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六章
全種族対抗試合その17
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時は全種族対抗試合前日の夜まで遡る――――
「さぁ~ヴェルガルドぉ・・・・・・。今夜こそ、今夜こそはわかっているわよねぇ~・・・・・・・・・・?」
何故かその夜、部屋へと入った瞬間にファフニールが昨夜とはまた違った威圧感を出しながら我にじりじりとそんな事を言いながら迫ってきた。
「む・・・・・・。な、何を・・・・・・だ?」
今夜は全種族対抗試合についてファフニールにちょっとした相談事があった為、何の抵抗もせずに部屋へと入ったが、やはり無謀であったか・・・・・・。
本能的に身の危険を感じ、距離を詰めさせないようにこちらも同じくじりじりと後ずさる。
気分的には『飢えた肉食獣のいる檻に裸で放り込まれた』そんな感じだ。
「何をって、そんなの・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・。――っ!!」
とうとう壁際まで追い詰められ、逃げ場を失う。
「――――キュピーン!」
それをファフニールは見逃さなかった。見逃すはずが無かった。
「フフフフフフ・・・・・・・・・・。決まっているでしょぉおおおおおおおう!?」
殺った! と言わんばかりに勢い良く床を蹴り、一気に距離を詰めにかかるファフニール。
「むっっ!! ま、待て・・・・・・待てぇええ!!」
「えーいっ!」
「ぬぉおおおっ!!」
――ドンッ、バターンッ!!
避けようとしたが、時既に遅し。全力タックルを喰らい、壁に背中を強打した後、そのまま崩れるように床に仰向けの状態で倒れた。
「む・・・・・・っ。全く、お主という奴・・・・・・・・・・はっ!?」
起き上がろうとするがいつの間にかファフニールに馬乗りにされており、更にあれは保険、であろうか。ファフニールのその手には、色からして確実にヤバイ感じのするぶにゅぶにゅとした塊が握られていた。
結果、終わった。色々と。
「むっ、ファフ・・・・・・レイリアス! と、とりあえず落ち着くのだ! このような手段、お主らしく・・・・・・・・・・はあるか。し、しかしっ、何故・・・・・・・・・・っ」
乱心したであろうファフニールの心を何とか落ち着かせようと試みる。
・・・・・・のだったが、
「うふふ、ヴェルガルドが悪いのよ? 私というものがありながら、それを、それなのに・・・・・・うふっ、うふふフふ腐フふふふフふふ・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
言葉の選択を間違ってしまったのか、先程よりも空気的に危険な状態になり逆効果になってしまった。
何やらファフニールは自分がファフニールの癇に障るような事をやらかしてしまったような感じで呟いているが、全く心当たりが無いわけであって・・・・・・。
「む・・・・・・。ファフ、レイリアス? お前は一体何を言っておるのだ・・・・・・?」
「ナ、ニ、ヲ・・・・・・? うふふ~、本気で言っているの? ヴェルガルド」
「・・・・・・・・・・。・・・・・・すみません」
圧が凄い。
やばい殺される。と本能的に悟ったのか、瞬時に思考が謝罪一択になってしまった。
その我の返答に対して限界が来たのか、
「――ガッ! ~~~~っ!! 何でっ、わからっ、ないのよ――――――っっ!!」
「――おぶっ、――あばっ、――へぶっ、――ぐへっ、――おふぅあっ!!」
もう我慢ならん! と言った感じで我の胸倉を掴み勢い良くぐわんぐわんっと激しく上下に揺らしまくるファフニール。
「――え、ちょ待っ。へぶぅっっ!!」
「ソフィーにはデレデレするしっ!」
いや、しとらんしぃ!
「クレアとかいう泥棒猫には呼び捨てにさせるしっ!」
む、向こうが勝手にしとるだけだしぃ!
「それにっ!! さっきも宿の前でクレアと楽しそうに話してたじゃな――――――いっっ!!」
その時、我確か二言くらいしか発していませんでしたがぁあああ!? (※詳しくは〈マジアガるわ~。マジ卍祭り〉その8をご参照下さい)
「あばばばばばばばっ!!」
ほ、本当にもう、限、界・・・・・・。
と、例のヤバイ塊ではなく、今まさに物理的に意識をブラックアウトさせられかけたのだったが、
「・・・・・・・・・・ふひっ」
「――――ぬぉ!?」
幸か不幸か、意識を失うその寸前でファフニールがピタリと動きを止めてくれたおかげで何とか意識を保つ事が出来た。
「・・・・・・ゴホッ、ゲホッ!」
助かった。そう思い、咳払いを数回しつつ、乱れ切った息を整えていると、
「ふひ、ふひひ」
不気味な笑い声。
「ふひひひひひひひひ・・・・・・」
我の上から。
「・・・・・・レ、レイリア、ス?」
「・・・・・・っ。――――あ、ああぁっっ!! 許せないっ、許せないわっ! 私のヴェルガルドに色目を使うあの女狐共も、そんな下品極まりない色香に騙されたヴェルガルドもっっ!!」
「おぉう!? 何を言うかお前は!! 出鱈目な事を口走る出ない!!」
事実、騙されとらんし、向こうもそんな気は全く無かったであろうしな。
「でも、ヴェルガルドがお詫びに私のお願いを一つ聞いてくれるっていうのなら、私はそんなヴェルガルドも女狐共も許してあげるわ。愛(欲)の力で」
「む、気のせいであろうか? 最後の言葉を聞いた途端、もの凄く鳥肌がたったのだが・・・・・・」
「え? 気のせいじゃない?」
む・・・・・・、まあ、良いか。何にせよこれでようやく本題に入れる。
「む、わかった、それで良い。それと、こちらからも一つお前に頼みたい事があるのだが良いか?」
「追加料金を頂きますが、宜しいですか?」
「む・・・・・・っ。か、構わん・・・・・・」
「――はぁい! 毎度ありがとうございまぁす・・・・・・・・・・じゅるり」
ぐ・・・・・・っ。我は今悪魔と最悪な取引をしてしまったのではなかろうか・・・・・・・・・・っ!?
ほんの数秒前の自分の発言に少し後悔したが、言質を取られた以上、腹を括るしかないと覚悟を決め、
話を先に進める事にした。
「む、まずは我の上から退いてはくれんか?」
「え? 何で?」
「いやいや、このままではろくに話も出来ぬであろう?」
「私はこのままでも出来るわよ?」
「――我が出来ぬのだ!!」
息がし辛いところに乗っかられている為、正直少し話すだけでも辛い。
それと、早くこの状態から解放されたい。
「わかったわよぅ。今回だけだからね?」
出来れば次回など来ない方向で頼みたいのだがな。
そうして、しぶしぶとだがファフニールには上から退いてもらい、ようやく解放された身体を起こし、傍にあった椅子に腰掛けた。
「それで? ヴェルガルドの頼みって何なの?」
そう言い、こちらに背を向けるようにしてファフニールはベッドに腰掛ける。
「む、実は・・・・・・」
それから我は思考していた『例の策』についての全てをファフニールに話した。
「・・・・・・・・・・という訳なのだが、どうだ?」
我ながら無茶な事を言っているのは百も承知だ。断られても仕方が無い。
ファフニールに対し、恐る恐る確認をすると、
「別に良いわよ?」
「え・・・・・・?」
何も迷いも無く即答にも近いその返事に思わず聞き返してしまった。
「だから、良いわよ?」
「む・・・・・・。すまない、恩に切る」
笑顔でもう一度承諾の返事をしてくれたファフニールに対し、感謝の言葉と共に頭を下げた。
しかし、ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、
「ええ、良いですとも・・・・・・。だってこれでヴェルガルドに・・・・・・。うふ、うふふフふ腐フふふふフふふ・・・・・・・・・・」
忘れていた。先程この悪魔と取引をしてしまった事を・・・・・・・・・・。
「・・・・・・ゴクッ」
流石にここで知らないフリをするのはフェアではないと思い、生唾を飲み込みながら再度腹を括り、意を決して聞いた。
「む・・・・・・。そ、それで、お前の頼みというのは・・・・・・?」
「うふ、うふふ。そ~れ~はぁ~」
「・・・・・・・・・・ゴクリッ」
「勿論、子・づ・く」
「――――却下ぁ!!」
全てを言わせる前にバッサリと切り捨てる。
予想を裏切らないその要求。ここまで来たら最早流石としか言いようがない。
「えぇーっ! 何でもするって言ったじゃなーいっ!!」
「何でもは言っとらんわ!! とにかくそれは却下だ!!」
「えぇ~。もう、わかったわ。なら同衾で良いわよぅ」
「全く変わっとらんし、わかっとらんではないか!!」
その後も、
「ならさきっちょだけ!!」
「却下!!」
「大丈夫! ヴェルガルドはちょっとの間天井の壁のシミを数えているだけで良いから!!」
「何をどう大丈夫と!? ともかく却下だ!!」
「じゃあ、(ピ――――――――――――――――ッ)(※規制音)」
「余計に酷くなっとるではないか!! 何故それが通ると思った!?」
などと、とんでもない事を言い争っている内にお互いぜーはーと肩で息をし始めていた。
「はあ、はあ・・・・・・。じゃ、じゃあ、大会が終わったら、私と、デート・・・・・・・・・・。それで、良いかしら・・・・・・?」
「ぜぇ、ぜぇ・・・・・・。む・・・・・・、そ、それならば、良かろう・・・・・・・・・・」
「絶対に、忘れられない日に、してあげる、から・・・・・・」
「お、お手柔らかに、頼む・・・・・・」
こうして、無事? ファフニールに協力を取り付ける事が出来た我は気が抜けたと同時に身体の力も抜け、そのまま自分のベッドへと倒れこんだ。
このまま今日は寝てしまおう。流石に疲れた・・・・・・。
「む・・・・・・。っとその前に」
我と同じように自分のベッドに倒れ込むファフニールの方をちらっと見た後、
「ふむ、一応念のため」
今は力尽きてはいてもこやつの事だ、少しでも隙を見せれば色々な意味で襲われかねん・・・・・・。
と、ファフニール対策に以前レイジがやっていた『絶対防御能力』とかいう出鱈目魔法障壁の使用法を習い、我も黒炎の障壁に魔力を込め、込めた魔力が尽きるまでの間存在し続けられる自立型障壁を自らのベッドの周りに張った。
「これで良し。・・・・・・はあ」
バフッと再度枕に顔を埋め、急激に襲ってくる眠気に今度は抗うことなくそのまま身を任せ、我は眠りに落ちていった。
*************************************
ヴェルガルドが眠りに落ちた後――――
「寝たわね・・・・・・」
――コンコン。
「空いてるわよ・・・・・・・・・・・・・・・・レイジ」
ギギィ・・・・・・。
「・・・・・・・・・・ニヤリ」
――――〈マジアガるわ~。マジ卍祭り〉その9に続く!!
「さぁ~ヴェルガルドぉ・・・・・・。今夜こそ、今夜こそはわかっているわよねぇ~・・・・・・・・・・?」
何故かその夜、部屋へと入った瞬間にファフニールが昨夜とはまた違った威圧感を出しながら我にじりじりとそんな事を言いながら迫ってきた。
「む・・・・・・。な、何を・・・・・・だ?」
今夜は全種族対抗試合についてファフニールにちょっとした相談事があった為、何の抵抗もせずに部屋へと入ったが、やはり無謀であったか・・・・・・。
本能的に身の危険を感じ、距離を詰めさせないようにこちらも同じくじりじりと後ずさる。
気分的には『飢えた肉食獣のいる檻に裸で放り込まれた』そんな感じだ。
「何をって、そんなの・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・。――っ!!」
とうとう壁際まで追い詰められ、逃げ場を失う。
「――――キュピーン!」
それをファフニールは見逃さなかった。見逃すはずが無かった。
「フフフフフフ・・・・・・・・・・。決まっているでしょぉおおおおおおおう!?」
殺った! と言わんばかりに勢い良く床を蹴り、一気に距離を詰めにかかるファフニール。
「むっっ!! ま、待て・・・・・・待てぇええ!!」
「えーいっ!」
「ぬぉおおおっ!!」
――ドンッ、バターンッ!!
避けようとしたが、時既に遅し。全力タックルを喰らい、壁に背中を強打した後、そのまま崩れるように床に仰向けの状態で倒れた。
「む・・・・・・っ。全く、お主という奴・・・・・・・・・・はっ!?」
起き上がろうとするがいつの間にかファフニールに馬乗りにされており、更にあれは保険、であろうか。ファフニールのその手には、色からして確実にヤバイ感じのするぶにゅぶにゅとした塊が握られていた。
結果、終わった。色々と。
「むっ、ファフ・・・・・・レイリアス! と、とりあえず落ち着くのだ! このような手段、お主らしく・・・・・・・・・・はあるか。し、しかしっ、何故・・・・・・・・・・っ」
乱心したであろうファフニールの心を何とか落ち着かせようと試みる。
・・・・・・のだったが、
「うふふ、ヴェルガルドが悪いのよ? 私というものがありながら、それを、それなのに・・・・・・うふっ、うふふフふ腐フふふふフふふ・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
言葉の選択を間違ってしまったのか、先程よりも空気的に危険な状態になり逆効果になってしまった。
何やらファフニールは自分がファフニールの癇に障るような事をやらかしてしまったような感じで呟いているが、全く心当たりが無いわけであって・・・・・・。
「む・・・・・・。ファフ、レイリアス? お前は一体何を言っておるのだ・・・・・・?」
「ナ、ニ、ヲ・・・・・・? うふふ~、本気で言っているの? ヴェルガルド」
「・・・・・・・・・・。・・・・・・すみません」
圧が凄い。
やばい殺される。と本能的に悟ったのか、瞬時に思考が謝罪一択になってしまった。
その我の返答に対して限界が来たのか、
「――ガッ! ~~~~っ!! 何でっ、わからっ、ないのよ――――――っっ!!」
「――おぶっ、――あばっ、――へぶっ、――ぐへっ、――おふぅあっ!!」
もう我慢ならん! と言った感じで我の胸倉を掴み勢い良くぐわんぐわんっと激しく上下に揺らしまくるファフニール。
「――え、ちょ待っ。へぶぅっっ!!」
「ソフィーにはデレデレするしっ!」
いや、しとらんしぃ!
「クレアとかいう泥棒猫には呼び捨てにさせるしっ!」
む、向こうが勝手にしとるだけだしぃ!
「それにっ!! さっきも宿の前でクレアと楽しそうに話してたじゃな――――――いっっ!!」
その時、我確か二言くらいしか発していませんでしたがぁあああ!? (※詳しくは〈マジアガるわ~。マジ卍祭り〉その8をご参照下さい)
「あばばばばばばばっ!!」
ほ、本当にもう、限、界・・・・・・。
と、例のヤバイ塊ではなく、今まさに物理的に意識をブラックアウトさせられかけたのだったが、
「・・・・・・・・・・ふひっ」
「――――ぬぉ!?」
幸か不幸か、意識を失うその寸前でファフニールがピタリと動きを止めてくれたおかげで何とか意識を保つ事が出来た。
「・・・・・・ゴホッ、ゲホッ!」
助かった。そう思い、咳払いを数回しつつ、乱れ切った息を整えていると、
「ふひ、ふひひ」
不気味な笑い声。
「ふひひひひひひひひ・・・・・・」
我の上から。
「・・・・・・レ、レイリア、ス?」
「・・・・・・っ。――――あ、ああぁっっ!! 許せないっ、許せないわっ! 私のヴェルガルドに色目を使うあの女狐共も、そんな下品極まりない色香に騙されたヴェルガルドもっっ!!」
「おぉう!? 何を言うかお前は!! 出鱈目な事を口走る出ない!!」
事実、騙されとらんし、向こうもそんな気は全く無かったであろうしな。
「でも、ヴェルガルドがお詫びに私のお願いを一つ聞いてくれるっていうのなら、私はそんなヴェルガルドも女狐共も許してあげるわ。愛(欲)の力で」
「む、気のせいであろうか? 最後の言葉を聞いた途端、もの凄く鳥肌がたったのだが・・・・・・」
「え? 気のせいじゃない?」
む・・・・・・、まあ、良いか。何にせよこれでようやく本題に入れる。
「む、わかった、それで良い。それと、こちらからも一つお前に頼みたい事があるのだが良いか?」
「追加料金を頂きますが、宜しいですか?」
「む・・・・・・っ。か、構わん・・・・・・」
「――はぁい! 毎度ありがとうございまぁす・・・・・・・・・・じゅるり」
ぐ・・・・・・っ。我は今悪魔と最悪な取引をしてしまったのではなかろうか・・・・・・・・・・っ!?
ほんの数秒前の自分の発言に少し後悔したが、言質を取られた以上、腹を括るしかないと覚悟を決め、
話を先に進める事にした。
「む、まずは我の上から退いてはくれんか?」
「え? 何で?」
「いやいや、このままではろくに話も出来ぬであろう?」
「私はこのままでも出来るわよ?」
「――我が出来ぬのだ!!」
息がし辛いところに乗っかられている為、正直少し話すだけでも辛い。
それと、早くこの状態から解放されたい。
「わかったわよぅ。今回だけだからね?」
出来れば次回など来ない方向で頼みたいのだがな。
そうして、しぶしぶとだがファフニールには上から退いてもらい、ようやく解放された身体を起こし、傍にあった椅子に腰掛けた。
「それで? ヴェルガルドの頼みって何なの?」
そう言い、こちらに背を向けるようにしてファフニールはベッドに腰掛ける。
「む、実は・・・・・・」
それから我は思考していた『例の策』についての全てをファフニールに話した。
「・・・・・・・・・・という訳なのだが、どうだ?」
我ながら無茶な事を言っているのは百も承知だ。断られても仕方が無い。
ファフニールに対し、恐る恐る確認をすると、
「別に良いわよ?」
「え・・・・・・?」
何も迷いも無く即答にも近いその返事に思わず聞き返してしまった。
「だから、良いわよ?」
「む・・・・・・。すまない、恩に切る」
笑顔でもう一度承諾の返事をしてくれたファフニールに対し、感謝の言葉と共に頭を下げた。
しかし、ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、
「ええ、良いですとも・・・・・・。だってこれでヴェルガルドに・・・・・・。うふ、うふふフふ腐フふふふフふふ・・・・・・・・・・」
忘れていた。先程この悪魔と取引をしてしまった事を・・・・・・・・・・。
「・・・・・・ゴクッ」
流石にここで知らないフリをするのはフェアではないと思い、生唾を飲み込みながら再度腹を括り、意を決して聞いた。
「む・・・・・・。そ、それで、お前の頼みというのは・・・・・・?」
「うふ、うふふ。そ~れ~はぁ~」
「・・・・・・・・・・ゴクリッ」
「勿論、子・づ・く」
「――――却下ぁ!!」
全てを言わせる前にバッサリと切り捨てる。
予想を裏切らないその要求。ここまで来たら最早流石としか言いようがない。
「えぇーっ! 何でもするって言ったじゃなーいっ!!」
「何でもは言っとらんわ!! とにかくそれは却下だ!!」
「えぇ~。もう、わかったわ。なら同衾で良いわよぅ」
「全く変わっとらんし、わかっとらんではないか!!」
その後も、
「ならさきっちょだけ!!」
「却下!!」
「大丈夫! ヴェルガルドはちょっとの間天井の壁のシミを数えているだけで良いから!!」
「何をどう大丈夫と!? ともかく却下だ!!」
「じゃあ、(ピ――――――――――――――――ッ)(※規制音)」
「余計に酷くなっとるではないか!! 何故それが通ると思った!?」
などと、とんでもない事を言い争っている内にお互いぜーはーと肩で息をし始めていた。
「はあ、はあ・・・・・・。じゃ、じゃあ、大会が終わったら、私と、デート・・・・・・・・・・。それで、良いかしら・・・・・・?」
「ぜぇ、ぜぇ・・・・・・。む・・・・・・、そ、それならば、良かろう・・・・・・・・・・」
「絶対に、忘れられない日に、してあげる、から・・・・・・」
「お、お手柔らかに、頼む・・・・・・」
こうして、無事? ファフニールに協力を取り付ける事が出来た我は気が抜けたと同時に身体の力も抜け、そのまま自分のベッドへと倒れこんだ。
このまま今日は寝てしまおう。流石に疲れた・・・・・・。
「む・・・・・・。っとその前に」
我と同じように自分のベッドに倒れ込むファフニールの方をちらっと見た後、
「ふむ、一応念のため」
今は力尽きてはいてもこやつの事だ、少しでも隙を見せれば色々な意味で襲われかねん・・・・・・。
と、ファフニール対策に以前レイジがやっていた『絶対防御能力』とかいう出鱈目魔法障壁の使用法を習い、我も黒炎の障壁に魔力を込め、込めた魔力が尽きるまでの間存在し続けられる自立型障壁を自らのベッドの周りに張った。
「これで良し。・・・・・・はあ」
バフッと再度枕に顔を埋め、急激に襲ってくる眠気に今度は抗うことなくそのまま身を任せ、我は眠りに落ちていった。
*************************************
ヴェルガルドが眠りに落ちた後――――
「寝たわね・・・・・・」
――コンコン。
「空いてるわよ・・・・・・・・・・・・・・・・レイジ」
ギギィ・・・・・・。
「・・・・・・・・・・ニヤリ」
――――〈マジアガるわ~。マジ卍祭り〉その9に続く!!
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