うん、異世界!

ダラックマ

文字の大きさ
上 下
68 / 77
六章

全種族対抗試合その10

しおりを挟む
「お話は以上です。それとスレイ様? 申し訳ありませんが、そろそろ大会の進行を再開したいので早急にそちらから立ち退いて頂いても宜しいでしょうか?」

 うわぁ・・・・・・、マジで容赦無ぇ・・・・・・。

 笑顔を一切絶やさないところがまたこえぇ・・・・・・。
 
「く、く・・・・・・っ」

 悔しさからなのか恥ずかしさからなのか、全身を震わせその場で顔を伏せるスレイ。するとその時、

「見苦しいぞスレイ」

 と、スレイとはまた違った感じの渋カッコ良いエルフの人がそうスレイに言いながらリニスの横に出て来た。

「ち、父上・・・・・・っ」

 って、あの人あいつのお父さんかよ!

 待てよ・・・・・・? っつー事は、あの人がエルフの・・・・・・?

「ええそうよ。あの方は『エルフ』現国王キース=エンシュリン。現役だった頃は千にも達する程の魔獣をたった一人で殲滅したと言われていて、『エルフ』の中では英雄としてもその名を馳せているわ」

「・・・・・・解説どうも」

 はあ、何かもういいや・・・・・・。心くらい好きに読んじゃって下さいな・・・・・・。

 その事にツッコムの、もうしんどいっす・・・・・・。

 俺のプライバシーなどこの世界には無いのだと潔く諦めた俺は貧乳にそれだけ言うと、再度視線をリニス達の方へと戻した。

「お、お待ち下さい父上! こ、これは何かの間違いで・・・・・・っ」

「間違いでも何でも無い。これは事実だ。約束の期日を守らず、先を急いだお前のミスなのだ。いい加減この現実を受け止め、王女の指示に従い、早急に下がるが良い」

「・・・・・・っ。わかり、ました・・・・・・」

 父親に厳しく突き放されたスレイはフラフラと立ち上がると、近くの裏へと繋がる入り口へと真っ直ぐに歩を進め始める。

「・・・・・・リニス王女、最後に一つだけ宜しいでしょうか?」

 その途中、スレイはふと振り返り、リニスにそう尋ねた。

「はい、何でしょう? スレイ様」

「・・・・・・もし、もしも私が期日を守り、正式な場で貴方に婚約を申し込んでいたとしたら、今回とはまた違った結果になっていたのでしょうか・・・・・・?」

 そんなスレイに対し、リニスは一瞬だけ目を閉じた後、申し訳無さそうな表情でこう答えた。

「いいえ、スレイ様のお気持ちは大変嬉しく思いますが・・・・・・、申し訳ありませんが、その時でも私はお断りしていたと思います」

「それは、何故でしょうか・・・・・・?」

「うーん・・・・・・、何故かと問われましても・・・・・・」

 言いにくい理由なのか、困ったように考え込むリニス。

 そんなリニスの姿を見て、はっ、と何かに気が付いた素振りを見せたスレイは、

「ま、まさか・・・・・・っ。すでに心に決めた方がいらっしゃるのですかっ!?」

 場内中に響き渡るような声量でそうリニスに問いかけた。

「「「「ざわ、ざわ・・・・・・、ざわ、ざわ・・・・・・」」」」

 同時に場内のざわつきもスレイの一言によって更に増した。

 もう何も言うまい。俺は何も聞いてませんっ、はいっ。

「――なっ!? な、な、な、な、何を言って・・・・・・っ!」

 徐々に顔を真っ赤にしながら明らかにテンパり始めるリニス。

「その反応・・・・・・っ。やはり、そうなのですね」

「なっ、べ、別にわた、私は・・・・・・っ」

「わかりました・・・・・・」

「え? わかったって・・・・・・」

「お恥ずかしい所を見せてしまい、本当に申し訳ありませんでした。では、リニス王女失礼致します」

「え、あの・・・・・・。ちょ・・・・・・」

 リニスの制止空しく、何かを決心した様子のスレイは先程とは違った足取りでこの場を後にした。




 その後、何やらエルフ王と話した後、エルフ王が戻って行った所に向かってぺこぺこと必死に頭を下げ続けるリニス。

 それから少ししてこちらに向き直ったリニスは再度マイクを握り、

『ご来場の皆様、先程は私の個人的な事情の所為で皆様の貴重なお時間を浪費させてしまい、誠に申し訳ございませんでした。改めましてこれより、全種族対抗試合を始めさせて頂きたいと思いますっ。出場して頂いた皆様のご活躍を期待しておりますので、どうか皆様頑張って下さいっ!』

 謝罪と共に声高らかにそう宣言した。すると、

「「「「おぉおおおおおおおおっっ!!!!」」」」

 だの、

「「「「ヒィイイイイハァアアアアッッ!!!!」」」」

 だのといった雄叫びがどこからともなく聞こえてきてそのやる気と熱意の声があっという間に場内中を包み込み、盛り上がりのボルテージは一気に最高潮にまで達していた。

 そんな中、

「・・・・・・むぅ、レイジよ。この騒ぎは一体何なのだ・・・・・・?」

「おぉヴェルっ! 生きてたか!」

「竜神様っ! 良かった、ご無事だったのですね!」

 顔は真っ青だが、生きていた(※気絶していただけ)ヴェルがこの騒ぎを聞いて俺達の所へと合流してきた。

「むぅ・・・・・・、何とか、な・・・・・・。して、我が意識を失っている間に何があったのだ?」

「ああ、それはなー。・・・・・・かくかく、しかじか、かっくぅ」

「久々に出たわねそのとんでもチート呪文・・・・・・」

「むぅ、そのような事が・・・・・・。全く、このような時に不思議な事をする輩も居たものだな」

「ほんとだよなー」

「いや、私にとっては二人の方がそのとんでも呪文を通じ合える辺り、不思議度は高いけどね?」

 貧乳が何やらおかしな事を言っているが気にしないでおこう。
 
「まあ、何にせよ、いよいよ始まるのか。よし、気合入れていこうぜっ」

「む、そうであるな。各々悔いの残らぬよう、全力でいこうではないか」

「もう一度言っておくが、全力っつってもお前は黒炎と『竜化』は無しだからな?」

「む・・・・・・、わかっておるわ」

「大丈夫ですよ竜神様。竜神様に何かあったとしても、この私がしっかりと優勝を勝ち取って来ますから」

「む、フフ。頼もしいかぎ・・・・・・」

「そうです、そうですよ・・・・・・。例えどんな犠牲を払おうとも優勝の座は必ず私が・・・・・・っ。ふふ、ふふふふ・・・・・」

「・・・・・・た、頼もしい? 限りである、な・・・・・・」

「おいおい貧乳、優勝を狙うのは勿論だが例の『タケル』の事も忘れんなよ?」

 早くもバーサクモードに移行しようとしていた貧乳にそう釘を刺す俺。

「ええ、勿論よっ。竜神様をあんな目に合わせた奴だもの、絶対にけちょんけちょんにしてやるんだから!」

「む? ん?」

「ああ、その意気だ貧乳。控え室でのヴェルへの残酷なまでのあの仕打ち、きっちりと野郎の身で支払って貰おうぜ!」

「え? ん? んん~? (む・・・・・・。いや、あの控え室での元凶は紛れも無くお主等二人なのだが・・・・・・。まあ、しかし、おかげで良い? 警戒心を持てておるようであるし、タ、タ・・・・・・『タケル』? という奴には悪いが今は黙っておく事にしよう)」

『――、――――では、第一試合を始めますので、1ブロックの枠に振り分けられている方は急ぎ試合場へと移動して下さい!』

「お、始まるな。俺達はとりあえず控え室に戻るとするか」

「ええ、そうね」

「む・・・・・・っ、あ、ああ」

 1ブロックは俺達の誰とも関係の無いブロックだったので邪魔にならないよう、控え室へと戻る為、来た道を引き返す俺達。

 こうして、ようやく俺達の・・・・・・いや、俺の聖戦の幕が切って落とされたのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

ドアマットヒロインはごめん被るので、元凶を蹴落とすことにした

月白ヤトヒコ
ファンタジー
お母様が亡くなった。 それから程なくして―――― お父様が屋敷に見知らぬ母子を連れて来た。 「はじめまして! あなたが、あたしのおねえちゃんになるの?」 にっこりとわたくしを見やるその瞳と髪は、お父様とそっくりな色をしている。 「わ~、おねえちゃんキレイなブローチしてるのね! いいなぁ」 そう、新しい妹? が、言った瞬間・・・ 頭の中を、凄まじい情報が巡った。 これ、なんでも奪って行く異母妹と家族に虐げられるドアマット主人公の話じゃね? ドアマットヒロイン……物語の主人公としての、奪われる人生の、最初の一手。 だから、わたしは・・・よし、とりあえず馬鹿なことを言い出したこのアホをぶん殴っておこう。 ドアマットヒロインはごめん被るので、これからビシバシ躾けてやるか。 ついでに、「政略に使うための駒として娘を必要とし、そのついでに母親を、娘の世話係としてただで扱き使える女として連れて来たものかと」 そう言って、ヒロインのクズ親父と異母妹の母親との間に亀裂を入れることにする。 フハハハハハハハ! これで、異母妹の母親とこの男が仲良くわたしを虐げることはないだろう。ドアマットフラグを一つ折ってやったわっ! うん? ドアマットヒロインを拾って溺愛するヒーローはどうなったかって? そんなの知らん。 設定はふわっと。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

処理中です...