6 / 62
第一章 マルチ商法女、攻撃作戦
第五話 ニューリ・特定
しおりを挟む
怪しげなサプリメントの投稿からさらに二ヶ月ほど辿ったところ、二人は入里麻理菜がアメリカ遠征について投稿していることを発見した。
「こいつ、十月にアメリカに行った投稿してるけど、どうも怪しいな。」
「一週間くらい滞在してるみたいだな。毎日何か投稿してる。」
「ちょっと待て、これ会社の研修か何かじゃないか?」
アメリカに着いてすぐの投稿にはこうあった。
「今日からアメリカ!飛行機の窓からは、日本では見られない景色が広がってました☆アメリカでも会社の祭典で勉強してきまーす(^o^)」
投稿から、会社のイベントであることは間違いなかった。そこからはアメリカで買った食事やイベントの様子が毎日投稿されていた。
「これ、ユタ州の食料品屋だな。ということは遠征先はユタ州か。ますます怪しい。」
済が注目したのは写真に写っていた紙袋だった。そこには「Harmons」というロゴが印刷されており、調べたところユタ州で展開されている食料品チェーンであることが分かった。ユタ州はモルモン教の本拠地ということでも有名だが、マルチ商法の本部が多いことでも知られている。
さらに投稿を辿ると、ユタ州の州都、ソルトレイクシティで行われたセミナーの様子が投稿されていた。その中の一枚の画像を、済は見逃さなかった。
「『常識に囚われてる人達じゃ絶対に参加できない、素晴らしいイベントに参加して凄くワクワク!どう?こっちの世界が少しでも伝わるかな!?(*^^*)』か。モノクロ自撮りまで付けて随分とご機嫌だな。」
「末尾についてる顔文字が絶妙に古いのは一体何なんだよ。いやちょっと待て、この写真ひょっとして手がかりになるんじゃないか?」
「どれだ?」
「ほら、これだよこれ!薄暗いセミナールームの奥に、めちゃめちゃ薄いけど浮かんでるやつ!」
済が指摘したのは、一枚の講演写真だった。薄暗いセミナールームを後ろから撮ったもので、かなり奥の方に登壇者がいることくらいしか分からない。しかし、何度も特定祭りに参加していた済は目ざとかった。登壇者の真上に、目を凝らさないと気づかない程度の大きさで、距離が遠すぎるためにやや滲んだ文字が浮かんでいた。画像をダウンロードし、拡大してみる。画像編集ツールでコントラストを上げると、そこに浮かび上がったのはこの文字だった。
NatureVantage
「これ、さっきのサプリを作ってる会社だな。」
「会社のイベントにデカデカと出ているということは間違いないな。入里麻理菜はマルチ商法団体、NatureVantageの会員だ。ちょっと調べてみたけどNatureVantageは前に薬機法違反の勧誘をして処分されているし、被害者の会も存在してる。これはアウトだな。」
「それにしても、海外にまで行くということはかなり成績が良いのか?」
「いや、Facebookの経歴では現職がコールセンターになってるし、コールセンターで何かの賞を貰ったという投稿があった。多分NatureVantageのコールセンターで働きつつ勧誘もやってるんだろう。それで、日本支部のコールセンターで優秀だったから米国本部のセミナーにも呼ばれたと、大方そんなとこだろうな。もう少し詰めてから次の行動に移るぞ。」
「ついに証拠を突きつけるんだな!!」
具体的な会社を特定してしまえばこっちのものである。NatureVantageの情報を調べたところ、日本支部とそのコールセンターは中目黒カルマタワーに入っていることが分かった。平日昼間に入里麻理菜が写真を投稿していたビルである。さらにTwitterのフォローを確認したところ、NatureVantageの公式アカウントをフォローしており、FacebookではNatureVantageのページにいいね!していることが分かった。ここまでくれば確実だった。
「よし、ここまでくれば間違いないな。後で証拠を消されたら困るから、ヨッさんも協力して証拠のスクショを保管してくれ。」
「最後まで抜かりないな笑」
「喧嘩を売られたからには徹底的にやらんとな。そういえばTwitterのアカウント、Nyuri0413ってなってたけど末尾の文字列は誕生日かな?もうすぐじゃないか。」
「Facebookでも誕生日が四月十三日になってるな。今度の土曜日か。高専生連合だっけ?学生団体の実行委員やってるからか去年の誕生日も沢山メッセージ来てるみたいだな。」
「ヨッさんも見られるってことは誕生日とメッセージは公開になってるんだな。ん?待てよ、もうすぐ誕生日で、メッセージは公開、つまり誰でもできる……。なるほど。あと、そういえば同期に同じような団体の活動してる奴いなかったっけ。」
「あー新城だろ。あいつは確か高専生連合から分派した高専生連盟の代表で、入里とは仲悪かったな。」
「なるほど、内ゲバで生まれた団体の代表と入里は犬猿の仲、そして誕生日メッセージは全体公開……。ちょっと新城に連絡してみるわ。」
吉井と会話しているうち、済の頭の中には入里を叩き潰す、あるアイディアが浮かんだ。済はLINEを開き、新城にメッセージを送った。
「こいつ、十月にアメリカに行った投稿してるけど、どうも怪しいな。」
「一週間くらい滞在してるみたいだな。毎日何か投稿してる。」
「ちょっと待て、これ会社の研修か何かじゃないか?」
アメリカに着いてすぐの投稿にはこうあった。
「今日からアメリカ!飛行機の窓からは、日本では見られない景色が広がってました☆アメリカでも会社の祭典で勉強してきまーす(^o^)」
投稿から、会社のイベントであることは間違いなかった。そこからはアメリカで買った食事やイベントの様子が毎日投稿されていた。
「これ、ユタ州の食料品屋だな。ということは遠征先はユタ州か。ますます怪しい。」
済が注目したのは写真に写っていた紙袋だった。そこには「Harmons」というロゴが印刷されており、調べたところユタ州で展開されている食料品チェーンであることが分かった。ユタ州はモルモン教の本拠地ということでも有名だが、マルチ商法の本部が多いことでも知られている。
さらに投稿を辿ると、ユタ州の州都、ソルトレイクシティで行われたセミナーの様子が投稿されていた。その中の一枚の画像を、済は見逃さなかった。
「『常識に囚われてる人達じゃ絶対に参加できない、素晴らしいイベントに参加して凄くワクワク!どう?こっちの世界が少しでも伝わるかな!?(*^^*)』か。モノクロ自撮りまで付けて随分とご機嫌だな。」
「末尾についてる顔文字が絶妙に古いのは一体何なんだよ。いやちょっと待て、この写真ひょっとして手がかりになるんじゃないか?」
「どれだ?」
「ほら、これだよこれ!薄暗いセミナールームの奥に、めちゃめちゃ薄いけど浮かんでるやつ!」
済が指摘したのは、一枚の講演写真だった。薄暗いセミナールームを後ろから撮ったもので、かなり奥の方に登壇者がいることくらいしか分からない。しかし、何度も特定祭りに参加していた済は目ざとかった。登壇者の真上に、目を凝らさないと気づかない程度の大きさで、距離が遠すぎるためにやや滲んだ文字が浮かんでいた。画像をダウンロードし、拡大してみる。画像編集ツールでコントラストを上げると、そこに浮かび上がったのはこの文字だった。
NatureVantage
「これ、さっきのサプリを作ってる会社だな。」
「会社のイベントにデカデカと出ているということは間違いないな。入里麻理菜はマルチ商法団体、NatureVantageの会員だ。ちょっと調べてみたけどNatureVantageは前に薬機法違反の勧誘をして処分されているし、被害者の会も存在してる。これはアウトだな。」
「それにしても、海外にまで行くということはかなり成績が良いのか?」
「いや、Facebookの経歴では現職がコールセンターになってるし、コールセンターで何かの賞を貰ったという投稿があった。多分NatureVantageのコールセンターで働きつつ勧誘もやってるんだろう。それで、日本支部のコールセンターで優秀だったから米国本部のセミナーにも呼ばれたと、大方そんなとこだろうな。もう少し詰めてから次の行動に移るぞ。」
「ついに証拠を突きつけるんだな!!」
具体的な会社を特定してしまえばこっちのものである。NatureVantageの情報を調べたところ、日本支部とそのコールセンターは中目黒カルマタワーに入っていることが分かった。平日昼間に入里麻理菜が写真を投稿していたビルである。さらにTwitterのフォローを確認したところ、NatureVantageの公式アカウントをフォローしており、FacebookではNatureVantageのページにいいね!していることが分かった。ここまでくれば確実だった。
「よし、ここまでくれば間違いないな。後で証拠を消されたら困るから、ヨッさんも協力して証拠のスクショを保管してくれ。」
「最後まで抜かりないな笑」
「喧嘩を売られたからには徹底的にやらんとな。そういえばTwitterのアカウント、Nyuri0413ってなってたけど末尾の文字列は誕生日かな?もうすぐじゃないか。」
「Facebookでも誕生日が四月十三日になってるな。今度の土曜日か。高専生連合だっけ?学生団体の実行委員やってるからか去年の誕生日も沢山メッセージ来てるみたいだな。」
「ヨッさんも見られるってことは誕生日とメッセージは公開になってるんだな。ん?待てよ、もうすぐ誕生日で、メッセージは公開、つまり誰でもできる……。なるほど。あと、そういえば同期に同じような団体の活動してる奴いなかったっけ。」
「あー新城だろ。あいつは確か高専生連合から分派した高専生連盟の代表で、入里とは仲悪かったな。」
「なるほど、内ゲバで生まれた団体の代表と入里は犬猿の仲、そして誕生日メッセージは全体公開……。ちょっと新城に連絡してみるわ。」
吉井と会話しているうち、済の頭の中には入里を叩き潰す、あるアイディアが浮かんだ。済はLINEを開き、新城にメッセージを送った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる