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六章
全種族対抗試合その19
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その後娘はふむふむと言いながら何やら我の手を弄るようにベタベタと触りまくる。
「・・・・・・・・・・。――――っ!」
すると突然娘が手を止め、我の手の方へと伏せていた顔を勢い良く上げた。その表情は先程からのにやけ面では無く、真剣なものへと変わっている。
「む、どうかし・・・・・・」
「ごめん。ちょーっと今は黙っててくれるかにゃ?」
娘は我の言葉を遮り、次はじーっと我の身体全体に視線を這わせ始めた。
この娘、まさか・・・・・・。
気になり、娘の『目』を見ると、
「(む、やはり・・・・・・『魔眼』の類か)」
『魔眼』。神滅級程ではないが、これも珍しい物だ。
魔眼の発現は先天性、後天性のどちらも有り得るが、しかしそのどちらも魔眼への才能を持ち合わせていなければ決して発現はしない。そう、例え親族が魔眼持ちで自分がその遺伝子を持っていようが、誰かに魔眼を医術的に移植されても、だ。
それ故に魔眼持ちは数が少ない。世界中の魔眼持ちをかき集めたとしてもおそらく二十も居ないであろう。
「おじさん」
「む、何だ?」
「おじさんに一つ・・・・・・いや、二つほど聞きたいんだけど良いかにゃ?」
「む、構わぬぞ。しかし、質問に対し我が答えられる範囲でなら、な?」
「それで良いよ。じゃあまず一つ目」
娘はじっと我から視線を逸らさずに一つ目の質問を問いかけた。
「おじさんはどうしてこの国に来たの?」
「む、何故、であるか。そうであるな、大した用向きではないが偶然出会った者に成り行きで協力する事になった故、『人種』最大の国であるここに立ち寄った。と言ったところであろうか」
「具体的にその協力って?」
む、やはりそこを突いて来るか。しかし正直に言ってもおそらく伝わらぬであろうし、何より話がややこしくなったりでもすれば今後我等の身が色々と危うくなるやもしれんな。
なればここは本当の事を少し混ぜつつ適当に返事をしておく事にしよう。
「む、実はそやつはいわゆるHIKIKOMORI☆という奴でな。それ故に勉学は勿論、他人と接する事も今までして来なかった為かこの世界の住人だというのに本当の意味で何も知らぬ阿呆になってしまっておってな。しかしその阿呆もこのままではいかんと考えたのかある時『俺は世界を知りに旅に出るぜメーン!』とか何とか言い出して突然家を飛び出したらしいのだ。その後そやつは何やかんやあったみたいであるが、偶然にもその道中で我と知り合いになって・・・・・・」
「あ、ごめんちょっと待って。それまだ続く? 続いちゃう感じ? もう何となくはわかったからそこまでで良いよ?」
「む? あ、そう?」
頑張って説明していたのだったが、突然こちらが驚くくらい何の感情も宿っていない表情で止められた。
何故だ・・・・・・?
まあ、しかしここはこれ以上変に詮索されなくなったと思っておく事にしよう。実際その方がこちらとしても都合が良いしな。
「じゃあ次は二つ目の質問ね」
「む、ああ」
「おじさん達は・・・・・・」
娘は未だ握ったままだった我の手をパッと離し、ファフニールの方に一瞬だけ視線をずらして・・・・・・、
「恋仲なのかにゃあ~~~~~?」」
「――むっ!?」
「――っ!『――まあっ!』」
この阿呆は突然とんでもない事を口にした。
しかも先程までの真剣な面持ちは既に消え失せており、にぃやぁ~、っとまるで「新しい玩具を見つけた☆」と言わんばかりに娘の表情は満面の笑みへと変わっていた。
「お、おい娘っ! おぬ――、しぇいっっ!?」
絶賛脳内ピンク色のこの娘に抗議をしようとしたその瞬間、〈竜化〉した状態のファフニールの巨体から放たれた一撃によってドゴッという鈍い音と共に脇腹に強い衝撃が走り、そのまま我は真横へと吹っ飛ばされた。
「あらぁ~っ! あらあらあら~~~~っ! 分かっちゃう? やっぱり分かっちゃうぅ~!? きゃーっ!」
「そりゃあ分かっちゃうよ~っ。だって君達、お・に・あ・い、だしにゃ~~っ」
「え~っ? やだもぉ~~~~っ!!」
ぐふ・・・・・・っ、どいつ、もこいつも・・・・・・っ。
痛みでまだ起き上がれず今度は我が地面とよろしくやっていると、娘が「あ、そうだそうだ」と何かを思い出したかのような素振りをとり、
「ま~る」
と、ファフニールとの会話を中断し、各国の代表や解説者の方に向かって両の腕で大きく丸を作った。
それを見た各国の代表達の中の一人が一度首を縦に振り、解説者に何かしら指示を出す素振りを見せる。
「頼んだぞ」
「はっ! お任せ下さい!」
そして解説者は代表達に深々と頭を下げた後、未だざわつきを見せる場内に向かって自らの声を響かせた。
「・・・・・・・・・・。――――っ!」
すると突然娘が手を止め、我の手の方へと伏せていた顔を勢い良く上げた。その表情は先程からのにやけ面では無く、真剣なものへと変わっている。
「む、どうかし・・・・・・」
「ごめん。ちょーっと今は黙っててくれるかにゃ?」
娘は我の言葉を遮り、次はじーっと我の身体全体に視線を這わせ始めた。
この娘、まさか・・・・・・。
気になり、娘の『目』を見ると、
「(む、やはり・・・・・・『魔眼』の類か)」
『魔眼』。神滅級程ではないが、これも珍しい物だ。
魔眼の発現は先天性、後天性のどちらも有り得るが、しかしそのどちらも魔眼への才能を持ち合わせていなければ決して発現はしない。そう、例え親族が魔眼持ちで自分がその遺伝子を持っていようが、誰かに魔眼を医術的に移植されても、だ。
それ故に魔眼持ちは数が少ない。世界中の魔眼持ちをかき集めたとしてもおそらく二十も居ないであろう。
「おじさん」
「む、何だ?」
「おじさんに一つ・・・・・・いや、二つほど聞きたいんだけど良いかにゃ?」
「む、構わぬぞ。しかし、質問に対し我が答えられる範囲でなら、な?」
「それで良いよ。じゃあまず一つ目」
娘はじっと我から視線を逸らさずに一つ目の質問を問いかけた。
「おじさんはどうしてこの国に来たの?」
「む、何故、であるか。そうであるな、大した用向きではないが偶然出会った者に成り行きで協力する事になった故、『人種』最大の国であるここに立ち寄った。と言ったところであろうか」
「具体的にその協力って?」
む、やはりそこを突いて来るか。しかし正直に言ってもおそらく伝わらぬであろうし、何より話がややこしくなったりでもすれば今後我等の身が色々と危うくなるやもしれんな。
なればここは本当の事を少し混ぜつつ適当に返事をしておく事にしよう。
「む、実はそやつはいわゆるHIKIKOMORI☆という奴でな。それ故に勉学は勿論、他人と接する事も今までして来なかった為かこの世界の住人だというのに本当の意味で何も知らぬ阿呆になってしまっておってな。しかしその阿呆もこのままではいかんと考えたのかある時『俺は世界を知りに旅に出るぜメーン!』とか何とか言い出して突然家を飛び出したらしいのだ。その後そやつは何やかんやあったみたいであるが、偶然にもその道中で我と知り合いになって・・・・・・」
「あ、ごめんちょっと待って。それまだ続く? 続いちゃう感じ? もう何となくはわかったからそこまでで良いよ?」
「む? あ、そう?」
頑張って説明していたのだったが、突然こちらが驚くくらい何の感情も宿っていない表情で止められた。
何故だ・・・・・・?
まあ、しかしここはこれ以上変に詮索されなくなったと思っておく事にしよう。実際その方がこちらとしても都合が良いしな。
「じゃあ次は二つ目の質問ね」
「む、ああ」
「おじさん達は・・・・・・」
娘は未だ握ったままだった我の手をパッと離し、ファフニールの方に一瞬だけ視線をずらして・・・・・・、
「恋仲なのかにゃあ~~~~~?」」
「――むっ!?」
「――っ!『――まあっ!』」
この阿呆は突然とんでもない事を口にした。
しかも先程までの真剣な面持ちは既に消え失せており、にぃやぁ~、っとまるで「新しい玩具を見つけた☆」と言わんばかりに娘の表情は満面の笑みへと変わっていた。
「お、おい娘っ! おぬ――、しぇいっっ!?」
絶賛脳内ピンク色のこの娘に抗議をしようとしたその瞬間、〈竜化〉した状態のファフニールの巨体から放たれた一撃によってドゴッという鈍い音と共に脇腹に強い衝撃が走り、そのまま我は真横へと吹っ飛ばされた。
「あらぁ~っ! あらあらあら~~~~っ! 分かっちゃう? やっぱり分かっちゃうぅ~!? きゃーっ!」
「そりゃあ分かっちゃうよ~っ。だって君達、お・に・あ・い、だしにゃ~~っ」
「え~っ? やだもぉ~~~~っ!!」
ぐふ・・・・・・っ、どいつ、もこいつも・・・・・・っ。
痛みでまだ起き上がれず今度は我が地面とよろしくやっていると、娘が「あ、そうだそうだ」と何かを思い出したかのような素振りをとり、
「ま~る」
と、ファフニールとの会話を中断し、各国の代表や解説者の方に向かって両の腕で大きく丸を作った。
それを見た各国の代表達の中の一人が一度首を縦に振り、解説者に何かしら指示を出す素振りを見せる。
「頼んだぞ」
「はっ! お任せ下さい!」
そして解説者は代表達に深々と頭を下げた後、未だざわつきを見せる場内に向かって自らの声を響かせた。
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