マルチ商法女と戦っていたら、もっととんでもないものと戦うことになってしまった件

青山済

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第三章 サークル構成員吊し上げ作戦

第二十七話 吊し上げ会①~開戦~

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吊し上げ会当日。集合時間よりも一時間早く、済、小山内、陽子は新宿のカフェに集まった。直前の打ち合わせを行うためである。

「事前にシナリオを渡していた通り、今日はまず僕と杉永さんがイッチーと話し、途中で小山内さんに合流してもらいます。相手は最初に杉永さんの現状や将来の目標について聞いてくるはずです。ここではイッチーのことを聞き出し、後で吊し上げのネタに使いたいので、僕が『今日はイッチーさんの話を聞きにきたので、あなたのことを教えて欲しい。』と言います。杉永さんもここで同調して下さい。あなたから質問してもらっても大丈夫。」
「分かった。ウェブメディアに勤務してる設定も、サイバーテレビの人に話聞いてきたからバッチリよ!」

サイバーテレビというのは、毎朝テレビがインフォエージェントというウェブ企業と組んで運営しているインターネットテレビだ。去年開局したばかりだが、急速にユーザーを増やしていた。

「さすが杉永さん、よろしく!このフェーズでは、僕がイッチーに土日やってること、経営勉強の内容、将来の目標、自己投資の内容などについて聞き出します。状況を見て僕が中座し、小山内さんに連絡します。」
「分かりました。そしたら入店すればいいわけですね。」
「はい。小山内さんについては、投資で得た資金で大学に入りなおし、今は働きながら投資をしているという設定にします。まあこれはその通りなんですけどね。話としては、『資産が増えてきたのでそろそろ不動産投資や事業投資もしたいと思っている。ベンチャーに投資することもあるかもしれないので、起業を志す若者の考え方も聞いておきたい。イッチーさんの将来像とプランを確認して参考にしたい。』ということにして、これからの計画や売上予定、今やっている勉強の内容などについて突っ込みを入れていきましょう。」
「了解です。いやー、わくわくしますね!」

話が盛り上がったところで集合時間が迫ってきた。済と陽子のみ居酒屋に向かい、小山内はカフェに残る。



毎度のごとく市村から遅れると連絡が来たので、先に二人で入店して待つことにした。また別のカモと会っているのだろう。

四人入れば満席になる広さの和風半個室に入り、先に二人でビールを飲んでいると、わざとらしく頭を下げながら市村がやってきた。

「いやー、すみませんすみません!また遅れてしまって。」
「いえいえ、イッチーさんお忙しいですからね。こちら、この前話していた三木さんです。あ、それから、今日は僕が尊敬する人がイッチーさんの話を聞きたいと言ってくれたので、急遽呼んでます。」

念のため、今回は偽名で呼び合うことにしていた。杉永は「杉」から「三木」、小山内は「小山内」→「小山田」→「フリッパーズ・ギター」→「小沢」である。

「なるほど、そちらも気になりますね。紹介ありがとうございます!」
「三木です。よろしくお願いします。今はウェブメディアでディレクターやってて、青山さんとは学生時代の友達です。」
「はじめまして。イッチーといいます。ウェブメディアですかー!何だかキラキラしてますね!」
「いえいえ全然、泥臭い仕事ですよ。今日はイッチーさんが起業の勉強をしていると聞いてきました。私もそういうのに関心があるので。」
「なるほど。僕は今、経営の勉強をするコミュニティに所属してるんですよ。オンラインサロン機能も持っていて、毎週勉強会をしたり、仲間を集めたりしています。」
「三木さんには事前に話をしてたんですが、ターリーさんやサスケさんも同じ団体に入ってるんですよね?」
「あ、オタク飲み会の話もされてたんですね。そうですそうです。ワタルさんも参加してくれてる飲み会がありまして、同じサロンに入っている仲間と運営してます。ターリー、サスケも僕と同じように仲間集めをやってます。僕らは将来の夢を叶えるために起業をしようと頑張っているんですよ。三木さんには何か目標とかありますか?」
「そうですね、私も将来ウェブ関係で起業したいと考えてるんですけど、やっぱり起業ってそれなりにリスクあるじゃないですか。なので、ウェブ系以外にもいくつか事業をやってリスク分散したいと思ってるんですよね。」
「なるほど。それなら僕らの活動にも合うかもしれないですね。僕らはあらかじめファンを増やしておくという方法で経営を安定させようとしています。このために、チームを作る活動をやってるんですよ。」
「チームを作る活動って、具体的に何してるんですか?」
「色んな勉強会とかイベントに出かけて行って、知り合いを増やすんですよ。知り合ったら皆さんとお話をします。そこで気が合いそうな人がいたら、師匠と会ってもらう感じですね。」
「この間、吉井が紹介してもらったような感じですか?」
「そうですそうです。吉井さんはうちの師匠から関西の人を紹介しましたけどね。ところで三木さんは、夢のためにいくらぐらい必要ですか?」
「うーん、具体的には考えてなかったけど、月五十万くらいあれば十分ですかね。」
「それなら僕らのビジネスでも行けそうですね。」
「イッチーさんって、どんなビジネスやってるんですか?」
「オーガニック製品とかサプリメントを扱ってるんですよ。僕はフリーのエンジニアをやる傍ら、商品についてのマーケティングをやってます。」

話が盛り上がり、市村は完全にカモが来たと思いこんでいる。情報も聞き出せたところで、済はトイレに立った。個室の中から小山内にLINEを送った。第二段階の始まりである。
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