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第二章 マルチ商法の巣窟、新橋
第十三話 Google関連キーワードが示した、新橋ニューブリッジの真実
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あの夜のことは鮮明に思い出すことができた。当時は激詰めした上に金も出させたので多少はスッキリしたが、選民主義をぶつけられたイライラは三年経った今でも忘れていない。タケシについては色黒でごつごつした顔を思い出すだけで気分が悪くなるが、記憶を辿るうち、パーティー自体は楽しかったし、ニューブリッジも悪い店ではなかったことを思い出した。何となくあの店がまだあるか気になり、眠い目をこすりながらGoogle検索をかける。
「『新橋 ニューブリッジ』と……。あーあったあった、意外に残ってるもんなんだな。上がってる写真もあの時の店で間違いない。」
ニューブリッジはまだ営業しており、口コミサイトの評価も悪くない。妙な懐かしさが胸を包んだ。ところが、ふと目に飛び込んできた関連キーワードが、済の眠気を吹き飛ばすことになる。
「『新橋 ニューブリッジ 勧誘』、『新橋 ニューブリッジ ネットワークビジネス』、『新橋 ニューブリッジ マルチ商法』……!?ちょっと待てよ、いやまさか……。」
確かに思い出してみて違和感はあった。ネットのオフ会でもないのにニックネームで呼び合うパーティー、何をしているのか教えてくれない自営業者たち、受付で紹介者を書くシステム……。頭の中にあったピースをつなげていくうちに、疑惑は確信に変わりつつあった。とはいえまだ確定的な証拠が出てきたわけではない。誰かに話したくて仕方なかった済は、吉井にメッセージを送った。
「ヨッさん、まだ起きてるか!?」
「おう、どうしたこんな夜中に。」
「至急一緒に調べてもらいたいことがあるんだよ!」
「おいおい、半年に一回程度で良かったんじゃないのか笑」
「ちょっと記憶を辿っていたら、とんでもなくヤバいところに出入りしてたっぽいんだよ!」
「お前も色々ネタもってるなー、変なところに出入りしすぎだろ笑」
結局その日も半徹夜状態で検索を重ねることになった。翌朝、二人で検索した結果を組み合わせたところ、ニューブリッジはニューステージというマルチ商法団体の勧誘によく使われる店であるらしいこと、勧誘しているのはニューステージの中でもドリームランドという販売チームであること、ニューブリッジはMASKという自己啓発セミナー会社と繋がっており、そこで死亡事故が起きていることなどが分かった。さらに、吉井からTwitterに脱会者のアカウントが複数存在していることを教えてもらった済は、脱会者への接触を試みることにした。調査用アカウントを新規作成し、「#ドリームランド」というハッシュタグで検索して出てくるアカウントをフォローする。その中に、「もちもち」というアカウントがあった。プロフィールに
「200X年~201X年までドリームランドに所属。被害者を減らすために活動しています、お気軽に連絡・相談下さい。」
と記載されていたため、早速相談したい旨リプライを飛ばし、DMで相談してみた。手短に当時の出来事を説明する。
「……ということがあったんですが、これってマルチの勧誘だったんでしょうか?最近思い出して気になってまして。」
「はい、それは典型的な勧誘パターンですね。ドリームランドの場合、ギリギリまで自分達がマルチ商法やってることを明かさないので、気づかない人も多いです。」
「やっぱりそうでしたか……。そうなんですよね、僕のイメージだと、ホームパーティーに呼ばれたら見たこともないサプリメントがあったり、鍋のデモが始まったり、カフェに連れ出されていきなりマルチの説明が始まるものだと思っていたのですが、全く違うので気づきませんでした。」
「それでワタルさん、ニューブリッジのパーティーに呼ばれてましたよね?妙にタケちゃんと店員の仲が良くなかったですか?」
「あーそうですね、お互いニックネームで呼び合ってたし、常連以上の何かを感じました。」
「実はあの店、経営者がニューブリッジの人で、従業員も全員ドリームランドの人なんですよ。つまりタケちゃんも従業員もグルなんです。」
タケちゃんも従業員もグル……。済の背中を冷たいものが走った。それだけではない。あのパーティーが勧誘用なのだとしたら、よく来ていたあの人やあの人も全員関係者だったのだろう。数年前に見た顔が頭の中に浮かび、消えていった。そして、何故タケシも従業員も師匠も皆八丁堀に住んでいたのかについても、もちもちさんから理由を教えてもらった。マルチの買い込みをしているせいで金がなくなり、シェハウスを勧められるのだ。そしてそのシェアハウスの大家は……師匠なのだった。恐らくタケシやその他の人々は、八丁堀のシェアハウスに住んでいたのだろう。家賃をユウスケに吸い取られるシェアハウスに。
この件についてはまだまだ闇がありそうだと思いながらメッセージをやり取りしていると、もちもちさんから飲み会に誘われた。
「もしも興味おありでしたら、今度脱会者の飲み会やるので来ませんか?ネットのオフ会って、キャンセルする人が多いので多めに意思表明してもらったほうがこちらも助かりますし。新橋周辺で活動していた人も来るかもしれません。」
済は二つ返事で参加を申し込み、寝不足の体を布団に沈めた。
「『新橋 ニューブリッジ』と……。あーあったあった、意外に残ってるもんなんだな。上がってる写真もあの時の店で間違いない。」
ニューブリッジはまだ営業しており、口コミサイトの評価も悪くない。妙な懐かしさが胸を包んだ。ところが、ふと目に飛び込んできた関連キーワードが、済の眠気を吹き飛ばすことになる。
「『新橋 ニューブリッジ 勧誘』、『新橋 ニューブリッジ ネットワークビジネス』、『新橋 ニューブリッジ マルチ商法』……!?ちょっと待てよ、いやまさか……。」
確かに思い出してみて違和感はあった。ネットのオフ会でもないのにニックネームで呼び合うパーティー、何をしているのか教えてくれない自営業者たち、受付で紹介者を書くシステム……。頭の中にあったピースをつなげていくうちに、疑惑は確信に変わりつつあった。とはいえまだ確定的な証拠が出てきたわけではない。誰かに話したくて仕方なかった済は、吉井にメッセージを送った。
「ヨッさん、まだ起きてるか!?」
「おう、どうしたこんな夜中に。」
「至急一緒に調べてもらいたいことがあるんだよ!」
「おいおい、半年に一回程度で良かったんじゃないのか笑」
「ちょっと記憶を辿っていたら、とんでもなくヤバいところに出入りしてたっぽいんだよ!」
「お前も色々ネタもってるなー、変なところに出入りしすぎだろ笑」
結局その日も半徹夜状態で検索を重ねることになった。翌朝、二人で検索した結果を組み合わせたところ、ニューブリッジはニューステージというマルチ商法団体の勧誘によく使われる店であるらしいこと、勧誘しているのはニューステージの中でもドリームランドという販売チームであること、ニューブリッジはMASKという自己啓発セミナー会社と繋がっており、そこで死亡事故が起きていることなどが分かった。さらに、吉井からTwitterに脱会者のアカウントが複数存在していることを教えてもらった済は、脱会者への接触を試みることにした。調査用アカウントを新規作成し、「#ドリームランド」というハッシュタグで検索して出てくるアカウントをフォローする。その中に、「もちもち」というアカウントがあった。プロフィールに
「200X年~201X年までドリームランドに所属。被害者を減らすために活動しています、お気軽に連絡・相談下さい。」
と記載されていたため、早速相談したい旨リプライを飛ばし、DMで相談してみた。手短に当時の出来事を説明する。
「……ということがあったんですが、これってマルチの勧誘だったんでしょうか?最近思い出して気になってまして。」
「はい、それは典型的な勧誘パターンですね。ドリームランドの場合、ギリギリまで自分達がマルチ商法やってることを明かさないので、気づかない人も多いです。」
「やっぱりそうでしたか……。そうなんですよね、僕のイメージだと、ホームパーティーに呼ばれたら見たこともないサプリメントがあったり、鍋のデモが始まったり、カフェに連れ出されていきなりマルチの説明が始まるものだと思っていたのですが、全く違うので気づきませんでした。」
「それでワタルさん、ニューブリッジのパーティーに呼ばれてましたよね?妙にタケちゃんと店員の仲が良くなかったですか?」
「あーそうですね、お互いニックネームで呼び合ってたし、常連以上の何かを感じました。」
「実はあの店、経営者がニューブリッジの人で、従業員も全員ドリームランドの人なんですよ。つまりタケちゃんも従業員もグルなんです。」
タケちゃんも従業員もグル……。済の背中を冷たいものが走った。それだけではない。あのパーティーが勧誘用なのだとしたら、よく来ていたあの人やあの人も全員関係者だったのだろう。数年前に見た顔が頭の中に浮かび、消えていった。そして、何故タケシも従業員も師匠も皆八丁堀に住んでいたのかについても、もちもちさんから理由を教えてもらった。マルチの買い込みをしているせいで金がなくなり、シェハウスを勧められるのだ。そしてそのシェアハウスの大家は……師匠なのだった。恐らくタケシやその他の人々は、八丁堀のシェアハウスに住んでいたのだろう。家賃をユウスケに吸い取られるシェアハウスに。
この件についてはまだまだ闇がありそうだと思いながらメッセージをやり取りしていると、もちもちさんから飲み会に誘われた。
「もしも興味おありでしたら、今度脱会者の飲み会やるので来ませんか?ネットのオフ会って、キャンセルする人が多いので多めに意思表明してもらったほうがこちらも助かりますし。新橋周辺で活動していた人も来るかもしれません。」
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