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第三章 サークル構成員吊し上げ作戦
第十八話 プロローグを思い出せ
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市村のLINEプロフィールを見た済の頭の中を、様々な情報がフラッシュバックした。
LINEの「自分が源☆」、メッセージで使われる古い顔文字、秋葉原のベローチェで聞いた「自己投資」、「夢の実現にかかる資金」、「経営の勉強」、「師匠」……。全ての情報がサークルに繋がっていた。
タケシの場合は後になって相手がサークルと気づいたが、今回はほぼリアルタイムで気づくことができた。もしも彼らを呼び出し、「お前ら、俺は気づいていたぞ、サークルに入っているんだろう?」とやったらどんな反応をするのだろうか。もしかしたら良いネタになり、音声をYouTubeにでもアップすればバズるかもしれない。ネット歴が長い済は、この先の展開にワクワクしてしまう。そのためには、彼らがサークルに所属しているという確実な情報が欲しかった。今はあまりにも情報が足りない。「お前らのことは調べさせてもらった。本名は○○だろう。」という風に相手を脅すことも考えると、個人情報を特定しつつ調査を進めたかった。こうして入里麻里奈に続く特定作戦、プロジェクト・オタク飲み会が始まったのである。
何か特定に繋がりそうな情報は……と二人に関する記憶を辿ると、ターリーの声が脳内に蘇ってきた。
「ヒューマンビートボックスの大会スタッフをやってるんですよ。」
今は何にでもウェブサイトを作る時代だ。イベントや大会についても、ホームページやスタッフブログに写真や名前が掲載されており、そこから情報を割り出せることがある。一度口論していることもあり、返信が来ない可能性もあったが、市村にLINEをしてみる。オタク飲み会で何度も顔を合わせていたにも関わらず、市村以外の主催からLINEの交換を求められたことはなかった。これも、他のメンバーのカモには手を出さないというサークルのルールによるものだろう。
「この間はありがとうございました!ところでターリーさんが参加されてたヒューマンビートボックスの大会って名前分かりますか?大きめの大会だったら凄いなと思って!」
少し持ち上げ風味の文章にしたところ、翌朝返事が来た。
「ターリーが参加してたのはZEROって大会ですよ^_^ 日本で一番大きい大会らしいです(^_^)v」
「なるほどありがとうございます、やっぱりターリーさん凄いですねー!!」
その日は平日だったため、会社から帰ってから「ZERO」について調査を始める。
「ヒューマンビートボックス ZERO」で検索したところ、すぐに大会のホームページが見つかった。確かに、日本最大のヒューマンビートボックス大会のようだ。参加者一覧は見つかったものの、残念ながらスタッフの情報は見当たらない。個人情報保護が厳しくなっている昨今である。おいそれと情報は出さないのだろう。ホームページをチェックするうち、ZEROが単独の大会ではなく、「ドリワン」という大会で行っているコンテストの一つであることが分かった。「ドリワン」というのは夢に向けて頑張っている人のNo.1を決めるコンテストで、Dコレクションという企業が主催している。様々なコンテストをまとめて1つのイベントとしており、ミスコンテストやミスターコンテスト、歌唱力コンテストからお笑いコンテストまでが含まれていた。ZEROはその中の1つであり、ヒューマンビートボックス界の実力者が集まること自体は確かなようだ。
済は、まともなイベントなのかもしれないと思いつつも、ホームページに掲載されていた動画を見ることにした。すると、そこには異様な光景が広がっていた。大して面白くもない漫才にオーバーな笑いを起こし、またそこまで格好良くは見えないミスターコンテスト参加者に激しい声援を送る、幕張メッセ一杯の観客……。まるでカルト教団の集会のようだった。一気に怪しさを感じ始めた済は、すぐにドリワンについて検索することにした。すると、表示された関連キーワードは次のようなものだった。
「ドリワン やらせ」
「ドリワン マルチ」
「ドリワン ニューステージ」
「ドリワン ドリームランド」
ニューブリッジの時と全く同じパターンである。ドリワンと旧ドリームランド=現サークルの関係について調べてみると、脱会者の情報をまとめたブログが見つかった。Twitterアカウント自体は削除されているものの、引用部分は記事として残っている。その記事を読んだところ、ドリワンが「ドリームランドナンバーワン」の略であること、ヒューマンビートボックスや歌唱力のコンテストは真面目なコンテストであるものの、ミスコンやミスターコンに関しては出場者のうちサークルの関係者がほとんどを占めていること、ドリームランドがサークルになってからも主催は変わらずサークルであることが分かった。このコンテストとサークルとの関係はほぼ確実だったものの、済はTwitterで脱会者から情報を集めることにした。情報収集用のアカウントにログインし、ドリワンのURLを記載したツイートを投稿する。
「知り合いがドリワンてイベントのZEROっていうコンテストのスタッフやってるみたいなんですが、これもサークル関係なんでしょうか?」
すると、しばらくして複数人からリプライが付いた。
「はいそうです。ドリームランド時代から主催してるイベントですね。」
「スタッフは勿論、観客も7割くらいは関係者ですよ。あとは騙されて連れてこられた一般人ですね。」
「8,000円って価格の割にレベル低いから、怒って帰る人もいました笑」
これでターリーがサークルの人間であることがほぼ確実になった。済は続いて、個人情報の特定に取り掛かった。
LINEの「自分が源☆」、メッセージで使われる古い顔文字、秋葉原のベローチェで聞いた「自己投資」、「夢の実現にかかる資金」、「経営の勉強」、「師匠」……。全ての情報がサークルに繋がっていた。
タケシの場合は後になって相手がサークルと気づいたが、今回はほぼリアルタイムで気づくことができた。もしも彼らを呼び出し、「お前ら、俺は気づいていたぞ、サークルに入っているんだろう?」とやったらどんな反応をするのだろうか。もしかしたら良いネタになり、音声をYouTubeにでもアップすればバズるかもしれない。ネット歴が長い済は、この先の展開にワクワクしてしまう。そのためには、彼らがサークルに所属しているという確実な情報が欲しかった。今はあまりにも情報が足りない。「お前らのことは調べさせてもらった。本名は○○だろう。」という風に相手を脅すことも考えると、個人情報を特定しつつ調査を進めたかった。こうして入里麻里奈に続く特定作戦、プロジェクト・オタク飲み会が始まったのである。
何か特定に繋がりそうな情報は……と二人に関する記憶を辿ると、ターリーの声が脳内に蘇ってきた。
「ヒューマンビートボックスの大会スタッフをやってるんですよ。」
今は何にでもウェブサイトを作る時代だ。イベントや大会についても、ホームページやスタッフブログに写真や名前が掲載されており、そこから情報を割り出せることがある。一度口論していることもあり、返信が来ない可能性もあったが、市村にLINEをしてみる。オタク飲み会で何度も顔を合わせていたにも関わらず、市村以外の主催からLINEの交換を求められたことはなかった。これも、他のメンバーのカモには手を出さないというサークルのルールによるものだろう。
「この間はありがとうございました!ところでターリーさんが参加されてたヒューマンビートボックスの大会って名前分かりますか?大きめの大会だったら凄いなと思って!」
少し持ち上げ風味の文章にしたところ、翌朝返事が来た。
「ターリーが参加してたのはZEROって大会ですよ^_^ 日本で一番大きい大会らしいです(^_^)v」
「なるほどありがとうございます、やっぱりターリーさん凄いですねー!!」
その日は平日だったため、会社から帰ってから「ZERO」について調査を始める。
「ヒューマンビートボックス ZERO」で検索したところ、すぐに大会のホームページが見つかった。確かに、日本最大のヒューマンビートボックス大会のようだ。参加者一覧は見つかったものの、残念ながらスタッフの情報は見当たらない。個人情報保護が厳しくなっている昨今である。おいそれと情報は出さないのだろう。ホームページをチェックするうち、ZEROが単独の大会ではなく、「ドリワン」という大会で行っているコンテストの一つであることが分かった。「ドリワン」というのは夢に向けて頑張っている人のNo.1を決めるコンテストで、Dコレクションという企業が主催している。様々なコンテストをまとめて1つのイベントとしており、ミスコンテストやミスターコンテスト、歌唱力コンテストからお笑いコンテストまでが含まれていた。ZEROはその中の1つであり、ヒューマンビートボックス界の実力者が集まること自体は確かなようだ。
済は、まともなイベントなのかもしれないと思いつつも、ホームページに掲載されていた動画を見ることにした。すると、そこには異様な光景が広がっていた。大して面白くもない漫才にオーバーな笑いを起こし、またそこまで格好良くは見えないミスターコンテスト参加者に激しい声援を送る、幕張メッセ一杯の観客……。まるでカルト教団の集会のようだった。一気に怪しさを感じ始めた済は、すぐにドリワンについて検索することにした。すると、表示された関連キーワードは次のようなものだった。
「ドリワン やらせ」
「ドリワン マルチ」
「ドリワン ニューステージ」
「ドリワン ドリームランド」
ニューブリッジの時と全く同じパターンである。ドリワンと旧ドリームランド=現サークルの関係について調べてみると、脱会者の情報をまとめたブログが見つかった。Twitterアカウント自体は削除されているものの、引用部分は記事として残っている。その記事を読んだところ、ドリワンが「ドリームランドナンバーワン」の略であること、ヒューマンビートボックスや歌唱力のコンテストは真面目なコンテストであるものの、ミスコンやミスターコンに関しては出場者のうちサークルの関係者がほとんどを占めていること、ドリームランドがサークルになってからも主催は変わらずサークルであることが分かった。このコンテストとサークルとの関係はほぼ確実だったものの、済はTwitterで脱会者から情報を集めることにした。情報収集用のアカウントにログインし、ドリワンのURLを記載したツイートを投稿する。
「知り合いがドリワンてイベントのZEROっていうコンテストのスタッフやってるみたいなんですが、これもサークル関係なんでしょうか?」
すると、しばらくして複数人からリプライが付いた。
「はいそうです。ドリームランド時代から主催してるイベントですね。」
「スタッフは勿論、観客も7割くらいは関係者ですよ。あとは騙されて連れてこられた一般人ですね。」
「8,000円って価格の割にレベル低いから、怒って帰る人もいました笑」
これでターリーがサークルの人間であることがほぼ確実になった。済は続いて、個人情報の特定に取り掛かった。
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