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一章
024 ドラゴンブラッド
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ひとまず、町で買ってきたお弁当で昼食を取る事にした。
その後大家さんに留守番をしてもらい、俺とラキちゃんで薪を拾いに出かける。
大家さんはこの後夕食の準備をしてくれるからね。薪くらいは俺達が頑張らないと。
ある程度集めたのでテントまで戻ってくると大家さんもテント周辺を散策していたそうで、周辺に自生している薬草の講義をしてくれる事になった。
大家さんの講義はとてもためになり、俺も必死にメモを取る。中にはショウガやワサビに似た、料理に役立つ草花も教えてくれた。
そうこうしているうちに段々と日が落ちてきたので講義も終わりとなり、大家さんは夕食の準備に取り掛かる。
俺は大家さんお手製の魔物除けの香をテント周辺に焚いた後は、ラキちゃんと二人で大家さんの見学だ。
「ケイタさんの竈も大丈夫そうですね」
「みたいですね。よかったー」
どうやら合格を貰えたようでほっとする。
暫くは竈を囲み楽しく過ごす。次第に良い匂いがしてくる鍋に、堪らずお腹も鳴ってしまう。
「さぁできましたよ」
「美味しそう~!」
早速器に装ってもらい、周りで炙っていたパンや串焼きなどと共に頂く事にする。
キャンプで作った料理を食べるなんていつ振りだろう。
とても美味しく、俺もラキちゃんも美味い美味い言いながら夢中になって食べてしまう。
特にこの湖で獲れたという赤身の魚がたっぷりと入ったクリームシチューがとても美味しかった。
「二人が喜んでくれて良かったわ」
大家さんも俺たちの食べっぷりを見てとても満足そうだ。
一頻り料理に満足しながらまったりとした後、再び俺の魔法の練習をする事になった。
「では、水魔法の練習です。この食器を綺麗にしてみましょうか。――まず魔力から水を生み出して洗いましょう」
「わかりました」
俺は魔力を変換して小さな水の玉を作り、水の玉を回転させながら食器の汚れを落としていく。
器の中では洗濯機のように水の玉が汚れを剥がしながら回っていく。水が濁ればその都度新しい玉を作り、それを繰り返していく。
「次に、今度は湖の水を利用しましょう。湖の水を使って食器を濯いでください」
俺は湖から不純物の混ざらない水だけを抽出しながらホースのように水の道を作り食器を洗い流していく。
「はいよくできました。ケイタさんも大分魔力の扱いに長けてきましたね」
「大家さんのおかげです」
大家さんの指示通りに完遂する事ができて嬉しい。少しづつ進歩していってるのが実感できる。
洗った食器は隣でラキちゃんが布巾で拭いてくれていた。
後片付けを終え、夜空に囲まれてゆったりとした時間を過ごす。
この世界には月が二つあり、とても幻想的だ。
そんな星空の下、大家さんは星の読み方など色々と語ってくれた。
そろそろ明日に備え寝る事になったのだが、野外での宿泊に必須な見張りについて大家さんに聞いてみた。
「普通でしたら交代で見張りをしますが、私が精霊魔法を使えるので大丈夫です。
認識阻害を掛けますので私達以外は無意識にここを避けて通りますし、何かあれば精霊が教えてくれます」
「すごいなあ。本当に精霊魔法は便利ですね。」
「ふふっ。さっ、そういう事なのでそろそろ休みましょう。予定通りなら明日の朝にはドラゴンブラッドが花を咲かせるはずですよ」
ドラゴンブラッドは夏至の時分なので、数日の誤差がある。一応狙っては来ているが、ずれ込むと二日は待つ事になってしまうらしい。
早いと朝日が昇りだす前に蕾が開きだすとの事なので、まだ暗い時分に起きなきゃいけない。
と言う事なので、採取に備えて寝よう。
「おはよー。お兄ちゃん起きて~」
「……ん? あ、はい、起きますよ~。――おはよう。起こしてくれてありがとね」
「どういたしましてっ」
外は朝靄が立ち込めているが、少し明るくなってきていた。
ラキちゃんはもう準備万端といった感じで、お気に入りのオーバーオールに麦わら帽子という出で立ちをしている。
テントから出ると、大家さんはポットに火を掛けてお茶の準備をしていた。
「おはようございますケイタさん」
「おはようございます」
「蕾に色が付き始めているので今日で間違いなさそうです。今お茶を淹れてますのですぐに朝食を食べましょう」
「分かりました。急いで顔を洗ってきます」
魔法を使った水で顔を洗うと、急いで装備を身につけていく。
朝食はすぐに腹ごしらえができるようにと大家さんが昨晩のうちにサンドイッチを作ってくれていた。
三人で竈を囲んで朝食を取りながら、採取における再確認をする。
「昨日も説明しましたが、採取は花弁を一枚ずつ丁寧に摘んでください。横着して花ごと摘んでしまうとすぐに色が抜けてしまい、使い物になりません」
「分かりました。最初は大家さんのやり方を見て参考にします」
採取の時、俺はラキちゃんと一緒に行動する。ラキちゃんの亜空間収納に俺が摘んだ花弁も入れさせてもらうためだ。
テントの片付けだけは後にして、それ以外の荷物は今のうちに片付けてしまう。
俺達以外の周りでキャンプをしている人達も、慌ただしく採取の準備をしているようだ。
朝日が昇りだしたころ、ドラゴンブラッドの蕾が一斉に開きだした。
ドラゴンブラッドは姫睡蓮のような可憐な花だった。蕾が開いて間もない状態はピンク色をしていたが、みるみるうちに血のような赤色に染まっていく。
思わずその光景に三人で見入ってしまう。
「きれい~」
「綺麗だねー」
「ふふ、でしょう? ではそろそろ頃合いですから採取しましょう!」
「「はーい!」」
周りの人達はもう採取し始めている。
俺とラキちゃんも大家さんの所作を見習って採り始めていく。
慎重に花の首元を摘まみ花弁だけを採取していくのだが、力加減や摘まむ場所を考えないと花弁を千切ってしまい、色が抜け落ち台無しにしてしまう。
ラキちゃんは俺よりも器用にプチプチと花弁を採取していく。俺も負けないぞ!
暫く採取に勤しんでいたが、突然 【虫の知らせ】 ギフトが発動した気がした。
――なんだ!?
俺は思わず顔を上げ、周りを見渡してしまう。周りは一生懸命に花弁を採取している人しかいない。
その周辺を警護している護衛の冒険者達も、別にこれといった異変に気が付いてもいない。
「どうしたの? お兄ちゃん」
「ん? ああ、ごめんね。なんか俺のギフトが発動している気がするんだけど、別に周り見ても何も無さそうなんだよねぇ」
「ふーん」
結局何に気を付けないといけないか分からなかったので、一応周囲に注意はしながらも再び採取に勤しんだ。
日がかなり高くなってきた頃、そろそろ帰りだす人が増えてきた。
先程から 【虫の知らせ】 の警鐘は、段々と強くなってきている気がする……。
「今年も沢山採れました! そろそろ切り上げて帰り支度をしましょうか」
「「はーい」」
大家さんはホクホク顔で俺達の方にやってきて、採取の終了を告げてくれた。
俺達は作業を終え、ベースキャンプに戻る事にする。
突然、大家さんはバッと振り向き、遠い空を険しい表情で見つめだした。
「どうしたんですか? 大家さん」
そう言い俺も大家さんの見つめる方角を見ると、幾つもの何かがこちらの方へ飛んできているのが見えた。
何だ? あれは……。
「いけない!」
そう言い、大家さんは慌ててまだ採取している人達の方へ駆けていった。
俺とラキちゃんも慌てて大家さんを追いかける。
「ドラゴニア帝国の飛竜兵です! 皆さん逃げて!」
大家さんは声を張り上げ、周りの人達に警告する。
ドラゴニア帝国って女神様情報だとたしか……邪竜ギリメカリスを神として祀る国で、角のある竜人とその配下の蜥蜴人以外の人種は基本、神の意向に添って食べ……物……。
俺はぞわりと肌が粟立ち、大家さんの鬼気迫る声の理由を理解して慌てて抜刀する。
「なんだ?」
「飛竜兵だと!?」
「なっ、なぜドラゴニア帝国兵がこんなところに!」
「にっ、逃げろー!」
採取していた人達も大家さんの声に空を見て状況を理解し、慌てて逃げだした。
俺は大家さんのの所まで行くと、逃げる人々の殿をつとめる大家さんの盾となるべく前にでる。
必死に逃げるが、飛竜兵は見る見るうちに近づいてくる。
「巫女が言っていたのはこの辺りか」
「左様でございます皇子」
「……ふむ、まだ再誕はなされておらぬようだな」
「そのようで」
連中は湖の上空まで来たが、何かを探しているようですぐには襲ってこない。このまま逃げ切れるか……。
「目障りな猿どもがいるな。――丁度良い、奴らを神への供物とするぞ」
その後大家さんに留守番をしてもらい、俺とラキちゃんで薪を拾いに出かける。
大家さんはこの後夕食の準備をしてくれるからね。薪くらいは俺達が頑張らないと。
ある程度集めたのでテントまで戻ってくると大家さんもテント周辺を散策していたそうで、周辺に自生している薬草の講義をしてくれる事になった。
大家さんの講義はとてもためになり、俺も必死にメモを取る。中にはショウガやワサビに似た、料理に役立つ草花も教えてくれた。
そうこうしているうちに段々と日が落ちてきたので講義も終わりとなり、大家さんは夕食の準備に取り掛かる。
俺は大家さんお手製の魔物除けの香をテント周辺に焚いた後は、ラキちゃんと二人で大家さんの見学だ。
「ケイタさんの竈も大丈夫そうですね」
「みたいですね。よかったー」
どうやら合格を貰えたようでほっとする。
暫くは竈を囲み楽しく過ごす。次第に良い匂いがしてくる鍋に、堪らずお腹も鳴ってしまう。
「さぁできましたよ」
「美味しそう~!」
早速器に装ってもらい、周りで炙っていたパンや串焼きなどと共に頂く事にする。
キャンプで作った料理を食べるなんていつ振りだろう。
とても美味しく、俺もラキちゃんも美味い美味い言いながら夢中になって食べてしまう。
特にこの湖で獲れたという赤身の魚がたっぷりと入ったクリームシチューがとても美味しかった。
「二人が喜んでくれて良かったわ」
大家さんも俺たちの食べっぷりを見てとても満足そうだ。
一頻り料理に満足しながらまったりとした後、再び俺の魔法の練習をする事になった。
「では、水魔法の練習です。この食器を綺麗にしてみましょうか。――まず魔力から水を生み出して洗いましょう」
「わかりました」
俺は魔力を変換して小さな水の玉を作り、水の玉を回転させながら食器の汚れを落としていく。
器の中では洗濯機のように水の玉が汚れを剥がしながら回っていく。水が濁ればその都度新しい玉を作り、それを繰り返していく。
「次に、今度は湖の水を利用しましょう。湖の水を使って食器を濯いでください」
俺は湖から不純物の混ざらない水だけを抽出しながらホースのように水の道を作り食器を洗い流していく。
「はいよくできました。ケイタさんも大分魔力の扱いに長けてきましたね」
「大家さんのおかげです」
大家さんの指示通りに完遂する事ができて嬉しい。少しづつ進歩していってるのが実感できる。
洗った食器は隣でラキちゃんが布巾で拭いてくれていた。
後片付けを終え、夜空に囲まれてゆったりとした時間を過ごす。
この世界には月が二つあり、とても幻想的だ。
そんな星空の下、大家さんは星の読み方など色々と語ってくれた。
そろそろ明日に備え寝る事になったのだが、野外での宿泊に必須な見張りについて大家さんに聞いてみた。
「普通でしたら交代で見張りをしますが、私が精霊魔法を使えるので大丈夫です。
認識阻害を掛けますので私達以外は無意識にここを避けて通りますし、何かあれば精霊が教えてくれます」
「すごいなあ。本当に精霊魔法は便利ですね。」
「ふふっ。さっ、そういう事なのでそろそろ休みましょう。予定通りなら明日の朝にはドラゴンブラッドが花を咲かせるはずですよ」
ドラゴンブラッドは夏至の時分なので、数日の誤差がある。一応狙っては来ているが、ずれ込むと二日は待つ事になってしまうらしい。
早いと朝日が昇りだす前に蕾が開きだすとの事なので、まだ暗い時分に起きなきゃいけない。
と言う事なので、採取に備えて寝よう。
「おはよー。お兄ちゃん起きて~」
「……ん? あ、はい、起きますよ~。――おはよう。起こしてくれてありがとね」
「どういたしましてっ」
外は朝靄が立ち込めているが、少し明るくなってきていた。
ラキちゃんはもう準備万端といった感じで、お気に入りのオーバーオールに麦わら帽子という出で立ちをしている。
テントから出ると、大家さんはポットに火を掛けてお茶の準備をしていた。
「おはようございますケイタさん」
「おはようございます」
「蕾に色が付き始めているので今日で間違いなさそうです。今お茶を淹れてますのですぐに朝食を食べましょう」
「分かりました。急いで顔を洗ってきます」
魔法を使った水で顔を洗うと、急いで装備を身につけていく。
朝食はすぐに腹ごしらえができるようにと大家さんが昨晩のうちにサンドイッチを作ってくれていた。
三人で竈を囲んで朝食を取りながら、採取における再確認をする。
「昨日も説明しましたが、採取は花弁を一枚ずつ丁寧に摘んでください。横着して花ごと摘んでしまうとすぐに色が抜けてしまい、使い物になりません」
「分かりました。最初は大家さんのやり方を見て参考にします」
採取の時、俺はラキちゃんと一緒に行動する。ラキちゃんの亜空間収納に俺が摘んだ花弁も入れさせてもらうためだ。
テントの片付けだけは後にして、それ以外の荷物は今のうちに片付けてしまう。
俺達以外の周りでキャンプをしている人達も、慌ただしく採取の準備をしているようだ。
朝日が昇りだしたころ、ドラゴンブラッドの蕾が一斉に開きだした。
ドラゴンブラッドは姫睡蓮のような可憐な花だった。蕾が開いて間もない状態はピンク色をしていたが、みるみるうちに血のような赤色に染まっていく。
思わずその光景に三人で見入ってしまう。
「きれい~」
「綺麗だねー」
「ふふ、でしょう? ではそろそろ頃合いですから採取しましょう!」
「「はーい!」」
周りの人達はもう採取し始めている。
俺とラキちゃんも大家さんの所作を見習って採り始めていく。
慎重に花の首元を摘まみ花弁だけを採取していくのだが、力加減や摘まむ場所を考えないと花弁を千切ってしまい、色が抜け落ち台無しにしてしまう。
ラキちゃんは俺よりも器用にプチプチと花弁を採取していく。俺も負けないぞ!
暫く採取に勤しんでいたが、突然 【虫の知らせ】 ギフトが発動した気がした。
――なんだ!?
俺は思わず顔を上げ、周りを見渡してしまう。周りは一生懸命に花弁を採取している人しかいない。
その周辺を警護している護衛の冒険者達も、別にこれといった異変に気が付いてもいない。
「どうしたの? お兄ちゃん」
「ん? ああ、ごめんね。なんか俺のギフトが発動している気がするんだけど、別に周り見ても何も無さそうなんだよねぇ」
「ふーん」
結局何に気を付けないといけないか分からなかったので、一応周囲に注意はしながらも再び採取に勤しんだ。
日がかなり高くなってきた頃、そろそろ帰りだす人が増えてきた。
先程から 【虫の知らせ】 の警鐘は、段々と強くなってきている気がする……。
「今年も沢山採れました! そろそろ切り上げて帰り支度をしましょうか」
「「はーい」」
大家さんはホクホク顔で俺達の方にやってきて、採取の終了を告げてくれた。
俺達は作業を終え、ベースキャンプに戻る事にする。
突然、大家さんはバッと振り向き、遠い空を険しい表情で見つめだした。
「どうしたんですか? 大家さん」
そう言い俺も大家さんの見つめる方角を見ると、幾つもの何かがこちらの方へ飛んできているのが見えた。
何だ? あれは……。
「いけない!」
そう言い、大家さんは慌ててまだ採取している人達の方へ駆けていった。
俺とラキちゃんも慌てて大家さんを追いかける。
「ドラゴニア帝国の飛竜兵です! 皆さん逃げて!」
大家さんは声を張り上げ、周りの人達に警告する。
ドラゴニア帝国って女神様情報だとたしか……邪竜ギリメカリスを神として祀る国で、角のある竜人とその配下の蜥蜴人以外の人種は基本、神の意向に添って食べ……物……。
俺はぞわりと肌が粟立ち、大家さんの鬼気迫る声の理由を理解して慌てて抜刀する。
「なんだ?」
「飛竜兵だと!?」
「なっ、なぜドラゴニア帝国兵がこんなところに!」
「にっ、逃げろー!」
採取していた人達も大家さんの声に空を見て状況を理解し、慌てて逃げだした。
俺は大家さんのの所まで行くと、逃げる人々の殿をつとめる大家さんの盾となるべく前にでる。
必死に逃げるが、飛竜兵は見る見るうちに近づいてくる。
「巫女が言っていたのはこの辺りか」
「左様でございます皇子」
「……ふむ、まだ再誕はなされておらぬようだな」
「そのようで」
連中は湖の上空まで来たが、何かを探しているようですぐには襲ってこない。このまま逃げ切れるか……。
「目障りな猿どもがいるな。――丁度良い、奴らを神への供物とするぞ」
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