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第三章 サークル構成員吊し上げ作戦
第二十四話 スパイ、潜入
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市村に促され、吉井が自己紹介を始める。
「吉井と言います。ワタルとは大学の同期です。今は大阪で化学系の開発職についているのですが、ちょっと経営や不労所得に興味がありまして。市村さんが経営の勉強をされていると聞いて、ちょっと話を伺ってみたいなと。」
「なるほどありがとうございます。僕は今、経営をすることで夢を叶えるコミュニティに入ってるんですよ。吉井さんは夢とかありますか?」
「そうですね、僕もワタルと同じく子供の頃からインターネットに親しんでたんですが、最近のネットはちょっと雰囲気が変わってきたなと。何というか、ディープな話ができなくなった気がするんですよね。昔は違法コピーとか爆弾の作り方とかドラッグの合成法とか怪文書とか色々、危ないものを見て楽しむっていうカルチャーがあったけど、最近はめっきりなくなりましたよね。ここ二十年くらいで一気にユーザーが増えたので当たり前と言えば当たり前なんですが。とはいえ、昔のディープなインターネットも楽しかったので、あの頃の感じをまたやりたいんですよ。それで、仕事をしつつもそういうコミュニティやSNSを立ち上げられたらなと思ってるんです。市村さんはチーム作りが大事とワタルに言っていたそうですね?」
「はい。僕の所属してるコミュニティは、起業にあたってまず仲間、チームを作ることを中心に活動してます。こうすると、起業した時に仲間がお店を使ってくれるし、仕事の仲間も集められる。僕の師匠はエンジニアから脱サラして会社を興したんですが、この前も神田に新しくオーガニックショップを出したんですよ。そしたらすぐに行列店になって。何故かというと、仲間が来てくれるんですよね。これを僕達は『ファンを増やしておく』と言っています。ところで、吉井さんの夢にはどれくらいお金があれば良いですか?」
「そうですね、ウェブサイト運営なので、月三十万くらいを数ヶ月貯めて初期構築に充て、その後は維持費に使えればなと。不労所得というか、他人が働いてくれてれば会社に勤めてても夢を続けられるじゃないですか。そう思って話を聞きに来たんです。」
「なるほど月三十万ですか、それでしたら僕らのコミュニティでも十分可能ですね!吉井さん大阪から来てるんでしたら、今夜師匠に会いませんか?うちの本部は大阪なので、師匠から大阪の人を紹介してもらえるかもしれません。」
「良いんですか?是非是非!」
吉井が大阪から来たと知って焦ったのか、あるいはノルマが決まっているのか、思ったよりもあっさり師匠に会う流れになった。心象の悪い済がいると情報を出さない可能性もあるため、吉井のみ送り出し、報告を待つことにした。
◇
翌朝、二人は東京駅近くのカフェで落ち合うことにした。八重洲の地下に入る。
「どうだった、師匠は。」
「いやー、結構簡単に化けの皮を剥がすからびっくりしたわ。師匠はこしじさんて人で、色黒のオッサンだったんだけど、俺が『夢のために月三十万必要なので不労所得が欲しいです!とにかく不労所得の稼ぎ方を知りたい。師匠とその周りはどんな不労所得持ってるんですか!?』って聞いたら、あまりに具体的だったのか、うろたえた様子で『ネ、ネットワークビジネスとか、情報商材とか、金融商品とか……。』って言うわけよ。」
「こしじさんか、俺が会った人と同じだな。やはり市村の師匠だったか。というか、あっさりバラしすぎだろ!笑」
「俺もそう思った。しかも、ネットワークビジネスって言った瞬間に市村さんが『おいおい、言っちゃったよ!』みたいな顔してて分かりやす過ぎたわ笑 あと、情報商材に金融商品て、他にマシなのはないのか!ってツッコミ抑えるのに必死だったぞ。金融商品て売るのに何か資格いるんじゃないのか?絶対持ってないぞあのオッサン。あと、場所は秋葉原のベローチェだったな。コーヒー一杯でずっと居座った上に奢りもなかったんだが、本当に儲かってるのか?怪しいもんだな。」
「ろくなビジネスやってないなー、とにかく、市村がサークルのメンバーであることは確実になったな、ありがとう。」
「まだカモだと思ってるみたいで、今度大阪の師匠を紹介してくれることになったから潜入してみるわ。これからどうするよ?」
「情報はほぼ取り終えたから、吊るし上げ会の準備に入るか。ヨッさんは引き続き潜入を進めてくれ。こしじとネットワークビジネスについては、ヨッさんからたまたま聞いたことにしとく。」
「分かった。大阪で奴らの情報が取れたら、また連絡する。」
東京駅に吉井を送り、中野へ帰る電車の中で、済は吊し上げ会の構想を練り始めた。
「吉井と言います。ワタルとは大学の同期です。今は大阪で化学系の開発職についているのですが、ちょっと経営や不労所得に興味がありまして。市村さんが経営の勉強をされていると聞いて、ちょっと話を伺ってみたいなと。」
「なるほどありがとうございます。僕は今、経営をすることで夢を叶えるコミュニティに入ってるんですよ。吉井さんは夢とかありますか?」
「そうですね、僕もワタルと同じく子供の頃からインターネットに親しんでたんですが、最近のネットはちょっと雰囲気が変わってきたなと。何というか、ディープな話ができなくなった気がするんですよね。昔は違法コピーとか爆弾の作り方とかドラッグの合成法とか怪文書とか色々、危ないものを見て楽しむっていうカルチャーがあったけど、最近はめっきりなくなりましたよね。ここ二十年くらいで一気にユーザーが増えたので当たり前と言えば当たり前なんですが。とはいえ、昔のディープなインターネットも楽しかったので、あの頃の感じをまたやりたいんですよ。それで、仕事をしつつもそういうコミュニティやSNSを立ち上げられたらなと思ってるんです。市村さんはチーム作りが大事とワタルに言っていたそうですね?」
「はい。僕の所属してるコミュニティは、起業にあたってまず仲間、チームを作ることを中心に活動してます。こうすると、起業した時に仲間がお店を使ってくれるし、仕事の仲間も集められる。僕の師匠はエンジニアから脱サラして会社を興したんですが、この前も神田に新しくオーガニックショップを出したんですよ。そしたらすぐに行列店になって。何故かというと、仲間が来てくれるんですよね。これを僕達は『ファンを増やしておく』と言っています。ところで、吉井さんの夢にはどれくらいお金があれば良いですか?」
「そうですね、ウェブサイト運営なので、月三十万くらいを数ヶ月貯めて初期構築に充て、その後は維持費に使えればなと。不労所得というか、他人が働いてくれてれば会社に勤めてても夢を続けられるじゃないですか。そう思って話を聞きに来たんです。」
「なるほど月三十万ですか、それでしたら僕らのコミュニティでも十分可能ですね!吉井さん大阪から来てるんでしたら、今夜師匠に会いませんか?うちの本部は大阪なので、師匠から大阪の人を紹介してもらえるかもしれません。」
「良いんですか?是非是非!」
吉井が大阪から来たと知って焦ったのか、あるいはノルマが決まっているのか、思ったよりもあっさり師匠に会う流れになった。心象の悪い済がいると情報を出さない可能性もあるため、吉井のみ送り出し、報告を待つことにした。
◇
翌朝、二人は東京駅近くのカフェで落ち合うことにした。八重洲の地下に入る。
「どうだった、師匠は。」
「いやー、結構簡単に化けの皮を剥がすからびっくりしたわ。師匠はこしじさんて人で、色黒のオッサンだったんだけど、俺が『夢のために月三十万必要なので不労所得が欲しいです!とにかく不労所得の稼ぎ方を知りたい。師匠とその周りはどんな不労所得持ってるんですか!?』って聞いたら、あまりに具体的だったのか、うろたえた様子で『ネ、ネットワークビジネスとか、情報商材とか、金融商品とか……。』って言うわけよ。」
「こしじさんか、俺が会った人と同じだな。やはり市村の師匠だったか。というか、あっさりバラしすぎだろ!笑」
「俺もそう思った。しかも、ネットワークビジネスって言った瞬間に市村さんが『おいおい、言っちゃったよ!』みたいな顔してて分かりやす過ぎたわ笑 あと、情報商材に金融商品て、他にマシなのはないのか!ってツッコミ抑えるのに必死だったぞ。金融商品て売るのに何か資格いるんじゃないのか?絶対持ってないぞあのオッサン。あと、場所は秋葉原のベローチェだったな。コーヒー一杯でずっと居座った上に奢りもなかったんだが、本当に儲かってるのか?怪しいもんだな。」
「ろくなビジネスやってないなー、とにかく、市村がサークルのメンバーであることは確実になったな、ありがとう。」
「まだカモだと思ってるみたいで、今度大阪の師匠を紹介してくれることになったから潜入してみるわ。これからどうするよ?」
「情報はほぼ取り終えたから、吊るし上げ会の準備に入るか。ヨッさんは引き続き潜入を進めてくれ。こしじとネットワークビジネスについては、ヨッさんからたまたま聞いたことにしとく。」
「分かった。大阪で奴らの情報が取れたら、また連絡する。」
東京駅に吉井を送り、中野へ帰る電車の中で、済は吊し上げ会の構想を練り始めた。
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