうからリンメイがやってくるのが見えた。
どうしたんだろう?
「リンメイお姉ちゃーん!」
ラキちゃんが立ち上がり両手を振ると、向こうも気が付いたようで小走りに駆けてきた。
「よっ!」
「あれ、キリム達と迷宮に行ったんじゃなかったのか?」
「うん、やっぱり行くの止めた。んで暇になったから、おっさん達追いかけてきた」
「そうなんだ、でもよくここが分かったな」
「臭いを辿って来た」
マジか。君のお姉さんの時も思ったが、君ら犬並みに鼻が良いな!
「そっか。でも俺達も薬草採取してるだけで、あんまし面白みも無いと思うぞ」
「いいよ別に。暇つぶしできれば」
「何かあったのか?」
「んー、……合流したパーティが、あたいと以前揉めた奴らだったんだ」
「あー、そうなのか」
そしてリンメイは嫌な事を思い出したのか、不貞腐れた感じで俯いてしまう。
それから、ポツリと呟いた。
「あたいの事良く思ってねー奴等にさ、おべっか使ってまで仲良くしてーと思わねーもん」
「そっか」
そうだな、別に狭いコミュニティに属しているわけでもないんだし、これまでの相手との関係をマイナスからゼロに戻す努力よりも、新しい相手とゼロからプラスにする方がリンメイにとっては良いのかもしれないな。
それに輪の中に入れない疎外感て、かなり精神的にくるんだよね。一人でいた方が遥かに良いほどに。
「とりあえずキリム達には後で謝っとけよ」
「……うん」
リンメイもしゃがみ込み、その辺の草をブチブチと毟りながら上の空な返事を返した。
「あっ、これ薬草だ。名前わかんねーけど」
「へぇー、何となく分かるんだ?」
「うん。全く知識無い物だと、良い悪い、危険安全、有益無益って感じに大雑把な事しかわかんねーけど、これが薬草ってのは見えた」
おぉー、情報が全く無くても、かなり大雑把な情報は頭に流れてくるんだな。……って、よく考えたら俺の 【虫の知らせ】 だってそうじゃないか。
成る程と思ってリンメイが手に持っている薬草を見ると、俺達が採取しているキンミツリじゃない!
「ちょっ、ちょっとそれ見せて!」
そう言いリンメイから受け取ると、俺のお手製の薬草手帳を取り出し確認をする。これってもしかしたら……。
「あった! やっぱり大家さんが欲しがってたミズナギだ! これどこに生えてた?」
「ここ」
リンメイが指差す場所を見ると、やはり株立ちの樹形で一つの根から幾つもの株が出ている薬草だった。大家さんに教えてもらった通りだ。
周囲を見渡してみるが残念な事に、これしか見当たらなかった。珍しい薬草だからしょうがないか。
大家さんは庭で育てたいと言ってたから、これは根ごと掘り起こして持って帰ろう。
「ありがとうリンメイ、これは嬉しい! 後でキッチリ報酬は払うよ!」
「お、おう。――じゃ、替わりにその手帳見せて」
「ん? いいぞ」
そう言って俺の薬草手帳を貸してあげたら、パラパラパラ……っと捲ってからパタンと閉じて、
「よし、覚えた」
と言ってのけた。
はぁ!? なんだそれ! お前はエスパー魔美の高畑さんかよ!
これだからチートなギフト持ちは……。
「おぉー、おっさんの手帳のおかげで名前とか色んな情報が鮮明に見えるようになった」
やはりこのギフト凄いな……。
それからリンメイは楽しくなったのか、あちらこちらを鑑定している。
とりあえず俺はミズナギを掘り起こし、土ごと根の部分に袋を被せてラキちゃんの亜空間収納に入れさせてもらう。
「ラキちゃんこれお願いできるかな?」
「はーい」
それから俺達も薬草採取を再開し、大家さんが必要とする数量まで採取したので昼食を取る事にした。
「リンメイはお弁当持ってるか?」
「ん? あるぞ」
リンメイはダンジョン前広場で買ったであろうサンドイッチの弁当を取り出した。
「おっ、なんか二人の弁当美味そうだな!」
「ふふん! 俺達の下宿先の大家さんお手製のサンドイッチ弁当だ。良ければ半分交換してあげよう」
「えっマジで? じゃ、これ……と、これと交換な」
「リンメイお姉ちゃん、私のも交換していいよ」
「おっ、なんか悪いな」
そう言いつつ、しっかり交換してもらっている。
それから雑談をしながら、のんびりと昼食を取る事になった。
「そうそう、あたいも魔法士の適性調べたら、一つだけ生活魔法以上があったんだよ!」
「おお! 凄いじゃないか」
「へっへー! とはいえ、おっさんと同じで遠距離に打ち出せるほどじゃなかったけどな」
「それでも十分じゃないか。属性攻撃ができるのは大きいぞ。それで何の属性だったんだ?」
「それがさ、氷属性だったんだよ! …………あたい、お姉ちゃんに憧れててさ。お姉ちゃんは 【氷の女王】 って氷雪系最上位のギフト持ちだから少し近づけた感じがして嬉しかったんだ」
「そうか、良かったじゃないか」
「おう!」
やはりリンメイはお姉さんに憧れていたか。何となくそうだろうなとは思っていたけど。
そういえばリンメイとお姉さん二人とも白虎のように白い毛並みだよな。もしかしてシロクマのように寒い地方の出身なのか?
「リンメイって雪国育ちだったりする?」
「そうだけどなんで?」
「いや、ひょっとして出身地域もそういった属性に影響してるのかなーと思っただけ」
「あー、そうか。そういうのもあるかもしんねーな」
そう言い、 ニシシ とリンメイは屈託なく笑った。
さて、今日も少し投擲術の練習をするか。
「二人とも、もう少しゆっくりしてるといいよ。俺、ちょっとそこで投擲術の練習するから」
そう言って鞄から的を取り出す。
俺は的を近くの木に括り付け、それから練習を始めた。
「なんか面白そうだな。あたいにもやらせてよ」
暫く眺めていたリンメイは興味を持ったのか、自分もやりたいと言ってきた。
「ん? いいぞ。やり方分かるか?」
「だいじょーぶ。おっさんの投げ方見てコツは掴めた」
ああ、そういえばそんなギフトの使い方もあったね。
だがしかし! コツは掴めてもすぐにできるとは限らないぜ!
「ん? こうか?」
そう言い、リンメイはスコンスコンと綺麗に的に当てていく。
更には生活魔法を使った投げ方までやりだした。
クッ! 大金払って教えてもらった俺の立場が無いじゃないか。これだから才能のある子は……。
「アハハ! おもしれーなこれ!」
「私もやりたいー!」
ラキちゃんも興味を持ったのか、リンメイと一緒にやりだした。
ラキちゃんにリンメイがコツを教えてあげると、あっという間に習得してしまったようだ。
二人ともとっても上手だね……。ちょっと悔しい。
「よーし! 皆で的当て勝負しようぜ! どん尻が今話題のスイーツ奢りな!」
「その勝負乗った!」
「乗ったー!」
フフフ、勝負だと? 俺の闘志に火を付けてくれるじゃないかリンメイ君。師匠直伝の意地を見せてやる!
ルールは、立った状態、しゃがんだ状態、振り向いて、右から移動して、左から移動して、を三本ずつ投げて得点を競う事に。
魔力は使っても使わなくてもどちらでも良しとした。
――結果は!
「わーい! いっちばーん!」
「くっそー、二番かよ」
「ぐやぢいー! 大金払って教えてもらった俺がビリとか悲しすぎるゥ!」
ラキちゃんが一位、リンメイが二位、そして俺がどん尻だった。
現実は厳しいなあ、まったくもー!
「へっへー、おっさんゴチでーす!」
「ゴチでーす!」
「しょうがない、んじゃスイーツ食べに繁華街に行こうか」
「「おー!」」
と言う事で、今日はもう薬草採取は終わりにして帰る事にした。
俺達が転移門の前まで戻ってきたら、隣の六層へ向かう階段から上がってきたパーティの一人がこちらに気が付き、声を発した。
「あれ? リンメイちゃん?」
その声を聞いた途端、リンメイは固まってしまった。
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