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第六章 サークル壊滅大作戦!
第六十話 幕張メッセ、炎上
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NBCテロ対策車の後ろの扉が開き、中から全身真っ黄色な人間が二人降りてきた。よく見るとそれは化学防護服で、福島原発事故のニュースで見覚えがあった。顔には防毒マスクをはめており、足には黒い長靴を履いている。
防護服を着た人物は、二人を見ると手招きした。呼ばれるままに車に近寄ると、マスク越しに「青山さん、吉井さんですか?」と言われたので頷く。すると車中に招かれたため、開いた扉からNBCテロ対策車の後ろに乗り込んだ。
様々な計測機器が並ぶ一角に腰を掛けると、防護服の二人から自己紹介された。二人とも千葉県警のNBCテロ対策専門部隊で、一人が小川、もう一人が藤田という名前だった。ただし、防護服で全身が覆われている上、背格好が似ているので見分けがつかない。自己紹介が終わる、小川が説明を始めた。
「ご存知のことと思いますが、今、幕張メッセで天然痘テロが行われている疑いがあります。我々も杉永記者から一通りの説明を受けましたが、今この事態について一番詳しいのはお二人です。そこで事件発生の状況についてお聞きしたい。」
説明の途中で車が動き出し、どこかへ向かい始めた。
「天然痘はエボラ出血熱やペストと同じく、感染症予防法にて最も危険な第一種指定を受けております。お二人は感染者と接触しているため、これから千葉大学医学部附属病院に向かい、法律に則って入院して頂きます。」
要は病院に隔離するというわけである。小川の説明が済んだところで、済がバッグの中から小型のボトルを取り出した。透明なビニール袋で何重にも包まれている。
「調査ということでしたら、これが今日配布された天然痘の培養液です。会員には幹細胞サプリメントとして配布されていました。さっき幕張メッセを出る時に回収してきました。」
小川と藤田は顔を見合わせると互いに頷き、済からボトルを受け取った。すぐに藤田が奥に向かい、チューブから薬品を取り出す。天然痘の検査を行うようだ。小川は引き続き二人に向かい、状況確認を始めた。二人はあの場で起こった暴動や島村の発言について順に話したが、そのきっかけとなったサイバーテレビの放送は「手違いで起こったもの」ということにしておいた。ついでにサークルとMASK、科学の道についての概要を話した後、済が幕張メッセ内部の配信URLを教えると、「ヒアリングのため音を消していたのですが」と二人の頭上を指差した。そこには小型のモニターが設置されており、済が捨て垢で取ったチャンネルのYoutubeLiveが映っていた。視聴者数は百万人を超えている。アングルは二階通路からのもので、ステージと会場前方がよく見えた。
幕張メッセはなおも暴力の渦中にあった。ステージ上では既に動かなくなった島村を数人が踏みつけており、会場でも同様に、動かなくなった師匠陣を大勢が蹴りつけていた。恐らくほとんどの師匠が既に死んでいるだろう。さらに十分程すると、誰からともなく師匠の死体を一箇所に集め始めた。一体これからどうするつもりなのか気になったが、その時には病院に車が到着しており、二人は入院準備に入らなければいけなかった。
◇
―― キュウウウーーーーーーン、キュウウウーーーーーーン。
済の耳に、再びあの不快なサイレンが聞こえてきた。入院手続きで疲れ、眠り込んでいたが一瞬で目が醒めてしまった。ベッド脇に置いておいたスマホを見ると、
「テロ情報。テロ情報。当地域にテロの危険が及ぶ可能性があります。避難情報に従い、速やかに避難して下さい。」
と表示されていた。
サイバーテレビのアプリを開くと、アナウンサーが緊急ニュースを読み上げていた。
「たった今情報が入ってきました。幕張メッセで配られていたサプリメントに天然痘ウイルスが混入されており、バイオテロが行われていることが確定しました。繰り返します。幕張メッセでバイオテロが行われていることが確定しました。付近の方は緊急情報に従い、速やかに避難して下さい。避難対象は東京都江戸川区、葛飾区、千葉県市川市、船橋市、習志野市……。」
幕張メッセの配信を見てみると……画面が赤く染まっていた。幕張メッセは燃えていた。
防護服を着た人物は、二人を見ると手招きした。呼ばれるままに車に近寄ると、マスク越しに「青山さん、吉井さんですか?」と言われたので頷く。すると車中に招かれたため、開いた扉からNBCテロ対策車の後ろに乗り込んだ。
様々な計測機器が並ぶ一角に腰を掛けると、防護服の二人から自己紹介された。二人とも千葉県警のNBCテロ対策専門部隊で、一人が小川、もう一人が藤田という名前だった。ただし、防護服で全身が覆われている上、背格好が似ているので見分けがつかない。自己紹介が終わる、小川が説明を始めた。
「ご存知のことと思いますが、今、幕張メッセで天然痘テロが行われている疑いがあります。我々も杉永記者から一通りの説明を受けましたが、今この事態について一番詳しいのはお二人です。そこで事件発生の状況についてお聞きしたい。」
説明の途中で車が動き出し、どこかへ向かい始めた。
「天然痘はエボラ出血熱やペストと同じく、感染症予防法にて最も危険な第一種指定を受けております。お二人は感染者と接触しているため、これから千葉大学医学部附属病院に向かい、法律に則って入院して頂きます。」
要は病院に隔離するというわけである。小川の説明が済んだところで、済がバッグの中から小型のボトルを取り出した。透明なビニール袋で何重にも包まれている。
「調査ということでしたら、これが今日配布された天然痘の培養液です。会員には幹細胞サプリメントとして配布されていました。さっき幕張メッセを出る時に回収してきました。」
小川と藤田は顔を見合わせると互いに頷き、済からボトルを受け取った。すぐに藤田が奥に向かい、チューブから薬品を取り出す。天然痘の検査を行うようだ。小川は引き続き二人に向かい、状況確認を始めた。二人はあの場で起こった暴動や島村の発言について順に話したが、そのきっかけとなったサイバーテレビの放送は「手違いで起こったもの」ということにしておいた。ついでにサークルとMASK、科学の道についての概要を話した後、済が幕張メッセ内部の配信URLを教えると、「ヒアリングのため音を消していたのですが」と二人の頭上を指差した。そこには小型のモニターが設置されており、済が捨て垢で取ったチャンネルのYoutubeLiveが映っていた。視聴者数は百万人を超えている。アングルは二階通路からのもので、ステージと会場前方がよく見えた。
幕張メッセはなおも暴力の渦中にあった。ステージ上では既に動かなくなった島村を数人が踏みつけており、会場でも同様に、動かなくなった師匠陣を大勢が蹴りつけていた。恐らくほとんどの師匠が既に死んでいるだろう。さらに十分程すると、誰からともなく師匠の死体を一箇所に集め始めた。一体これからどうするつもりなのか気になったが、その時には病院に車が到着しており、二人は入院準備に入らなければいけなかった。
◇
―― キュウウウーーーーーーン、キュウウウーーーーーーン。
済の耳に、再びあの不快なサイレンが聞こえてきた。入院手続きで疲れ、眠り込んでいたが一瞬で目が醒めてしまった。ベッド脇に置いておいたスマホを見ると、
「テロ情報。テロ情報。当地域にテロの危険が及ぶ可能性があります。避難情報に従い、速やかに避難して下さい。」
と表示されていた。
サイバーテレビのアプリを開くと、アナウンサーが緊急ニュースを読み上げていた。
「たった今情報が入ってきました。幕張メッセで配られていたサプリメントに天然痘ウイルスが混入されており、バイオテロが行われていることが確定しました。繰り返します。幕張メッセでバイオテロが行われていることが確定しました。付近の方は緊急情報に従い、速やかに避難して下さい。避難対象は東京都江戸川区、葛飾区、千葉県市川市、船橋市、習志野市……。」
幕張メッセの配信を見てみると……画面が赤く染まっていた。幕張メッセは燃えていた。
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