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第五章 恐怖!カルト宗教
第四十五話 山崎の行方
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テレビに映っていたのは……山崎の両親だった。その時間、大日本テレビでは行方不明者捜索特番が放映されており、特集された三人の行方不明者の中に山崎が入っていたのだった。
「東京都出身の山崎哲矢さんは、一昨年の平成XX年から行方不明となっています。哲矢さんは昭和XX年生まれ。大学の工学系研究科を修了後は農薬メーカーに就職し、大阪で生活していましたが、四年前の正月に帰省した後にご両親と連絡が取れなくなりました。ご両親は、その時はたまたま返信が遅いだけだと思っていたのですが、何度連絡しても返事が返ってこないことを心配して会社に確認したところ、帰省時点で既に退職していたことを知り……。」
テレビでは、ナレーターの概要説明後に再現VTRが流れ始めた。三人の会話は止まり、しばし画面に見入る。ほとんどは概要をなぞっている内容だったが、後半に気になる内容があった。
「哲矢さんが失踪してから半年後、お母様のスマホに不審なメッセージが届きました。『タスケテ!Yマチ!』という内容で、警察が調べたところ、発信元は群馬県Y町からほど近いO市の公衆電話ということが分かりましたが、それ以上のことは分かっていないそうです。」
それを見て吉井が口を開いた。
「群馬県Y町……?どっかで見た記憶あるけど思い出せないな。それより、スマホってことはSMSか。公衆電話から送れるのか?」
「ドコモにSMSセンターっていう電話番号があって、そこ経由で公衆電話からSMSが送れるんだよ。懐かしのポケベル打ちでな。あいつ、俺と同じで違法コピーやらハッキングにも興味持ってたから知っててもおかしくないな。あの頃のサブカルと言えば、ドラッグ、海外アングラ旅行、ハッキングあたりは定番で、背景が真っ黒い掲示板でいつも怪しい情報交換してたからな。まさに『危ない一号』に『ネットランナー』ってわけよ!」
※1 危ない一号:かつて存在したアンダーグラウンド雑誌。発刊元はデータハウス。ドラッグ、猟奇犯罪、盗聴などを特集するというとんでもない内容で、四文字の「サブカル」の代表例である……と作者は思っている(サブカルの定義を議論し始めると終わらないのでこのへんにしとこう)。今でもAmazonとかで古本が買えます。ちなみに、作者のペンネームの「青山」はこの本の編集長を勤めていた青山正明氏から。そして「済」はここに寄稿しており、また後に大問題ベストセラー「完全自殺マニュアル」を世に送り出すこととなる鶴見済氏から。
※2 ネットランナー:かつて存在していたインターネット関連雑誌。ソフトウェアの活用方法を紹介する雑誌……ではあるのだが、その内容は「悪用厳禁」の旗印の下、違法コピーやP2Pソフトの利用方法が紹介されるという悪ノリ全開だった。他にも、当時ネットで話題になった「先行者」をフィギュア化するなど、まだまだアングラ臭が残っていたネット文化の一翼を担った。九十年代後半~ゼロ年代前半にインターネットをやっていた方には「懐かしい!」かも?
済が昔話をしていると再現VTRが終わり、司会が視聴者への情報提供を呼び掛けて終わった。
番組は次の行方不明者に入ったが、「不審なメッセージ」というのが興味を惹くらしく、Twitterでハッシュタグが作られたり、5chではスレッドが立ったりとネットで話題になっていた。
「Y町か。あんな山の中に何があるんだ?」
「公衆電話からSMS送れるとか知らなかったー。」
「何年か前に病院で見た人に似てるなー。」
「北朝鮮の拉致なんじゃね?」
「『もしもし、お姉ちゃんだよ。』って電話がかかってきた事件とか、モールス信号みたいな電話が入ってた事件を思い出すなー。」
※3 「もしもし、お姉ちゃんだよ。」:九四年に発生したM.Hさん行方不明事件。行方不明の一年後、「もしもし、お姉ちゃんだよ。」という不審な電話があった。電話に出た妹が「どなたですか?」と尋ねたところ、「ひとみです。」と言って切れたが、事件との関連は不明。
※4 モールス信号みたいな電話:八九年に発生したH.Mさん行方不明事件。失踪から一、二年後に無言電話が掛かってきており、後ろでモールス信号のような音がしていたという。
三人でネットを少し見てみたところ、興味本位の勘ぐりをしていたり、全く関係ない同姓同名者のTwitterアカウントを本人か疑ったりと、あまり参考になる情報はなかった。
「やっぱりネットじゃちょっと信頼性に欠けるよなー。」
「ほとんどは興味本位の推測だね。」
そんなことを言っていると、CM明けに多数の電話オペレーターが映し出された。女性アナウンサーが視聴者から得られた情報を読み上げ始める。
「現在、視聴者の方から続々と情報が寄せられています。札幌から失踪した伊藤康弘さんに関しては、『新宿三丁目のコンビニで去年見た』、『歌舞伎町のホストクラブで三ヶ月ほど前に見た』という情報を複数頂きました。また、山崎哲矢さんについては、『大阪梅田で、カウンセリングのチラシを配っていた。』というお電話を数名の方から頂いております。時期は四、五年前ということです。番組では、引き続き情報を募集しています。」
その後も番組を追っていたが、追加情報は得られず終わった。
「山崎さんがサイエンス・ムーブメントだか科学の道だかにハマっていたのは間違いないみたいね。」
「しかし、失踪後の情報はないな。」
「これ以上の情報を得ようとしたら潜入が必要になりそうだな。俺はサークルに潜入しているし、杉永さんはMASKに潜入した……。」
通話にしばしの沈黙が流れる。
「おいおい、僕に潜入しろってか。」
「分かってるねえ!」
済はひとまず、肥後に科学の道の活動場所を聞いてみることにした。
「東京都出身の山崎哲矢さんは、一昨年の平成XX年から行方不明となっています。哲矢さんは昭和XX年生まれ。大学の工学系研究科を修了後は農薬メーカーに就職し、大阪で生活していましたが、四年前の正月に帰省した後にご両親と連絡が取れなくなりました。ご両親は、その時はたまたま返信が遅いだけだと思っていたのですが、何度連絡しても返事が返ってこないことを心配して会社に確認したところ、帰省時点で既に退職していたことを知り……。」
テレビでは、ナレーターの概要説明後に再現VTRが流れ始めた。三人の会話は止まり、しばし画面に見入る。ほとんどは概要をなぞっている内容だったが、後半に気になる内容があった。
「哲矢さんが失踪してから半年後、お母様のスマホに不審なメッセージが届きました。『タスケテ!Yマチ!』という内容で、警察が調べたところ、発信元は群馬県Y町からほど近いO市の公衆電話ということが分かりましたが、それ以上のことは分かっていないそうです。」
それを見て吉井が口を開いた。
「群馬県Y町……?どっかで見た記憶あるけど思い出せないな。それより、スマホってことはSMSか。公衆電話から送れるのか?」
「ドコモにSMSセンターっていう電話番号があって、そこ経由で公衆電話からSMSが送れるんだよ。懐かしのポケベル打ちでな。あいつ、俺と同じで違法コピーやらハッキングにも興味持ってたから知っててもおかしくないな。あの頃のサブカルと言えば、ドラッグ、海外アングラ旅行、ハッキングあたりは定番で、背景が真っ黒い掲示板でいつも怪しい情報交換してたからな。まさに『危ない一号』に『ネットランナー』ってわけよ!」
※1 危ない一号:かつて存在したアンダーグラウンド雑誌。発刊元はデータハウス。ドラッグ、猟奇犯罪、盗聴などを特集するというとんでもない内容で、四文字の「サブカル」の代表例である……と作者は思っている(サブカルの定義を議論し始めると終わらないのでこのへんにしとこう)。今でもAmazonとかで古本が買えます。ちなみに、作者のペンネームの「青山」はこの本の編集長を勤めていた青山正明氏から。そして「済」はここに寄稿しており、また後に大問題ベストセラー「完全自殺マニュアル」を世に送り出すこととなる鶴見済氏から。
※2 ネットランナー:かつて存在していたインターネット関連雑誌。ソフトウェアの活用方法を紹介する雑誌……ではあるのだが、その内容は「悪用厳禁」の旗印の下、違法コピーやP2Pソフトの利用方法が紹介されるという悪ノリ全開だった。他にも、当時ネットで話題になった「先行者」をフィギュア化するなど、まだまだアングラ臭が残っていたネット文化の一翼を担った。九十年代後半~ゼロ年代前半にインターネットをやっていた方には「懐かしい!」かも?
済が昔話をしていると再現VTRが終わり、司会が視聴者への情報提供を呼び掛けて終わった。
番組は次の行方不明者に入ったが、「不審なメッセージ」というのが興味を惹くらしく、Twitterでハッシュタグが作られたり、5chではスレッドが立ったりとネットで話題になっていた。
「Y町か。あんな山の中に何があるんだ?」
「公衆電話からSMS送れるとか知らなかったー。」
「何年か前に病院で見た人に似てるなー。」
「北朝鮮の拉致なんじゃね?」
「『もしもし、お姉ちゃんだよ。』って電話がかかってきた事件とか、モールス信号みたいな電話が入ってた事件を思い出すなー。」
※3 「もしもし、お姉ちゃんだよ。」:九四年に発生したM.Hさん行方不明事件。行方不明の一年後、「もしもし、お姉ちゃんだよ。」という不審な電話があった。電話に出た妹が「どなたですか?」と尋ねたところ、「ひとみです。」と言って切れたが、事件との関連は不明。
※4 モールス信号みたいな電話:八九年に発生したH.Mさん行方不明事件。失踪から一、二年後に無言電話が掛かってきており、後ろでモールス信号のような音がしていたという。
三人でネットを少し見てみたところ、興味本位の勘ぐりをしていたり、全く関係ない同姓同名者のTwitterアカウントを本人か疑ったりと、あまり参考になる情報はなかった。
「やっぱりネットじゃちょっと信頼性に欠けるよなー。」
「ほとんどは興味本位の推測だね。」
そんなことを言っていると、CM明けに多数の電話オペレーターが映し出された。女性アナウンサーが視聴者から得られた情報を読み上げ始める。
「現在、視聴者の方から続々と情報が寄せられています。札幌から失踪した伊藤康弘さんに関しては、『新宿三丁目のコンビニで去年見た』、『歌舞伎町のホストクラブで三ヶ月ほど前に見た』という情報を複数頂きました。また、山崎哲矢さんについては、『大阪梅田で、カウンセリングのチラシを配っていた。』というお電話を数名の方から頂いております。時期は四、五年前ということです。番組では、引き続き情報を募集しています。」
その後も番組を追っていたが、追加情報は得られず終わった。
「山崎さんがサイエンス・ムーブメントだか科学の道だかにハマっていたのは間違いないみたいね。」
「しかし、失踪後の情報はないな。」
「これ以上の情報を得ようとしたら潜入が必要になりそうだな。俺はサークルに潜入しているし、杉永さんはMASKに潜入した……。」
通話にしばしの沈黙が流れる。
「おいおい、僕に潜入しろってか。」
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