うん、異世界!

ダラックマ

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六章

全種族対抗試合その15

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 零時視点――――

『それでは全種族対抗試合、第一試合、3ブロックっ! 試合開始ですっっ!!』



「あぁ・・・・・・、疲れたぁ・・・・・・」

 リニスに応えた後、俺は騒ぎになる前に退散し、試合開始のアナウンスを背にヴェル達が待つ控え室へと戻ってきた。

「む、良くやったなレイジ。無事勝ち残れたようで何よりだ」

「はは・・・・・・、何とかな」

「私としてはほんっと残念だわ。あのままあの男連中にぐちゃぐちゃに潰されてくれてたら良かったのに」

「お前なぁ・・・・・・」

「・・・・・・でもまあ、あんたにしては良くやったんじゃない? ・・・・・・お、お疲れ」

「・・・・・・お、おう」

 まさかこいつからこんな言葉を掛けてもらえるとは思っても無かった俺は思わず顔を逸らしてしまった。

 何だよ、照れんなら最初から言わなけりゃ良いじゃねぇか・・・・・・。何かこっちまで照れちまうだ・・・・・・、

「む、では賭けは我の勝利であるな。ミーナよ」

「・・・・・・ん?」

「むぅ・・・・・・。そうですね。悔しいですが負けたのは事実ですから、あのお約束はお守り致しましょう」

「ん? ん?」

 こいつらは一体何を言っているんだ?

 わからない俺は小首を傾げる。

「む? ああ、実はミーナと一つ賭けをしておってな。レイジが初戦を勝ち残れるか否か、という」

「・・・・・・ほぅ」

 ・・・・・・。・・・・・・・・・・。

 それから俺はヴェルに軽く説明を受ける――

 簡単に言うとこうだ。何やら? 俺が勝てるかどうかで? 賭けをしていたらしく? それで? 賭けはヴェルの勝ちで? まあそこまでは別に良いさ。賭けをしようがそれはこいつらの勝手だし。異世界でなくてもよくある話だしな。

「・・・・・・」

 俺が引っ掛かったのはそこではない。

「もう一度だけ聞こうか。二人がそれぞれ勝ち負けに賭けた根拠を教えてくれ」

「む、我は我が主であるレイジを信じておったが故、勝つ方を選んだ」

「私は、どちらも同じ方に賭けたら賭けが成立しないでしょ? だから負ける方を選んだってわけ」

 ・・・・・・。・・・・・・・・・・。

「・・・・・・本当は?」

「む、負けるっ、絶対負けるっ! てか負かすっ!! とミーナが頑として言い張ったが故、我は勝つ方に」

「・・・・・・・・・・てへっ」

「――――ちょおっと待てやぁ!! てめぇら最初に言ってる事全部嘘じゃねぇか! 信じる? 押しに負けただけじゃねぇか!! そして貧乳! 負かすって何だ、負かすって!?」

「何よー、結局何もしなかったんだから良いじゃない別に。ぶーぶー」

「ぶーぶー、じゃねぇわ! 何かしようとしてたってだけで十分ギルティだからなこんちくしょう!!」

 くそっ、ちょっとでも可愛いとこあんじゃねぇか、って思ってしまった俺の純情を返しやがれ!

「む、その辺にしておいてやってくれレイジ。それに過ぎた事を今どうこう言っておっても仕方あるまいて」

「そうだそうだー」

 く・・・・・・っ。こいつら・・・・・・っ。

 ヴェルの白々しさもそうだが、そんなヴェルの影に隠れながらヴェルに同調する貧乳に対して余計に腹は立ったが、確かにこれ以上は不毛だと判断した俺は拳をプルプルと震わせながらも何とか我慢する。

 そんな時だった。

『――、――――な、な、なっ! さ、3ブロック目、試合終了!』

「――え?」

 試合終了のアナウンスが突如会場全体に響き渡ったのだ。

『早いっ! 早過ぎますっ!! 1ブロック目のあのリーオ様をも上回る速度でこのブロックを制したのは、何と今大会最年少の出場者! メアさ・・・・・・、いや、メアちゃんだ――――――――――っ!!」

 もう終わったの? つい数分前に開始コールがあったはずだろ・・・・・・? マゾで?

「まだ五分も経ってないよな・・・・・・?」

「む、フフ。で、あるな。最年少で多人数相手にこの速さ。いやぁ、近頃の若者はやりおるなぁ」

「うふふ、そうですね。ですが、そのメアちゃんって子が優越感に浸れるのは今だけですよ。私が最短記録を更新してやりますので」

 うっわ、大人気ねぇ・・・・・・。

 俺達の目的は優勝する事だけなんだから最短記録くらいはメアちゃんにくれてやれよ。ほんっとに負けず嫌いだなこいつ。

 

 ――――それから少しした後、4ブロック目の試合が開始され、会場内の収まる事の無い熱狂と声援の中、戦いは十分程度で決着した。

 そして、次は・・・・・・。

「む、では参るとするか」

 第5ブロック、ヴェルが出場するブロックだ。

「おう。まあ程々に頑張れよー」

「御武運を、竜神様」

「む、感謝する二人共」

 するとそこに。

「失礼致します。ヴェルガルド様、ご案内致しますのでどうぞこちらに」

「うむ」

 俺の時同様、迎えに来た一人の兵士さん。ヴェルはその兵士さんに短くそう応え、

「失礼致します」

「うむ」

 ガシッ、ガシッ! ずるずるずるずるずるずるずる・・・・・・・・・・・・・・・・。

「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 両腕をがっちりと掴まれたヴェルは、そこも俺の時同様にそのまま試合場へと引っ張ら・・・・・・、いや、案内されていった。



*********************************************

 ヴェルが連行された直後のちょっとしたお話――――

「・・・・・・なあ」

「・・・・・・何?」

「ヴェル、抵抗しなかったな」

「ええ、してなかったわね」

「むしろ、自分から両手を広げてなかったか?」

「そんな風にも、見えたわね」

 ・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・。

「・・・・・・一応聞いとくけど、さっきの案内方法あれって、この国ではデフォなんですかね?」

「・・・・・・・・・・さあ」

 この時、ようやく俺は悟った。

 またも俺は厄介で『何か』がっ、おかしい所へと来てしまったのではないか、と・・・・・・。
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